
Fighting Darius 忘れたかった男との再会 4巻
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Nicole Riddley
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5
ピアス解剖学
ペニー
「今のは何よ?」車の中で二人になった途端、私は叫んだ。
ダリウスが、私たちの寝室事情について爆弾を投下した時点で、私にとってパーティーは終わったも同然だった。
「あいつは神経に障った」と、ダリウス。
「神経に障った? メイソンが? ああ! 私たちが同じベッドに寝てるってバラすなんて、どういうつもり? 何なのよ、本当に! 私たち、友達のはずでしょ。純粋な友達よ!」
「気づいてないなら言っておくけどね、友達は一緒に寝ないの。普通はね。なのに、どうしてそんなことみんなに言うのよ? あなたは私の男探しを応援する役でしょ? 男を追い払ってどうするのよ! 全然役に立ってないじゃない!」
私は息を切らせ、一瞬、言葉を切った。まだ終わっていない。
彼はただ座ったまま、私が癇癪を起こすのを見ていた。狂ったように叫ぶ様子を。表情はまったくの空っぽで、読めない。
でも、運転席に座るその様子はとてもリラックスしているように見える。自分に疑いもなく、満足している感じ。それがさらに腹立たしい。
「あなたは威圧的だし感じが悪いし、それに… それに… あり得ない! ムカつくの! すごく! 私たちがただの友達だなんて、もう誰も信じない。もう無理… みんなだって… 私は頑張ったのに… だって… あなたはどうなの? ねえ? もう何なのよ!」
私は腹が立ち過ぎて、支離滅裂になっていた。文章もつくれない。「一緒に寝てるなんて、人に言うのはやめて!」
「でも、本当だろう?」一呼吸おいて、彼はにやりと笑う。
は? 「それはそうだけど… あの言い方は、まるで…」
「毎晩セックスしてるみたいに聞こえた?」
「そのとおりよ!」彼の言葉に胃が重くなるのを感じながら、私は怒鳴り返した。
「少なくとも、これで君はあのバカ男から解放された。まるで君と付き合ってるみたいな態度だったから、イラついたんだ」
「あなたはどうなの? 嫉妬深い野蛮人… 原始人みたいだったわ。私は自由な女なんだから。誰のものにもならない」私は宣言する。
その言葉で、ダリウスの瞳に変化が生じた。彼は何かを言おうと口を開きかけ、また閉じた。
彼はエンジンをかけ、道路に目を向ける。パーティー客で溢れかえる道から出ようとハンドルを切りながら、顎を頑固そうに強ばらせている。
「メイソンが私の夫みたいに振る舞ったからって、あなたには関係ないでしょ。どうしてそれが嫌だったわけ?」
「ただ嫌だった。気に食わないだけだ」彼は、前を走るトラックに険しい目を向ける。
「でも…」彼の返事に、私は少し調子を崩す。そんなふうに言うとは思わなかった。まるで、彼まで癇癪を起こしそうな感じだ。
「でも…そんなのおかしい。私は好きにするわ。メイソンと付き合いたかったら、付き合う。あなたには関係ないことよ。あなたは… あなたが自分のものにしたいのはポリーナでしょ」と、最後に付け足す。
ああ、口に出すだけでも、まだつらいなんて。でも、それが事実なのよ、ペニー!
「そうか」ダリウスは食いしばった歯の間から絞り出した。フロントガラスの向こうを見つめたまま、目を細める。
「そうよ!」私はきつい声で答える。
彼を蹴とばして、怒鳴りつけて、パンチしてやりたい気分は変わっていなかった。その完璧な顔と体をひっかいてやりたい。壊してやりたい。
どれだけの夜を彼を想って過ごしただろう。「私を愛して! 私を選んで! どうして愛してくれないの?」と、叫びたくてたまらなかった。
涙で目が痛む。何度も瞬きをして、止めようとする。もう終わったこと… 終わるべきことなのだ。彼は選択したんだから。
ダリウスの顎の筋肉はひどく強張っていた。ハンドルを握る指の関節が白い。彼は何も言わず、私を見ようともしない。
狭い車内は緊張感で満ちていた。二人とも、家に帰るまで一言も口をきかなかった。彼は猛スピードで運転していたから、あっという間だった。
***
あああああああ! ムカつく! すごくムカつく! 帰宅してからもう数時間が経つ。でも、私はまだ怒っていた。
今夜は絶対に、ダリウスとは寝ないと決めた。フレディ・クルーガーに八つ裂きにされる夢を見ていても知るものか。当然の報いだ。
寝室のドアも、バルコニーのドアも、窓にも全部鍵をかける。
私たちが一緒に寝ているなんて、よくもみんなに言えたものだ。説明しようとしても、事態は悪化するだけだった。必死に説明すればするほど、怪しく聞こえる。
「友達」と寝るための言い訳をでっちあげているようにしか聞こえない。だから、説明は諦めた。友達はみんな、私とダリウスが一緒に寝ていると思っている。
そりゃ、一緒には寝てるけど、そういう意味で寝てるわけじゃないんだってば!
