
パリの危険な恋 ―目覚めた狼は止まらない― 1巻
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Annie Whipple
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6
第1章
ベル
荷物を持って空港を横切りながら、私は深呼吸をした。落ち着こうとしても落ち着かない。
私は飛行機が大嫌いだった。
クリスマスの前日にパリまでの11時間のフライトなんて、絶対に嫌だった。でも母が、彼女とその夫と一緒に休暇を過ごそうと私に頼み込んできたのだ。
母が私を誘ったのは罪悪感からだとわかっていた。
もう5年以上、母には会っていなかった。それに、父が病気になってからは、私を置き去りにしてもまったく気にしていないようだった。母はたった1年で再婚し、その後1年も経たないうちに子供ができた。彼女は父と私を完全に切り捨て、まるで私たちが存在しなかったかのように振舞っていた。
だから、母が今になって、会いに来るよう誘っていることが本当に腹立たしかった。
でも、私には他に頼れる人がいなかった。クリスマスをひとりで過ごしたくないなら、パリが唯一の選択肢だった。
セキュリティチェックを通過するのは思ったより簡単で、難なくゲートを見つけることができた。しかし、ここまでうまくいっているにもかかわらず、私は不安を感じずにはいられなかった。
私は人生で一度だけ、フロリダで祖母の葬儀のために飛行機に乗ったことがある。そして、2度目の今回は母がパリで挙げる、父ではない見知らぬ男性との結婚式のためだ。
だから、飛行機に乗るということはただ恐ろしいだけでなく、私の経験からして望まない状況に引きずり込まれることだった。今回のフライトも同じだろうと思っていた。
私は30分ほど搭乗を待った。飛行機に乗り遅れないようにするため、早めにゲートにつきたかったのだ。別のフライトの料金を払いたくなかった。
機内に入ると、手の震えを抑えることができなかった。客室乗務員が私の横を通り過ぎるときに微笑みかけ、私の緊張を察して安心させるようにうなずいてくれた。
私は微笑みを返そうと努めた。
飛行機の後方の席に着いたとき、私はこれから11時間ずっと隣に座ることになる男性に目をやった。彼の視線は私の体を上から下へと動き、しばらく私の胸元に止まった後、私の目と合った。
彼はにやりと笑った。「やあ、こんにちは」
ー素晴らしい。完璧だ。ー
ーこれから11時間、この変態にジロジロ見られるんだ。ー
「こんにちは」とつぶやいた。
変態を無視して、私は荷物を手に取り、頭上の荷物棚に入れようと持ち上げた。荷物に悪戦苦闘している私を見ていた変態が、自分のスーツケースを荷物棚の真ん中に置いたのに気づき、私はハッとした。
もう少しで荷物を入れられそうだったところで、突然腰に手が回され、シャツがめくれお腹の素肌に手が触れるのを感じた。
変態野郎だと思い、私は飛び退こうとしたが、両手が私を強くつかみ、その瞬間火花が私の体を走るのを感じて私は止まった。私は振り向いて、その手が誰のものなのか確かめようとした。そして、彼の姿を目にした瞬間、私は目を見開いた。
彼は息をのむほど美しかった…小さな飛行機の中では、彼の大きさが滑稽に見えるほどだった。
彼の筋肉は黒いシャツと青いジーンズから浮き出ていて、彼がかなりの時間ジムで過ごしたに違いないことが感じ取れた。彼は、チョコレート色の髪、魅惑的な深緑の瞳、紙を切り裂くようなシャープな顎の持ち主だ。
彼の唇は官能的でふくよかで、私は思わず身を乗り出し、私の唇を彼の唇に押し付けたらどんな感じだろうと想像した。
突然の深いうなり声に私がまっすぐな姿勢に戻ると、彼と目が合った。私の頬はたちまち赤くなったが、恥ずかしさを感じる間もなく、彼が話しかけてきた。
「僕のだ」彼の深くハスキーな声が私の耳に響いた。彼は私の腰をやさしく抱きしめながら、額を私の額に近づけ、深く息を吸い込んだ。
私は彼の手をひっぱたくべきだったかもしれない。けれど、ただ目を閉じ、彼の腕に包まれる感覚に浸りながら、心地良い刺激が私の体を駆け抜けた。こんなに気持ちいいことがあるなんて、知らなかった。
彼の頭が私から離れて、彼が首元に鼻をすり寄せるのを感じた。彼が近づきやすいように頭を傾けると、彼はうめき声をあげた。
すると、彼が私の首と肩の境目に優しくキスをするのを感じた。まず膝がガクンと崩れ、それから全身がしびれ、息苦しい吐息が口から漏れた。彼は私の首元で微笑み、くすりと笑いながら私の体重を支えた。私は倒れないように彼に寄りかかった。
まるで天国にいるようだった。
誰かの咳払いが私を現実に引き戻した。私は自分がどこにいるかを思い出し、キャッと声をあげて彼から離れようとした。残念なことに、私がミステリアスで信じられないほどハンサムを押しのけようとしたとき、私の手は頭上の荷物棚で荷物を持ったままのことを忘れていた。
