
パリの危険な恋 ―目覚めた狼は止まらない― 4巻
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Annie Whipple
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5
この巻は「パリの危険な恋 ―目覚めた狼は止まらない― 3巻」からの続きです。
第16章
ベル
それからの日々は完全な地獄だった。グレイソンが私の首につけた愚かな噛み痕のせいで、私は痛みに悶えながら、どれくらいあの部屋にいたのか、見当もつかなかった。ほとんどの時間をベッドに横たわり、叫び、震えながら、痛みで意識が飛んだり戻ったりして過ごした。何度気分が悪くなったか数え切れない。
胃がキリキリと痛むたびに、バスルームとベッドの間を走り回らなければならなかった。この時点では胃液を吐いているだけだとわかっていた。
ついにベッドに戻るのをあきらめ、代わりにバスルームの床で寝た。目を覚ますと、身体を貫くズキズキするような激痛が次から次へと襲い、悲鳴を上げることになった。
カイルが食べ物を持って何度か部屋に入ってきて、グレイソンを中に入れるよう頼み込んできた
グレイソンが私のもとを去った後、階下のリビングルームが荒れ、物が壊れ、カイルと口論するのを聞いた。あまりにうるさかったので、あの豪華なホテルの部屋が今どうなっているのか想像するしかなかった。
グレイソンを遠ざけるという私の決断に後悔はない。
彼は怒りをコントロールできない。何度か彼がドアの外にいるのを感じた。その間、私の痛みはほんの少し改善された。彼は何時間もそこにいて、オオカミの鳴き声が聞こえることもあった。
少し胸が痛んだが、無視するのが精一杯だった。
カイルがグレイソンを中に入れたいと言うたびに、私は何度も何度も、彼を近づけたくないと繰り返した。私ひとりで乗り切るから、彼は必要なかった。
グレイソンは、痛みはやがて収まると言っていた。そうなれば、やっとここから出られる。私はただ耐え抜くしかなかった。
何日もの間、痛みは悪化の一途をたどり、私は床に倒れこんで動けなくなった。
食べられず、眠れず、何もできなかった。
さらに最悪なことに、グレイソンのことばかり考えていた。どんなに止めようとしても、頭の中はグレイソンのことばかりだった。
彼がドアの外にいるのかどうか、もうわからなかった。
痛みしか感じなかった。
彼が外にいるのか、それとも私のことをすっかり忘れて別のことをしているのか。そう思うと悲しくなった。
彼の髪、目、顎、唇のことを考えた。彼の笑顔や、彼の腕に抱かれたときの気分を考えた。
そして、彼に紛れ(まぎ)もなく惹かれていること、そして彼が私に安心感を与えてくれることについて考えた。怖いと感じさせるよりも、はるかに多くのことを感じさせてくれる。彼はどういうわけか、孤独でないように感じさせてくれたのだ。
私にとても優しく、まるで私が今にも割れそうなガラスの飾り物のように扱った。彼はいつも私の面倒を見ると言ってくれた。出会ってからずっと、彼は優しさしか見せてくれなかったのに、それでも私は彼を追い返してしまった。
彼は私を誘拐した。しかも、危うく人を殺すところだった。
彼は巨大で強く、間違いなく私を爪楊枝(つまようじ)のように折ることができた。そして、そう、彼はいつでも狂暴なオオカミに変身することができた。
ーどうやってあのことを忘れられるの?ー。
しかし、それでもなお、私は彼の隣で、彼の肌を私の肌に感じることを切望していた。
もう一度キスをしたかったし、彼の手を握り、髪を撫でたかった。
彼は今どんな気持ちなのだろう。
私が放っておいてくれと泣きながら頼んだとき、とても悲しそうだった。本当にそう思っているのか、それとも演技なのか。ただ単に被害者と心理ゲームをしている誘拐犯かもしれない。でも、もし私が本当に彼の伴侶で、彼が私に心を打ち明けた後に、ひどい気持ちにさせて彼を追い出していたとしたら?
胸が締め付けられた。
私は、彼が伴侶ということについて真実を語っているかどうかはわからないと思い直した。
しかし、彼は私の目の前でオオカミに変身したのだ。
だから、人狼であることは嘘ではなかった。でも、オオカミは私を傷つけたりしなかった。だから、私が彼の伴侶であるというのも嘘ではなかったのだろう。
心の底では、彼が本当のことを言っていることを密かに願っていた。つまり、あの男は私たちが運命の相手だと言ったのだ。私を傷つけるはずがない。
それに、なぜ私が彼のことを知りもしないのにあんなにあからさまに惹かれていたのかが説明できる。彼と出会ってからずっと頭の中で繰り広げられていた恥ずかしい妄想の説明が簡単にできるのだ。
そして、最後は…つまり…ーだって、彼を見たでしょ?ー
彼はすごく美しかった。優しくて、魅力的で、守ってくれて、久しぶりに悲しみ以外の感情を抱かせてくれた人だった。
ーああ…なんで彼を追い出してしまったんだろう?ー
なぜ私は、父が死んでから初めて私に起こった良いことを、遠ざけてしまったのだろう?
自分が何をしているのか理解する前に、体が動いているのを感じた。
私はドアに駆け寄り、ドアを開けた。
使命感に燃えていた。
グレイソンがどこにいるのか知らなかったが、彼を見つけるまで探すことを決めた。
廊下に出ると、すぐに彼と目が合った。私は大きく息を吸い込んだ。彼は長い廊下の突き当たりの壁に、膝を曲げて座っていた。
疲れ切っているように見えた。
髭が伸び、目の下には大きな隈(くま)があった。その姿を見て私の心は張り裂けそうになった。彼は私を見ると目を見開き、私を怖がらせるのを恐れているかのように、ゆっくりと立ち上がった。
私はためらいがちに一歩、また一歩と彼のほうへ歩み寄り、やがて小走りで彼に近づいた。彼は私を途中で迎え、私は彼の首に腕を回した。
そして、すべてが突然、うまくいった。