私たちがただのセフレだという節すら、誰も信じないだろう。これじゃ、他の男と出会うチャンスが台無しだ。他の男にそんなに興味があるわけじゃないけど… それでも、これは全部ダリウスのせいだ。
今度は壊さないように気をつけながら、枕を殴る。物足りない。もういい、新たな決意もこれまでだ! あの決意はもう古い。サンダルに靴下を履くくらい古い… って、それは今、流行ってるのかな。
結局、決意は1週間も続かなかった。情けない。認めるのもつらかった。恥だ。
でも、これでまたダリウスの殺人計画を練ることができる。私にここまで暴力を必要とさせ、渇望させられるのはダリウスだけだ。
私はむすっとしたまま天井を見上げた。それから、ベッドサイドのデジタル時計を睨みつけた。
もうすぐ朝の3時。ということは、ダリウスをどう破滅させるか計画しているうちに2時間近く経っていたということだ。新鮮な空気が必要だった。でないと、何かを壊し始めそうだ。
バルコニーのドアを開けると、海からの潮風が吹き込んできた。新鮮な空気と潮の香り。浜に打ち寄せる波の音。今ではすっかり大好きになった海辺の生活。
次のステップに進む時は、こういうことが恋しくなるのだろう。
バルコニーに出ると、ダリウスの部屋のバルコニーのドアが大きく開いているのが見えた。そっとそちらの方に歩いて行って、彼の部屋の中を覗き込む。
ただの好奇心。それだけ。
寝込みを襲って殺そうなんて考えてない。ぐっすり寝てたら考えるけど。私が眠れないのは、全部ダリウスのせいなんだから。
つまり、彼が安らかに眠っていて、私だけが眠れずにバルコニーからこそ泥みたいに彼の部屋を覗いているなんて、フェアじゃない。
だから、彼が熟睡していたら、私には彼を殺す論理的で正当な理由があるわけだ。
部屋の中に動きはなかった。私は彼のバルコニーによじのぼり、ドアから首を突っ込んだ。一番奥の隅のフロアランプが点いていて、室内をぼんやりとしたあたたかな光で照らしている。
部屋は整然としていて、ベッドは完璧に整えられていた。まるで、まだ誰も寝ていないかのように。
私は手すりを乗り越えてパジャマのシャツを脱ぐと、バルコニーからプールに飛び込んだ。
***
今朝、一人で目覚めた私は、とても機嫌が悪かった。プールで何周か泳いだくらいでは、意味がなかったみたいだ。
おまけに、パジャマのシャツをなくしたのだ。朝の4時にパジャマのボトムス一枚でシャツを探し回るのも、気分を良くするのには役立たないことはよくわかった。
その後は、一晩中ベッドで何度も寝返りを打って過ごした。眠れなかった。彼が隣にいなかったからじゃない。絶対に違う。眠れなかったのは、まだ彼に腹を立てていたからだ。
朝食の席について、牛のマグカップに入った湯気の立つコーヒーをしかめ面で眺める。
ダリウス以外はみんなテーブルについていた。彼はどこ? しっかり服も着替えて、戦闘態勢でいるっていうのに。
朝食までには戻っていると思った。なのに、いない。ああ、まただ…。彼はさらに私を怒らせる。ああ、もう!
