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Cover image for The Lycan's Queen 孤独な王の運命の相手は傷心したての私でした1

The Lycan's Queen 孤独な王の運命の相手は傷心したての私でした1

第3章

やっとの思いでバルコニーから室内に戻った私は、舞踏会に備えてシャワーを浴びた。

シャワーから出ると電話が鳴っていたが、無視することにした。その代わり、楽な服に着替えて身支度を整え、洗いたての髪をブラッシングした。

ドアをノックする音に私は飛び上がった。誰? ため息をつきながら、私はドアまで行って覗き穴から外を覗いてみた。ゾヤが一人で立っていた。ドアを開けると、ゾヤに抱きしめられた。

私はゾヤに抱きしめられて緊張がほぐれ、私も彼女を抱きしめ返した。自分では気づいていなかったけれど、私にはこのハグが必要だったのだ。

「アーリヤ、ごめんなさい。昨日話をしたかっんたけど、あれ以上傷つけたくなくてね。ただ、あなたはとても強い。それを知っておいてほしくて。あなたは大騒ぎすることなく、ただそれを受け入れたでしょ。そんなあなたを誇りに思うわ。きっと本当に辛いことだったはずなのにね」と、彼女は私を抱きしめたまま言った。

「ゾヤ、そばにいてくれてありがとう。私に必要な時間と場所を与えてくれたことにも感謝するわ。ところで、ここに来たのはどうして? 兄さんがウザいとか?」そう言って私はゾヤをからかった。

ゾヤは笑って答えた。「ううん、今日は大丈夫。今日は私を怒らせないように厳しく言い渡してあるから。彼に腹を立てながら、彼と一緒にライカン舞踏会に行くなんて、まっぴらごめんだもの。実は、私がここに来たのにはもう一つ理由があるの」

私が不思議そうに片眉を上げると、ゾヤは私のベッドに腰を下ろして、その隣をポンポンと手で叩いた。私は座って、困惑の表情を彼女に向けた。

「悪いことじゃないの。ただ、大事なことをあなたが忘れてるんじゃないかって、お義母さんが心配されててね。私も、きっと忘れてるんじゃないかと思うのよ。いい、今夜、舞踏会に来るのは私たちだけじゃないからね。もう一つ重要な群れが来るわ。あなたの従妹のパックよ!」

私ははっと息を呑んだ。どうして忘れていたんだろう? 父には妹がいたが、彼女は別の群れで番いを見つけたので、そちらに移った。そして叔母さんは双子の娘をもうけた。私の従妹だ。

二人は私より一つ年下なだけで、私は二人ととても仲がよかった。最後に会ったのは去年のクリスマスだった。ああ、舞踏会が待ち遠しくなってきた。

ハンターのことはすっかり頭から消えてなくなっていた。今は、従妹たちに再会できると思って、超ワクワクしていた。ニヤとディヤ・チョプラは一卵性双生児で、幼い頃は私の親友だった。

