
メイソン アルマーニを着た悪魔 2巻
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Zainab Sambo
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6
第4章
ローレン
その週は毎晩、新しい夢に悩まされた。
大概はミスター・キャンベルとのめちゃくちゃなセックスの夢で胸が破裂しそうだった。
その夢は、仕事中の集中力を高めてくれた。大変になればなる程、耐えられるようになる。
母や父が登場するトラウマになるような夢よりも、そういう夢のほうが好きだった。そういう夢は、父が亡くなり、母がキャッキャと笑うところで終わることが多かった。
今はただただ、何にも邪魔されずに眠ることだけを切望していた。
でも、それは望みすぎだったのかもしれない。
数日後、私は大失態を犯す。メイソン・キャンベルにランチを持っていくのが遅れたのだ。
馬鹿げたルールだわ。何て馬鹿なメイソン・キャンベル。
「どこに行っていたの?」エレベーターから出てきた私にジェイドが噛みつく。
私は彼女の横を通り過ぎながら「ミスター・キャンベルのオフィスでもう一度聞いてみたら? 彼のアシスタントがどこに行ったか聞いても、彼は平気だと思うわよ」
睨まれるだけだと分かっていた。
なので彼女の返事など待たずに私はゆっくりとドアをノックした。
「どうぞ」
私は足と手を震わせながら中に入った。「ランチです。時間通りです」私は作り笑いをした。彼は何も言わなかった。
私は勝手に動いたら叱られると思ったのでその場に立ち止まっていた。
何の反応もなく数分が過ぎた頃、ミスター・キャンベルが書類から顔を上げた。
「何を待っているんだ?」仕事をちゃんとしたというお褒めの言葉よ!
私は口を開けたり閉じたりして、言うべきことを探した。考えてみれば、私は一体何を言えばよかったのだろう?
「テーブルの上に置いて。もう行っていい」
私は言われた通りにして、そっとその場を後にした。
その日は一日中忙しかったが、上司のことが頭から離れなかった。るもう二度と上司と交わることはなかったし、ミスもしないぐらいに私も進歩していた。
トラブルに巻き込まれないよう最善を尽くしていたし、肝に銘じていれば、それはそんなに難しいことではなかった。
その夜、会社を出た後、近くのレストランでタイ料理を買った。
家に戻ると私はベッドに倒れ込んだ。ベッドに倒れ込むまで、自分がどれほど疲れているのか分からなかった。
この3日間、私はミスター・キャンベルの言ったことに従って仕事ができた。彼の私に対する無礼な言動がなくなったわけではない。単に彼が私を侮辱しなくなっただけであった。
それでも大きな前進だった。
彼は私が試用期間中であることを常に私にちらつかせていたが、彼は私に会うことに慣れてきていた。しかし私が一線を越えてしまえば、それで終わりなのだ。
彼は又、私を所有すること、今から「この」時が終わるまで、私は彼の支配下にあることを繰り返し強調した。
私は彼の私を見下すものの言い方にウンザリしていた。でも彼は正しかった。私には仕事が必要だった。絶対にこの仕事が必要だった。
父の容態が悪化するにつれて、彼は私から絶望的な匂いが漂ってくるのを感じていたに違いない。
アーロンとアテナに会うのも慣れてきたし、彼らと友達になれたのは私の大きな支えとなった。
ジェイドは私に言葉で嫌がらせをするのを止めなかったが、その都度彼女が受取るのはグルグルした丸い私の目だけだ。だから彼女も同じだけ自分の目を丸くしなくてはいけないだけだった。言葉で私と言い争うのを望んでいた彼女にはそれぐらいの返答が丁度いい。
私は大人だった。明らかに、彼女はその部分を見逃していた。
ミスター・キャンベルが私に命じたファイルの仕事は特に私をイライラさせた。
2日経った今も、アルファベット順にファイルを並べる中鳴り止まない電話に奮闘している。
私の隣で電話が鳴り、私はそれがクライアントからでもボスを尋ねている人からでもないことを知っていた。
ミスター・キャンベル本人だった。
「はい、どうされましたか?」私は丁寧に尋ねた。
「プリントアウトが必要な書類をメールで送った。今すぐそれをしてくれ」そう言って彼は電話を切った。
私は電話を睨みつけ、息を殺してつぶやいた。なんて奴。
そして目の前のファイルの山を見てうなった。
全てをプリントアウトした後、ライオンの巣のドアをノックする前に、見落としがないかを隈なく確認した。
「どうぞ、ハートさん」
私はドアを開け、そして閉める。
ミスター・キャンベルは私の予測と反して椅子には座っていなかった。その代わりに彼はソファに横たわり、両手と両足を前で組んでいた。
スーツのジャケットを着ておらず、白いシャツが彼に纏わりつき、彼の巨大な上腕二頭筋は今にもそのシャツを破ってしまいそうだった。
私は思わず息を飲み、彼の上腕二頭筋から目をそらす。
彼の上腕二頭筋のことは考えるな。
彼はあなたの上司よ 。
彼は嫌な奴。
最高のボディを持つ嫌な奴。
昨夜の夢がフラッシュバックする。
シャツを着ていないメイソン・キャンベル。
彼の汗ばんだ胴体が私の上にもたれかかり、私が彼の机の上で屈んでいる間、彼は私の体に擦り寄ってくる。
もう嫌!!