「今朝はご機嫌ね」と、ジェネシスがからかってきた。
「自分を取り戻したんだね」と、カスピアンが嬉しそうに言う。
「安心すべきか、怖がるべきか」と、コンスタンティン。
「たぶん、両方だな」と、ラザロ。
最高だ。私がこの場にいないかのように、私のことを話してくれるなんて。
「みんな、ほっといてあげてよ」と、セレナは言うけれど、声は笑っている。
「ところで、興味深いね、その… 君の首の、蚊に刺された跡」カスピアンが自分の首をさすりながら、さりげなく指摘した。みんなが、私の首に注目する。
「で、ダリウスはどこにいったのかな」と、カスピアンは続ける。
この、悪魔! 私はデニムジャケットの襟を立てながら、彼を睨みつけた。今朝、支度をしている時に、昨日の夜にダリウスにつけられたキスマークに気がついた。
30度もある日に髪をおろしてハイカラーのデニムジャケットを着ているのは、そのせいだ。
コンシーラーで隠したかったけれど、持っていないのだ。これまで、私の肌にはコンシーラーは必要なかったから。
ジェネシスとセレナも持っていないだろう。それに、私がコンシーラーを借りたいと言ったら、怪しまれただろうし。
でも、カスピアンのおかげで、みんなにすっかり私のプライベートがばれてしまった。カスピアンのいたずらっ子のような笑顔に、熱いコーヒーが入ったマグカップを投げつけてやりたくなる。
「いったい、どこで蚊に刺されたのかな?」カスピアンは、話題を変える気はないらしい。
サイアクだ。
ジェネシスがマグに鼻を突っ込んだまま吹き出し、あちこちにコーヒーをまき散らして、激しく咳き込んだ。
コンスタンティンとセレナはジェネシスの背中を叩き、エヴァは心配そうにそれを見つめる。カスピアンは頭をテーブルに伏せて、大きな肩を激しく揺らす。
もう、十分よ! 私は、テーブルの下で彼のすねを蹴ってやった。
***
結局、ダリウスは11時前に帰ってきた。私は部屋にこもって勉強している。
ううん、隠れてるわけじゃない。勉強が好きなだけ。すごく。
彼が部屋で動き回っている音が聞こえる。シャワーの音。彼が身支度をしている音。午後はエヴァと何か用事があるらしい。
盗み聞きしてたわけじゃないけど。
もう、ダリウスのことは考えない。考えない。考えない。
突然、寝室のドアが優しくノックされた。
ドアを開けると、そこにはめちゃくちゃセクシーな姿のダリウスが立っていた。後ろに流した淡いブロンドの髪は、シャワーを浴びたばかりで湿っている。ライトブルーのボタンアップシャツが、瞳によく合う。
私は、ただ彼を見上げることしかできなかった。彼は喉がカラカラで私を飲み干したいとでもいうように、私をじっと見つめている。
どうして、いつも、こんなふうに強い眼差しで私を見つめてくるのだろう。胸の奥で心臓が一瞬止まる。気が狂いそうだ。彼のせいで胃が締めつけられるのは、最も甘美な感覚だった。
彼が私を見つめている。それだけなのに、おかしくなるほどのスリルを感じた。中毒になりそう。だから、私は3年間も彼を追い続けたのだ。
彼の手の中にあるものを見て、私は恥ずかしさのあまり顔を覆いたくなった。
握られているのは、昨日の夜、姿を消した白いパジャマのシャツ。最悪だ。
彼の瞳が愉快そうにきらめき、問うように眉を上げる。
私の答えは、パジャマのシャツを彼の手からひったくり、目の前でばたんとドアを閉めることだった。
10分後、ダリウスがエヴァと一緒に家を出る音が聞こえた。ううん、耳を澄ませてなんかいない。
ダリウスのことは考えない。考えない。考えない。
もういい! 出かけよう。…どこかに。行き先は出てから考える。
***
カスピアンのエクリプス・スパイダーで20分ほどあてもなくドライブをした後、結局、キャンパスの中の小さな湖の前にある見慣れたベンチに腰を下ろした。私の湖だ。
土曜の午後は、学生も少ない。
今日も、いい天気だった。向こう側の岸の近くを、赤いカヤックに乗った2人組が通り過ぎる。いいな。いつかやってみよう。
20分くらい座っていただろうか。背後で足音が聞こえた。
あ、ヤミー・リップリング!