ああ、どんなに会いたかったことか! 私の笑顔を見て、ゾヤが言った。「いい笑顔ね。この話をしたら、きっと喜ぶと思った。さあ、少し休んで、それから支度して」

ゾヤにバイバイを言ったあと、私はベッドに横たわり、車の中で読み始めた本を読んでしまおうと思った。

支度を始めるまでは40分ほどだったが、本を読み終えるには十分だった。それまで私はミステリーの世界に没入した。

本を読み終えると、私は伸びをして、充電中の携帯電話に手を伸ばした。

ソフィアからメッセージが何通か来ていて、「私に会えるのが楽しみ」と言っていたし、ニヤとディヤからも「早く会いたい」というメッセージが来ていた。

メッセージに返信したあと、インスタグラムを見て時間をつぶした。そうこうするうちに支度を始めなくちゃならない時間になって、渋々私は暖かく快適なベッドを出た。

髪がまだ濡れていたので、まずは髪から。髪は乾かしてから巻くことにした。でも、その前にドレスを着よう。色は栗色で、丈はちょうど膝の上ぐらいだ。

前が短くて後ろが長いドレスで、肩はオフショルダー。シンプルだけど私に似合ってて、私はこのドレスが好き。

そのあと、私は髪に取りかかった。そこそこ長さがあるので巻きやすい。巻いたあとは、半分をアップにして、半分を垂らすヘアスタイルにした。

鏡を見てにんまりする。

次がいちばん面倒なところ。メイクだ。デスクの前に座って、持ってきた化粧道具と私が頼りにしている鏡を取り出した。いつも使っているものだ。

30分後、メイクは完成した。これでよし、と。あまり飾り立てたくなかったので、シンプルにすることにした。滅多にしないつけまつげだけはつけたけど。

お次はジュエリーね。すべてのピアスの穴にシンプルなピアスをつけた。そう、ピアスの穴はいくつか開けてるの。

ネックレスはシンプルなゴールドのチェーンにハート型のペンダントトップ。私が16歳になったときに祖父母が買ってくれたものだ。あと、18歳のときに両親がくれたお守りのブレスレットを身につけた。

これでOK。出かける前に写真を撮りたかったけれど、時間を見ると遅れていた。

急いでヒールを履いて、小さなバッグに身の回りのものを詰め込んで部屋を出た。母から自分たちの部屋に来るようテキストメールが届いていたので、そちらへ向かった。

ドアを開けるなり、母が息を呑んだ。「まあ、私のベイビー、なんてゴージャスなの!」

私は笑ってありがとうと言い、両親の部屋に入っていった。父が顔をほころばせながら、お姫様のようだと言った。ゾヤがそれを訂正して、女王のようだと言い直す。それを聞いて私は目玉をぐるりと天井に向けた。

これじゃ男はみんなアーリヤを口説こうとするだろうから、しっかり見張ってないといけないな、とサイが言う。ゾヤが兄さんを軽く突いて、自由にさせてあげなさいと言った。

兄さんはゾヤに過保護すぎると諭された。そのあと、私たちは写真を撮って下に下りた。

ロビーに立っていたカーターが、私をニヤニヤ笑った。「わお、スマイリー。君がこんなにすっきりと美しくおしゃれできるなんて、誰が知ってた?」

「わお、あんたがこんなに嫌な奴だって、誰が知ってた? ああ、そうね、みんな知ってたわね」私は冗談を言った。

カーターが目玉をぐるりと上に向けて私を笑わせた。親たちが言い張って、私たちは写真を撮った。カーターは、おふざけしている写真を私に撮らせた。自分のインスタグラムに載せたいらしい。

彼の3人のフォロワーさんは大喜びするでしょうね、と私はカーターに言った。カーターは私をいつもの自分に戻してくれるのが最高に上手だった。冗談を言って、からかい合う。それが私たちの友情の一部にはあった。

何より助かったのは、カーターがあまりに私を面白がらせてくれるから、ハンターとラナがそこに立っていることに気づかなかったことだ。

車が到着して、いよいよホテルを出るときになって、初めて私は二人がずっとそこに立っていたことに気づいた。私がハンターにちらりと目を向けると、彼は「はっきりと」私を見ていた。

以前なら、彼のまなざしを感じただけでメロメロになったけれど、今日は笑みを返しただけで彼にくるりと背を向けた。車に乗り込むとき、カーターが手を貸してくれる。

カーターはアルファだったので、私たちが乗る車には、彼とベータだけ乗ることになった。運よく、私はカーターと前の座席に座れた。ハンターとラナは後ろの席だった。

宮殿まではたったの15分。ハンターが一緒でも、きっと大丈夫。

車が発進するなり、ハンターとラナは貪るようにお互いの顔にキスし始めた。二人の立てる音ったらひどいのなんのって。カーターを見ると、彼は怒っていた。

「ハンター。お前たち二人でその騒々しい音を立てるのはやめてくれないか。俺はここで会話しようとしてるんだ。だから静かにしろ」カーターがぴしゃりと言った。

キスはすぐに止まった。カーターがこんなにきつく言うのは初めて聞いたけど、実際嬉しかった。あの音で気分が悪くなりそうだったから。あのさあ、ちょっとはまわりに配慮しなさいよ。そう思った。

