
His Lost Queen 失われた女王 14 巻
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Annie Whipple
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3
この巻は「His Lost Queen 失われた女王 13巻」からの続きです。
第57章
ベル
あれこれ考えていると、うなり声とシューという音が背後から聞こえてきて我に返った。大勢が戦っているようだった。きっとヴァンパイアと人狼だろう。
うなり声の主がわかったとき、胃が飛び出しそうなほど驚いた。この鳴き声はどこにいても聞き分けられる。グレイソンのオオカミだ。
パートナーの苦痛の声が大きく激しくなるにつれ、心臓が早鐘のように鳴り続け、私は声のする方向に急いで走った。
暗闇の中で見つけたものは、想像以上にひどい光景だった。銀白色の髪の男と、真っ黒な髪の男がふたり、私に背を向けながら木々の向こうの空き地を眺めていた。
大柄なほうは立っていて、髪と同じ黒ずくめの服を着て、胸の前で腕組みしていた。もうひとりの男は低くしゃがみこんでおり、茶色のフード付きロングトレンチコートが地面についていた。
そして両腕を前に伸ばして指を広げていた。彼らの目の先のものを理解するのに少し時間がかかった。
うなりながら反撃するオオカミの上に、人が山のように積み重なっていた。彼らはオオカミに噛みつき、爪で切り裂き、オオカミは吠えながら対抗していた。
グレイソンだ。このオオカミはグレイソンだった。
しばらく見ているうちに、彼の上に乗っている全員が同一人物であると気づいた。
同じ服、同じ黒髪、そして赤い目。
アザゼル・モーターだった。アザゼル・モーターが今、私のパートナーを殺そうとしていた。
この光景には理解できないことがたくさんあった。
これほど多くのアザゼルが同時に存在できる理由が理解できなかった。そして地面にしゃがみ込んで両手を広げている年配の男が何をしているのかも。
でも、そんなことはどうでもよかった。グレイソンを助けることしか考えられなかった。
そして本能のままに行動した。キッチンから持ってきたナイフを強く握りしめたまま前へ走った。
おそらく私が近づく音が聞こえたのだろう。アザゼルは振り返り、見たことのある大きな目でこちらを見た。私はその目を知っていた。グレイソンの群れの家で、嬉しそうに憎しみをたたえて私を見下ろしていた。
数か月前、目の前のこの男がした邪悪な仕打ちを、どうしてグレイソンがしたと信じ込んでいたんだろう。今、この男は私の最愛の人を殺そうとしている。
だから私がこの男を殺す。
アザゼルは私を見たショックで行動を起こす一瞬の機会を逃した。そして1秒後、その腹にはナイフが突き刺さっていた。
彼は息を呑み、腕は両脇に落ち、口元が緩まった。
チャンスを逃してなるものかと、ナイフを引き抜き、もう一度思い切り突き刺した。そして念のため、もう一度。
命を司る臓器に確実に命中させるためだ。
体から出てきた血が私の手に流れ出た。アザゼルは咳き込み、口から出た血が私の白いシャツとジーンズに飛び散った。
アザゼルは私の手首を掴んで爪を食い込ませ、その目に激しい怒りを宿らせていた。そして「このクソ女」と吐き捨てた。
その直後に前に倒れ始めたので、私はナイフを掴んでいた手を離さざるを得なかった。手の小さい私ではこの男の巨大な体を支えられなかったのだ。
腹に深く刺さったナイフをそのままに、アザゼルは大きな音を立てて腹から地面に倒れていった。
その周りに血溜まりができるのを見ていた。最後の荒い呼吸とともに背中が不規則に上下して、ついに動かなくなった。
喉や目の奥で脈拍を感じた。まるで競走馬のように、胸の中で心臓が激しく動いていた。それで自分がたった今したことを自覚できた。
私は人を殺した。
邪悪なヴァンパイアであろうとなかろうと、私が原因で人が死んだ。
アザゼルの血を全身に浴びていた。手には真っ赤に染まり、顔にも血が飛び散っていた。靴の下には血溜まりができていた。
人を刺し殺した後の血の量なんて誰も教えてくれない。
本当に、大量の血が、出てくる。
自分のしたことの恐ろしさに気を取られ、もう一人男がいることを忘れていた。気づいたときには手遅れだった。
アザゼルが私のパートナーを倒すのを手伝っていたその年配の男は、地面にしゃがみこんだままで背後の私を見た。
肩まである白髪に灰色の筋が入り、見たこともないような奇妙な骨格をしていた。
その奇妙な特徴に驚きつつも魅了され、思わず動きが止まってしまった。
四角い顎は短くそっけないヘアカットで強調され、鋭い頬骨は肉の下から突き出て、病的なまでに頬がくぼんでいた。
彼の肌は、ほとんどは衣服で覆われていたが、わずかに見えたものは、こちらが狼狽するほどしわだらけだった。
そして、体の隅々までタトゥーが彫られていた。
そのタトゥーは茶色い革のコートの袖から顔を覗かせ、骨ばった指を蛇行し、首を登り、顔を一周し、髪の生え際で消えていた。
黒々としたインクも動いていて、体の一部のように黒い渦巻きが肌に沿って生き生きと踊っていた。魔法の臭いがした。ただし、私が知っているタイプの魔法でなかった。
この男が起こせる魔法はダークでパワフルだった。
ただ、彼の外見で最も不快なのはそこではなかった。彼の目こそ、その称号にうってつけだった。
その瞳は真っ白で、虹彩はほとんど見えず、瞳孔は白い吹雪に支配されていた。そして、私たちを取り囲む暗闇の中で、その瞳は明るく輝きながら揺れていた。
まるでホラー映画のワンシーンのような光景で、しゃがみこんで私を見つめるクリーチャーの白い目だけが見えた。
そして彼が私を見るその視線に血の気が引いた。彼の視線は、まだ私の足元に横たわっているアザゼルの体に移動して、また私に戻ってきた。そのとき気づいた。この男は私を殺すつもりなのだと。
かろうじてパートナーの名前を叫ぶことができたが、彼の骨ばった指が私の首に巻きつき、体は後ろの木に押し付けられた。
最低だ、ついさっきナイフを手放しちゃったじゃない、私。




















