
ギデオン 人狼のハーフですがライカンと運命の恋人です 6巻
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Nicole Riddley
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🔥31.6M
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4
この巻は「ギデオン 人狼のハーフですがライカンと運命の恋人です 5巻」からの続きです。
報復
レイラ
ヘレンが私に向かって確かな一歩を踏み出す様子を目撃し、彼女が変身しつつあるのが分かる。瞳は今やすっかり黒く染まっている。
濃い青い静脈が目の周りに広がり、蛇のように細い線を描く。歯と犬歯が伸び、体も変化の兆しを見せている。
ヘレンが私に迫る前に、私は飛び上がる。衰弱しているうえに、経験も浅いことはわかっているけれど、ただ、黙って屈するつもりはない。
ギデオン。彼に私の痛みが伝わらないことを祈る。
変身するのは簡単だ。ただ、閉じ込めている野性の部分を解き放つだけだ。
私の中のライカンを。
胸から広がって、全身を灼熱が包み込む。内側から燃え盛るような感覚だけど、それほど痛くはない。視界が変わっていく。体中が変容していく。
ヘレンは一刻も無駄にしない。唸り声と共に、鋭い爪で私の顔を引っ掻く。私は跳ね返り、爪はかすりもしない。
間髪入れず、彼女は腕を大きく振りかざし、致命的な弧を描いて再び襲いかかる。
私は身をそらせるが、今度はよろめき、地面に倒れてしまう。
無防備な状態から立ち上がろうともがくが、彼女はすぐに飛び上がって私の腹に跨がる。私を地面に押し付け、キラキラと輝く歯と犬歯を嬉しそうに剥き出しにする。
彼女は私の手を掴んで、両腕を頭の上に押し上げる。腕と指の骨折からくる痛みは耐え難い。
私は激しい苦痛に叫び声をあげる。彼女は唸り声を上げ、私の手を強く握り締める。彼女の瞳に輝く光が、ゲームオーバーを告げている。
彼女の歯と犬歯が私の喉元に迫る。彼女の勝ちだ。
私は彼女に向かって歯を剥き出しにし、頭を後ろに反らせて額を彼女の額に思い切りぶつけた。
痛みに目がくらむ。自分の頭蓋骨が割れる音がしたような気がする。額から血が目に流れ込んでくる。
ヘレンは唸り声を上げながら、私のすぐ横でうつ伏せになり、頭を抱えている。彼女の足はまだ私の腹の上にある。
彼女は這い上がって私の上にまたがろうとするが、その動きは遅く、協調性がない。私は腕を上げて彼女の喉をつかんだ。
爪が何かの肌に突き刺さる感触があるけれど、頭と体の痛みが激しく、指は弱くて力が入らない。
「手を放せ、くそアマ!」彼女はヒステリックに言い、私の手をひっかき、私の指を彼女の首から外そうとする。
彼女を殺したいという衝動が私を支配し続けているが、体はますます衰弱していく。私はしがみつく力を強めようと奮闘し、爪をさらに深く突き立てる。
腕は弱っているけれど、今のところ彼女の鋭い歯と犬歯をを喉元から遠ざけるのには十分だ。
「放せ!」今度は彼女が爪を私の指に立て、手のひらに爪を食い込ませる。
ヘレンめ!
焼き付くような痛みだけど、屈するつもりは毛頭ない。最後まで持ちこたえる覚悟だ。
彼女の顔から流れる血を見つめて、ほんのりと満ち足りた気持ちが心に漂う。
自分の目に流れる血を瞬きで払おうとし、腹部、腕、そして彼女の鉤爪が肉を引き裂く痛みを無視しようとする。
彼女の爪がますます凶暴になる。これ以上は持ちこたえるのが難しくなってきた。
突如、周囲の空気が変わるのを感じ、私は驚きと共に息を呑む。
ヘレンの体の重みが取り去られる感触があり、馴染み深い香りを嗅いだ瞬間、安心して体が緩む。
直後に、それほど遠くないところから、ヘレンの痛みと怒りに満ちた遠吠えが聞こえる。
もう一度瞬きをすると、すぐにクインシーの笑顔が私の視界に現れる。
「やあ!」彼女のいたずらっぽい瞳が輝いている。
ペニーの顔が彼女の隣に現れる。彼女の微笑みもクインシーと同様だ。
「本当に見事な頭突きだったわね」彼女は頷きながら、ヘレンの声の方向を指さす。
少し目を閉じてから再び開ける。「頭を武器に使ったのは間違えだったわ」と呻く。
「でも、よくやったわ」と、すぐ近くから別の声が主張する。ジェネシスだ。
クインシーとペニーが起き上がるのを手伝ってくれて、私はクインシーの肩越しにちらりと目をやる。
ギデオンは半分変身した状態で、ヘレンの喉を掴んでいる。彼女は、唾を吐きながら声を上げ、蹴り、悪態をついている。足先は5センチほど地面から浮いている。
私のエラスタイは荒れ狂ってみえる。彼がこれほど制御不能になっているのをこれまで見たことがない。
髪は乱れ、破れた灰色のシャツ、ブルージーンズ、そして裸足には血のしぶきが散っている。
両手には血が滴っている。
