
The Millennium Wolves ミレニアム・ウルフ 2巻
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Sapir Englard
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4
マーク
シエナ
彼は舞踏室で私の匂いをかぎつけた。彼は私のヘイズを嗅ぎつけ、ここまで追いかけてきた。
でもエイデン・ノーウッドは――今は薄っぺらい金属製のドアに阻まれてはいるものの90センチしか離れていない場所で――私が下着を足首まで下ろし、指を自分の中に入れて、オルガズムに達しそうになっているのを、嗅ぎつけることができたのだろうか?
「ヘイズは予測不可能な場所にいる時に突然現れるものだ」と彼はうなるように言った。
しかし、その面白がっているよう口調に、私はムッとした 私は思わず口に出してしまった。「何が言いたいの?」
何てことだろう。アルファにそんな口の利き方をするなんて。死にたいの?
私はゆっくりと指を引き抜いた。身体は抵抗したが、私の心が(ありがたいことにまだ機能していた)どうにか勝てた。
前かがみになって下着を上げようとすると、エイデンがささやいた。「どうして性欲を発散しようとしないんだ?」
それは質問ではない。命令だった。
全盛期の純粋なアルファのオスが、格下のメンバーの一人に従うよう命令したのだ。私のことを名前もないように "女 "と呼んで。見下し、裁く気だ。
私は背筋を伸ばし、ドレスを整え直した。
「なぜ私にそのような言い方をするの?」私は憤慨していた。「わざわざ女子トイレに入ってきて、性欲を発散していけって命令するの? 何様のつもり?」
そう言ったことを後悔すべきか、あるいは許しを請うべきか、考える時間はなかった。というのも、気がつくとドアが開いていたからだ。
そして彼が立っていた。
エイデン・ノーウッドは、恐ろしくもあり美しくもあった。彼は金緑色の瞳を輝かせ、敵意のこもった目でみつめてきた。
慌てて下着を上げてよかった。でなければ、どうなったことか。
「何様のつもり、だと? 思い出させてやろうか?」
私は彼の匂いに気づいた。アルファはただ怒りに駆られているのではない。彼もヘイズのまっただ中にいる。
私の脳裏にさまざまな疑問が浮かび上がったが、それに答える時間はなかった。彼のヘイズが私のヘイズを、耐え難い脈打つような激しさで再燃させたからだ。
やがて私の怒りは、そのあまりの熱さに溶けていった。
私は打ちのめされていた。彼を求め、もっと近くにきてほしいと願っていた。
彼は私の心を読み取ったかのように、個室に足を踏み入れた。
心臓が胸を裂きそうなほど鼓動し、足はガクガク震えた。
「ちょっと、何をする気?」慌てて言った。
「俺が誰だか知っているはずだ。言ってみろ」
「あなたは...アルファ」
「名前は?」
言うべき? よほどの側近かと性的パートナー以外、誰もその名前を口にしないはずなのに。
ダメよ。私は首を横に振った。屈服してはダメ。ヘイズになど負けるものですか。絶対にダメだ。
彼の脇をすり抜けて個室を出ようとしたが、彼は手を上げて私を遮った。
「何を恐れている?」
手を押しのけようとしたものの、手首をつかまれた。
恐怖心を覚えるのは当然だ。トイレの個室でオオカミ男に、それもアルファに追い詰めらているのだから。
でも正直言って、エイデン・ノーウッドが私の意思に反して何かを強要するとは思えなかった。彼は私のヘイズが自分を絶対的に必要としているのを感じ取っていたのだと思う。
これまでどんな女も彼に抵抗しなかったのに、なぜ私が抵抗するのか知りたかったのだろう。
「お願い...行かせて」私は声を震わせて言った。
「アルファに命令するのか?」
「お願いって言ったでしょ?」
自分の大胆さが信じられなかった。
初めて彼の顔を間近に見た。そのゴールデングリーンの瞳の中には苦悩が渦巻いていた。彼は私の言葉の真意をはかりかねてるようだ。しかしその時、彼の鼻孔がピクリと動いた。
彼は私の指を――さっきまで私の中に入っていたのと同じ指をーー自分の鼻に近づけた。
彼がその香りを吸い込むのを見て、彼の中のヘイズが脈打つのを感じた。
「君は...」と彼は話し始めた。
「自分で性欲を発散してたの。あなたが言ったように」
「男ならもっと快感を味わわせてあげられるのに、どうして?」彼はハスキーなささやき声で言った。その含みのある言葉だけで、十分だった。どうすることもできなかった。
私はうめいた。
それが合図だった。
その1秒後、アルファは私をトイレの壁に押しつけた。足が宙に浮き、そのまま彼の体に巻きつけた。
さらに体を強く壁に押しつけられ、彼の股間の膨らみを感じた。
興奮の熱い波が私に襲いかかった。男にこんなふうに触れられたのは初めてだった。私はめまいを覚え、正気を失い、自分が自分でないように感じた。
彼は私の首筋に唇を押し当て、私の汗を舐め始めた。輝く汗の一滴一滴を彼はむさぼる。
それはもう、たまらないほどに。
「やめて...私...」
しかしもはや、私たち二人を捕らえて離さないヘイズに抵抗するような力はなかった。
彼の膨らみが湿ったショーツに押しつけられた。思わずうめき声がもれた。快感と痛みとその間のありとあらゆる感覚に反応するかのように。頭がぼんやりとして、セックスのことしか考えられない。
彼の手が…。ああ、彼の手が…。その手は私の手首を離れ、ドレスの下に潜り込み、私のむき出しの尻をつかむ。
彼の大きくて、温かくて、ごつごつした手が、そこにあるべきもののように感じられた。
自分でも気づかないうちに、私は下腹部を彼の下腹部に押し当てていた。興奮した彼がうめき声をあげた。