スーツケースが私のほうへ滑ってくる音がしたので、私はとっさに身をかがめ、その硬い角が私の頭にぶつかるのを待った。
しかし何も起こらなかった。代わりに 「気をつけて、お嬢さん」という声が聞こえた。
私は目の前に立つ男を見上げた。彼の片手はまだ私のシャツの中にあり、背中の少し下に置かれていた。もう片方の手は、私のスーツケースを頭上で支えていた。
彼は私に微笑みかけ、ウインクをすると、私のバッグを荷物棚に押し込み、カチッと閉めた。まだ私の背中に手を置いたまま、彼は振り返って後ろにいる女性に目を向けた。その女性は、私たちが濃密な時間を過ごしている最中に、どうにか私たちの注意を引こうとしていたのだった。彼女は驚いた様子で、ためらいがちにもう一度咳払いをした。
「ごめんなさいね、私はただ席に着きたいだけなのに、あなたたちが通路をふさいでいるの。お二人の再会を邪魔するつもりはなかったのよ。あなたたち、しばらく会えていなかったのね」と彼女は優しく微笑んだ。
私は彼女に訂正しようと思い、初対面であることを伝えようとしたが、私を抱えていた男に先を越された。
「ちょうど席を探していたところです。すぐにどきますよ」彼の声は柔らかく安心感を与えるものだった。
女性はありがたそうにうなずいた。私は気まずい状況から逃れようと、その場を離れようとしたが、男は私を強く抱きしめた。
彼は身をかがめて、私の耳元でささやいた「そんなに急がないで。そう簡単には逃がさない」
それから彼は、フライト中私の隣に座ることになる変態を見た。「どけ」と彼はそいつに向かって言った。
変態はただそこに座り、私たちを見つめてしばらく呆然としていた。ついさっき起こった出来事をまだ処理しきれていないのだろう。そいつが私たちの様子を見ていたのかと思うと、私はとても不快な気持ちになった。
「何て?」とキモ男が聞いた。
「どけ」とそのハンサムは繰り返した。「そこは俺の席だ」
「何だって?動かないよ。ここは僕の席だ」
私を抱えた男が低くうなった。「ほら、俺のを使え」彼は変態にチケットを渡した。「ファーストクラスだ」と彼は言い、男が眉をひそめてチケットに目を通すのを見た。
「さっさと、行け」彼はゆっくりと、ほとんど脅すように言った。それはまるで、まさか自分の指示に逆らうのかとも言いたげであった。
変態はもう一度私たちを見ると、立ち上がり、素早くバッグを掴んで、目も合わさずに私たちの横を通り過ぎていった。私はあっけにとられてその様子を見ていた。
ーいったい何が起こったの?ー 奇妙な一日になってきた。
「ほら、行って」と謎めいた隣人が言い、私を窓際の席にそっと押しやった。
私は席に座って、彼が隣に座るのを見守った。何を言えばいいのかわからず、今さっきの出来事にまだ少し驚いて、恥ずかしさを感じていた。
「あの、さっきはごめんなさい」私はそう呟き、髪を耳にかけ、視線を落とした。私はこの男に好かれたいと思っていた。「知らない人にあんな風に触るなんて滅多にしないの、約束するわ」
私は緊張して笑った。彼が何も答えないので、私は咳払いをした。
「えっと…どうしてファーストクラスのチケットを捨ててまでここに座ったの?」
突然、彼の手が私の顎を掴み、頭を彼の方に向けさせた。私の目と彼の目が合い、彼の手は私の頬に触れた。
「君のそばにいたかったからさ」彼はかすれた声でささやいた。彼は親指で私の頬骨をなぞりながら、私の顔をじっくり見つめた。「まさかこんなに幸運なことがあるなんて」
私はどう答えていいかわからず、彼から少し遠ざかった。ーきっと聞き間違いね。ー
「ごめんなさい、何て言ったの?」
彼はただ微笑んで首を振った。「何でもない。気にしなくていい」彼はひじ掛けを超えて私の方に身を乗り出した。私たちは見知らぬ二人にしては近すぎた。
「俺はグレイソン。君の名前は?」
まるで夢の中にいるかのように、私は自分が「ベル」と言うのを聞いた。
彼の笑顔が広がった。「ベル」と彼は言った。「俺のベル」
彼の目はとてもきれいだった。つい見とれてしまうほどだった。「う、うん…」私はぼんやりと答えた。
彼は大きな笑い声をあげた。
ー何かおかしなこと言ったかしら?ー
「俺たちの絆は強いんだ。俺にはわかる」
ー彼が何を言っているのか意味がわからないのは私だけ?ー
「何て?私たちの絆?」と私は尋ねた。
彼は私の顔にかかった髪を払った。「そんなこと気にするなよ」
私たちの後ろで赤ん坊が大きな泣き声を上げたとき、私は、彼に引き込まれている夢うつつの状態から再び現実に引き戻された。その男<グレイソン>との距離の近さに気づき、私は後ずさりしてしまった。
彼の息遣いが私の顔にかかるのを感じたからだ。
再び緊張した笑いがこぼれた後、両手を膝の上に置き、ぎこちなく見えないように努めた。
ーこの人はきっと、私のことを変人だと思っているわ。ー
「それで?仕事?それとも、遊び?」とグレイソンは尋ねた。
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