いつもながら、彼は私を見ても特に嬉しそうではなかった。でも、気にはならない。私は彼に会えて嬉しいのだから。
「何なの? ここに住んでるの?」と、私は聞いた。
「お前は?」と、彼が言い返す。まあ、そうだよね。
私が横にずれると、彼は隣に腰を下ろした。私たちはただ静かに座って湖を眺める。話す必要はなかった。ヤミー・リップリングは、どうでもいい世間話が嫌いなのだ。
私はまた、ダリウスのことを考え始める。必然的に。いつもそうだ。私とダリウス。私たちはめちゃくちゃだ。正直に言うなら、絶対にただの友達にはなれないことはわかっている。私たちの関係が何なのか、わからない。
ダリウスのことになると、私はすっかり混乱してしまう。今朝だってそうだ。最初は喧嘩をするつもりだったのに、いつの間にか部屋に引きこもって隠れていた。彼のおかげで、頭がおかしくなった気分だ。
私は3年間、彼と一緒になる可能性はあると自分に言い聞かせ続けた。彼の行動や言葉を一つ残らず分析した。
彼が私に向けた視線(数えきれないほど)をすべて解読しようとし、彼も私と同じ気持ちだと思い込んだ。
だって、誰かがあなたを鷹のように見つめ続けて目を離すことができなかったら、彼は自分を求めていると思うでしょう?
人でいっぱいの部屋の中を歩き回っていても、どこかに移動しても、あなたの居場所を正確に把握しているように見えたなら、彼は少なくとも自分に惹かれていると思うはず。
彼がいない間にロシアを訪れた時は、いつでも部下に私を監視させて安全をはかってくれた。特別な気持ちがあると思って当然だ。
誰かが少しでも私を傷つけかねない言葉をすれば、我慢できない様子を見せた。少しは私を気にかけていると思っても仕方ないはずだ。
昨日の夜も、一瞬、同じことをしそうになった。不必要な深読み。彼が嫉妬していると思い込むところだった。危なかった!
もう考えるのは十分だ。結論が出ないのに考え続けるのは嫌い。でも、残念ながら、そんなことばかりしている。
「ヤミー・リップリング?」
彼は眉を上げてこちらを見た。ちょっと苛立って見える。まるで、私が彼の重要な考え事を邪魔してしまったとでもいうように。
「ピアスはいくつ?」
「5つ」と、ベンチにもたれながらヤミー・リップリングは答える。
私は彼の顔をじっと見て、つけているピアスの数を数えた。両耳たぶのストレッチング、左眉のバーベル、唇のリップリング。4つしかないことに気づいて、私は口をあんぐり開けた。
5つ目は一体どこにあるんだろう?
「考えてるだろ」と、ヤミー・リップリングが言う。
私はにやっとして、「5つ目を見せて」と言った。
彼はまた眉を上げる。「どこかもわからないのに、見たいのか?」
「もちろん。いいでしょ?」私は興味津々だった。
ヤミー・リップリングは立ち上がり、ズボンの前のボタンを外してチャックを開け始める。
「ちょっと! 何してるの?」私はベンチから飛び上がった。
「ピアスを見せてるんだよ」彼は平然と言って、ズボンを脱いだ。
うわ、マジで? すごい!
「本当に見たい? 怖気付いたなら、言えよ」と、ヤミー・リップリングは挑戦的な態度で言った。
「どういう意味? 見せてよ!」と、私は叫んだ。最高だ。プリンスアルバートだろうか。
彼は肩をすくめてボクサーを下ろした。
わ、アパドラビアだ! ピカピカのバーベルがペニスの頭を前から後ろに向かって貫いている。すごい! うーん… 結構大きくて、悪くない。ピアスをした片目の蛇ってとこね。
うわっ、何、今の?