腕を彼の首に巻きつけて、彼を抱きしめ、自分のあらゆる部分を彼に押しつけようとした。
今まで経験したことがないほど、彼が欲しかった。
彼の唇に微笑みが浮かんだ。君を手に入れられると思っていた、とでも言いたげな視線。その自己満足、自惚れ......その瞬間に魔法は解けた。
怒りと嫌悪で目がくらみ、私は唸りながら彼の腕の中でもがいた。ヘイズはまだ残っていたが、心はようやく晴れてきた。再び考えることができるようになったのだ。
「どうしたんだ、女」と彼は唸った。
女。やはり、私は彼に犯され、捨てられるただの一人の女にすぎない。
「放して」私は歯を食いしばって言った。「今度は本気よ」
「本当にいいのか?」
またもや彼は私の下腹部に脈動する肉棒を押しつけた。私は息をもらしそうになる衝動を必死で抑えた。
イーストコースト・パックのアルファであるエイデン・ノーウッドが、パックハウスのトイレの個室で、私シエナ・マーサーと熱いドライファックをしていた。
どうしてこんなふうに自分を見失うことができたのだろう? この3年間、ヘイズであっても、私は自分をコントロールすることができた。あらゆる誘惑を拒み、自分を保ってきた。今までは。
よりによってアルファと、どうしてこんなことに......。
なぜただ楽しむことができないの、と思う自分もいるのは確かだ。でも、別の賢明な自分には、それができないはっきりした理由があった。この男は私のパートナーではない、ということだ。
それは確かだった。
「あなたはアルファだわ」と私は唸った。「服従すべきなのはわかっている。でも......」
「服従はしないんだろ」 彼は微笑んだ。「わかってる。そこが好きなんだ」
私は顔をしかめた。これは驚きだった。さらに驚いたのは、しばらくして、彼が実際に応じたことだった。
彼は私を床に下ろしてドアを開け、まるで「行ってらっしゃい」とでも言うような仕草をした。
しかし、彼の目はまったく違うことを言っていた。まだ始まったばかりだ、と。
あえてその意味を考えることはしなかった。せっかくの逃げるチャンスを失うわけにいかない。
目を伏せた従順な姿勢で彼の協力の意思に敬意を表しながら、急いでドレスを直してトイレを出た。
ドアを閉めたあとも、私の背を見つめるエイデン・ノーウッドのゴールデングリーンの視線を感じ続けた。いったい何が起こったのだろう?
***
自分の席に戻ると、何人かが私をいぶかしげに見てきた。
私がホールを出た後、わずか数分後にアルファが席を立って姿を消したことに、気づかない者などいるはずがない。
最初に私をなめるように見たのはママだった。
「もしかして......あなた、その髪......」
何てこと― ずっとうつむいていたせいで、自分の姿を見ていない。大丈夫だろうか。何もなかったように見えてる? まさかアルファとドライファックしてたようには見えないわよね?
わざとらしく顔の横の髪を耳にかけ、皿を見つめながら、私は食事をするようママを促した。
でも、まだ自分にアルファの匂いがついているのがわかるくらいだから、ママもきっとわかってるはずだ。
「静かに食べようよ」
ありがたいことに、ママはそれ以上話しかけてはこなかった。
そしてすぐに部屋にはにぎやかさが戻った。皆、私はすっかり忘れ去られ何事もなかったかのようなふりをすることができた。
エイデンが部屋に戻っても、誰も私に注意を払わなかった。
もしかしたら、私は評判も体も無傷のまま、このパックハウスから逃げ出すことができるかもしれない。
もしかしたら...
夕食が終わり、家族がアルファとベータに個別に会うという儀式を含むいくつかの儀式を終えると、私たち家族は出口に向かった。
もう少しで無事に家に帰れる。
だがその時、私はホールにショールを忘れたことに気づいた。しまった!
「みんな、忘れ物をしちゃった。すぐ戻るね。先に行って車を出しておいて」
「わかったよ、シエナ」とパパが言った。
パパ、ママ、セレーネ、ジェレミーは外に出て、私はショールを取りに戻った。
私はエイデン・ノーウッドがまだホールにいるんじゃないかと、また彼と1対1で会わなければならないんじゃないかと、怖くてたまらなかった。
でも驚いたことに、部屋には誰もいなかった。
私はショールをつかみ、パックハウスの玄関に戻った。
外に続く廊下には誰もいなかった。ドアの向こう側で、何人かの家族が家路につこうとして談笑しているのが聞こえた。
それを感じたのは、ドアの取っ手に指が触れたときだった。私の真後ろに迫る気配。見覚えのある匂い。
やめて。お願い。
「まだ帰すわけにはいかない」エイデン・ノーウッドが私の耳元でささやいた。
彼の熱い息を首筋に感じ、私は喜びと嫌悪で震えた。
「言ったでしょ」と私は言い、振り返ろうとした。「私は…」
しかし、私がそれ以上言葉を発する前に、アルファは私のうなじに唇を近づけた。そして、止めるより早く、私の肌に歯を突き立てた。
私を噛んだのだ。
そのかみ傷は、消えるのに何ヶ月もかかるようなものだった。
これで、世界中のすべてのオオカミ人間に、私が誰のものであるかが明らかになった。私が彼のものであることを示すかみ傷だ。
エイデン・ノーウッドは私をマークしたのだ。
「シーズン中、君は俺のものだ」と彼はささやいた。「君に触れた男は誰であろうと殺す」
そう言うと彼はきびすを返し、パックハウスの奥へと姿を消した。
自分が彼とセックスをしたいのか、それとも彼を殺したいのか、自分でもよく分からなかった。
でもそのどちらかが起こることは確かだ。
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