彼の体に傷がないか目を走らせるが、どこにも見当たらない。彼の血ではないことにほっと胸をなでおろす。つまり、最初の犠牲者はどこかで死んでいるのだろう。
ルイとロイヤルパックの残りのメンバーは周りに立ってじっと見守っているが、彼を止めようとはしない。
「ギデオン、彼女を放して!」立ち上がろうとするも、クインシーとペニーに押しとどめられる。
ギデオンはその威圧的な黒いオニキスの目を私に向ける。
「だめだ!」と彼は唸る。怒りが強烈な波として湧き上がってくるのを感じる。
私も苛立ちから唸り声を上げる。彼女を引き裂きたい衝動はまだ強い。「私が彼女を仕留めたいの!」
セレナは私の肩にしっかりと手を置き「下がって、レイラ」となだめる。「彼はコントロールを失いかけているの。彼にやらせて。そうすれば彼のライカンが早く鎮まるわ」
カスピアン王子は、さまざまな角度からの光景を楽しむかのように、ゆっくりとその周りを歩いている。
彼の声が響き渡る。「お前は無実の者を殺そうとした。彼女のエラスタイには報復の権利がある。最期に言いたいことはあるか、ヘレン?」
彼の声は冷たく、それでいて楽しそうだ。
「ギデオン・・・私が誰か分かるでしょ。お願い、放して」とヘレンは懇願する。
「ああ、お前が誰か分かっている。私の番いに触れた瞬間からお前が死ぬことは決まっていた」とギデオンが怒鳴る。
「お願いです・・・ごめんなさい・・・二度と彼女に近づきません。約束します!」と彼女は言う。
「お前の約束など口だけだ」と彼は歯をむき出して冷笑する。「俺のエラスタイを排除するまで、おまえが止めないことはわかっている。だからお前を殺さない限り安心できない」
そして、ギデオンはヘレンを破壊した。血しぶきがあちこちに飛び散る。私は彼が彼女を引き裂くのを見つめる。彼女の背骨が体から引き裂かれた瞬間、私の中の抑えがきかない欲望は終わりを迎える。
ペニーとクインシーが私を両側から支え、立ち上がるのを手伝ってくれる。彼らが私を引き寄せるとき、地面で光る何かを捉える。
草の葉と血まみれの体の一部に、ダイヤモンドのブレスレットが挟まっている。ギデオンがヘレンに別れの贈り物として渡した、まさにあのダイヤモンドのブレスレットだ。
「何をしているの?」私がそれを取るために、かがみ込むのに苦労していると、クインシーが尋ねる。手に持ってすぐに彼女に見せると、「きれいだけど、なぜ拾ったの?」と彼女は尋ねる。
私は肩をすくめる。「彼女にはもう必要ないからよ」
「それもそうね」とペニーはすぐに同意する。「でもそれ・・・持ち帰るつもりなの?それはちょっと不気味じゃない」
ということは、殺すのは普通だけど、宝石を持ち帰るのは不気味だということ?私たちの倫理観は本当に狂っている。
「ううん、質に入れるつもりよ」私は汚れたジーンズで輝くダイヤモンドから血を拭い取り、それをジャケットのポケットに押し込む。
人によっては大した価値がないかもしれないけれど、それで得られるお金はサラの生活費を払い、負担を軽くするのに役立つのではないか。
見知らぬ男たちに勝手に視姦されたり、触られるクラブで働く必要もなくなるかもしれない。
学業を終える間、彼女は母親とチャーリーの世話をすることができるだろう。
ペニーとクインシーは、近くで待っている車の後部座席に私を乗せようとするが、私は頑なに拒否する。
体中が痛み、自力で立つのがやっとだけれど、ギデオンを待ちたい。自分を支えるのがやっとで、目を開け続けるのが精一杯でも、私は中に入ることを拒む。
その直後、ルイがやってきて車に乗せようと説得しようとする。「さあ、お嬢さん、痛いんだろ?横になって休んだほうがいい」
体に違和感を感じながらも首を振る。 悪寒が腕と背中を駆け巡る。
私は彼が必要なの。彼だけが与えてくれる温もりと安心感が必要なの。彼に『すべて大丈夫だ』と言ってもらいたい。
でも、やっと彼がやってきたとき、私が感じたのは、彼から放たれる冷たさだけだった。
「彼女を家に連れて行って、医者に診てもらえ。俺たちは片付けをする」とギデオンはルイに言い、私たちに背を向ける。
彼の顔はよそよそしく、顎と広い肩は緊張に包まれている。
「ギデオン!」と私は呼びかける。
一瞬、私を無視して立ち去るのかと思ったが、彼は立ちどまる。
なぜこんな態度をとるの?なぜ私を見てくれないの?
背中には再び寒気が駆け上がる。体が震え、歯がガチガチと音を立てる。一瞬で彼は振り返り、私の方に歩み寄る。
彼の目に映る冷たさは心強いとは言えないけれど、彼の腕に包まれると、ぐっと温かく・・・そして安心感が湧いてくる。
頭は疲れて考える余裕がないし、体も弱っている。だから、今は手に入るものを受け入れることにする。
ギデオンは何も言わずに、腕を私のひざの下に差し入れ、私をそっと持ち上げる。
彼が私をどこに連れていくのかはわからない。だけど、私は目を閉じて、彼の首筋に顔を埋め、力尽きる。