「満足か?」と、ズボンを履きながら、ヤミー・リップリング。
言いたいことは山ほどあったけれど、「あなたの伴侶になる人はラッキーね」とだけ言うことにした。
ヤミー・リップリングはにやりと笑った。やっとだ! 初めて笑顔を見た。
「俺は27歳だ。伴侶は見つからないかもな」彼は淡々と言う。
「見つかるよ」私は自信と確信をもって言った。「約束して。彼女を突き放したりしないで、大切にしてね。赤ちゃんをつくって、彼女と幸せに暮らすって」
彼の瞳が一瞬、きらめき、ふと柔らかくなった。それが何を意味しているのか理解するには、あまりに早く消えてしまった。
「そうだな、もし相手を見つけたらな」彼は信じていないような口ぶりで言った。「それを約束したら、お前も約束するか? もう二度と、一人でここには戻ってこないって」
「二度と戻ってこないって… この湖に?」私は戸惑って、たずねた。「どうして?」
「ここには近づかないと約束してくれ」
あまりに真剣な声で、少し怖くなった。
「お前の自衛本能はだいぶ低いって、気づいてるか?」彼は諌めるように首を振る。「もっと賢い女の子なら、こんな人気のない場所でパンツを下ろした見知らぬ男と二人きりになるのは怖がるはずだ」
「私を怖がらせようとしてるの? なんでここに来ちゃいけないっていうの?」 私が賢くないという彼のコメントは無視することにした。自分の愚かさはわかっている。うん… そこは特に目新しい情報じゃない。
「質問が多すぎる。好奇心は猫を殺すぜ...。時には、小さな女の子もな」言いながら、彼は立ち上がった。
どうして男って、こうも謎めいた言い回しが好きなの? ダリウスもだし、今度はヤミー・リップリングまで。「もう行くの? また会える?」
「また質問だ、お嬢ちゃん」彼は歩き去りながら言った。「約束、忘れるなよ」
「約束なんかしてない」私は小声で抗議する。
「ねえ、あなたの本当の名前は?」とっさに叫んだけれど、彼はすでに行ってしまった後だった。
***
リリーからメールが来た。今夜、ダニエルのフラタニティがまたパーティーを開くらしい。パーティーのテーマは書かていなかったけれど、どうでもよかった。
一人で行こう。ダリウスに楽しい時間を台無しにされるのはごめんだ。こっそり抜け出す。親に隠れて出かけようとしている小学生みたいな気分だ。悪いことをしてるような気がする。
私を思わずにっこりした。スリルを感じる。私は悪い子じゃないけれど、いい子でもない。私はただの私、ペルセポネ・アスペン・ルイス。
髪を緩く二重のお団子にして、後ろでフレンチブレイドにする。ローウエストのデニムショーツに幅広の赤いベルトを締め、クロップトップを着た。短いトップの下から、おへそを見せている。
さっき見せてもらったヤミー・リップリングのピアスを思い出しながら、へそピアスを開けることを真剣に考える。
クロップトップは、ベルトと同じ赤だ。いつもは赤は着ないのだけれど、今夜は過激なことをしたい気分だった。赤がぴったりだった。
足元はコンバース。窓から抜け出して、タクシーが待つ大通りのピザ屋まで歩くつもりだからだ。
私は、家の脇の窓から飛び下りた。下の柔らかい芝生に静かに着地する。万が一、誰かに聞かれた場合を考えて、しばらく身をかがめ、息をひそめる。
心臓の鼓動を落ち着かせようとする。ワクワクしていた。くすくすと笑い出したくなるのを抑える。ライカンの聴覚はものすごく鋭いのだ。ゲーム開始直後につかまるリスクは冒せない。
全員が大広間にいるのはわかっている。セレナがバイオリンを弾いているのだ。パガニーニの『カプリース第24番』がかすかに聞こえてくる。私は四つん這いになって大きな窓の前を通り過ぎた。
スパイか何かになった気分。最高!
やっとピザ屋にたどり着き、パーティーに向かうタクシーを見つけると、私は大きなため息をついて笑った。やった! ライカンだらけの家から抜け出したんだ! すごい! 私って最高! 超すごい!
クレイジーなハッピーダンスを踊る私を、タクシーの運転手がサイドミラー越しに心配そうに見ていることに気づいた。乗車拒否される前に、急いで飛び乗る。
パーティーの時間だ! やった! 今度こそ、ダリウスにまとわりつく女たちのことを気にせず、思い切り楽しむのだ。だって、私には、あのゴージャスなライカンに対して独占欲を感じる権利はないんだから。