「ところで、スマイリー。今夜は俺のそばを離れるなよ。相手のいない男どもがみんな、君を必死で口説いてくるにきまってるから」

「もうっ。サイね、そんなことを言ったの。私は連れのいないどんなオスとも付き合わないわ。ソフィアや従妹たちと過ごしたい。私の最優先事項よ!」

「それでこそ俺のスマイリーだ。いつだって友だちや家族と一緒にいようとするもんな」カーターの口調は誇らしげだった。

「ねぇ、あなたにもし番いが見つかったらどうするの? つまり、あそこにはたくさん人が集まるでしょ? その中にあなたの番いがいるかもしれないわよ」と私は言った。私が「番い」という言葉を口にすると、カーターの目が輝いたのを私は見逃さなかった。

「ああ、そうだね。そういうのも、ありかな」とカーターが答える。

「んふふ……そうなったら、彼女に警告しないといけないけどね。あなたがいかにクレイジーで、いかに友だちがいないかって」私は冗談めかして言った。

「なんとでも言ってくれ、スマイリー。君が俺のこと好きなのは知ってるんだから」そう言ってカーターはウインクした。

それからは、あまりおしゃべりする間(ま)もなく宮殿に着いた。車から降りるのをカーターが手伝ってくれて、私たちは家族の到着を待った。

みんなが到着すると、私たちは厳しいセキュリティーチェックを受けることになった。それが終わって宮殿に入ったとき、私は息を呑んだ。

天井が高くて、凝ったデザインの施された豪華な宮殿だった。装飾はすべてこの宮殿の色調にぴったり合っていた。ソフィアの仕事ぶりは見事だった。

「アーリヤ!」人混みからソフィアの声がした。

ソフィアが駆け寄ってきて、ものすごい勢いで私を抱きしめたので笑った。「ねぇ、ソフィア、もう離してくれない? 息が詰まっちゃう」

ソフィアはごめんと言ってすぐに離してくれた。「中には、自分がどれほど力が強いかってわからない人がいるのよね~」私は彼女をからかった。

そこでルークが姿を現した。「それは彼女が毎日僕と練習しているからだよ。彼女は驚くべき戦士なんだぜ」と言って妻を自慢する。

ルークがあまりに親しげにハグしてきたので、私は天井を仰ぎ見た。「彼女が驚くべき戦士だってのは、そりゃそうでしょうよ。だって彼女はあなたの妻なんだから」そう言って私は笑った。

ルークも笑い、カーターに自己紹介して彼と握手した。ハンターとラナが私たちの前を通り過ぎるのにソフィアが気づいて、さっと私のほうに視線を向けた。私が首を振ると、彼女の目が凍りついた。

「ふん、だ。私の親友は本当にすっごい魅力的なんだから。ここにいる中でいちばん可愛いのは、間違いなく彼女よ」とソフィアがまくし立てた。彼女が必要以上に大きな声で言ったことがわかった。

その理由は、一つには私は親友のことをよく知っていたから。そしてもう一つは、ハンターが振り返り、ソフィアが満足そうな笑みを浮かべていたからだ。私は彼女に向けて頭を振った。どこまでいっても、彼女は変わらない。ライカンであろうとなかろうと。

「もうっ、あなたほどじゃないわよ。誰かさんたら、あなたからなかなか目を離せずにいるじゃない?」私はからかった。

カーターが私たち二人に飲み物を渡してきたので、ソフィアは言い返すチャンスを失った。そこから私たちは世間話に花を咲かせた。

10分ほど経った頃だろうか、聞き覚えのある二人の声が大声で私の名前を呼んだ。カーターがさっと振り向き、「番い……」と、私の嫌いな言葉を口にした。

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