「どうして私だと分かったのですか?」彼の指が指し示したテーブルの上に書類を置いた後、私は自分が無意識に彼にに尋ねていることに気づいた。
ミスター・キャンベルは目を開けずにこう答えた。「君みたいに鬱陶しくドアをノックするのは他に誰もいないから」
それだけだった。最初から質問なんてするべきではないのだ。彼の口からは、質問してもいいことは何も出てこないのだ。私の空想は突然消え去った。
「ああ、ハートさん、今夜、最高級のレストランを予約しておいてくれ。午後7時だ。商談があるんだ」
彼の目が開いたが、その中に私はいなかった。「繰り返すが、最高級のレストランだ。君の人生では聞いたこともないレストランだろうから、分からないことがあったら何でも聞くがいい」
彼に見られることはないと知っていたから、私は自分の目を丸くした。
「承知しました。他には何かありますでしょうか?」
「君もそこにいてくれ」
私は口を開いた。「でも」
銀色の瞳が鋭く私の方を見て、そして私自身を見た。
「これは命令だ、ハートさん。断ることのできない命令だ」
私はそこで息が止まってしまったかもしれない。
「何か言いたいことはあるのですか、ハートさん? 何か他に用でもあるのですか?」
そう。私には大事な用があった。
しばらく会っていない父を見舞いに病院に行くつもりだった。父のことが心配で、どうしても夜な夜な魘される悪夢を落ち着かせたかった。
しかし、私は臆病者であり、反論を許さないその瞳の虜であるがために、私は首を横に振る。「予定などありません。必ず最高級のレストランを予約して私もそこにいます」
私は泣きたかった。あなたのくだらない商談よりも、私の父の方が大事だと言いたかった。
彼は目をそらし、また目を閉じた。
「部屋を出る時はそっとドアを閉めなさい。予定があったことを認めるにはあまりに臆病だったからって、気持ちをドアにぶつける必要はない。期待しているから」と彼は言い捨てた。
私は彼を引き裂いてしまいたかった。
私は拳を握りしめて机に戻った。私は心の底から傷ついていた。
涙がこぼれないように自分に言い聞かせた。理由は2つある。1つは、自分自身に強くなる方法を教えたかったから、そしてもう1つは、ジェイドが私をずっと見ていたからだ。
彼女の視線をいつも感じていた。
私は、彼女が喜んでみんなと共有するような、私を嘲笑いし、噂話をするための材料を彼女に与えるつもりなどなかった。
着るものがないことを思い出すまで、今夜何を着るべきかと思いつかなかった。
素敵な洋服など持っていなかったし、シーズンズ・レストランや上司の趣味に合うような上品なドレスなんて持っていなかった。
「ベス、もうどうすればいいのか分からないわ!」私は叫びながら、次々とドレスを引っ張り出し、ベッドに放り投げた。
「何を着ればいいの?」
「落ち着いて! きっと何か見つかるわ」
私は振り向いて彼女を睨みつけた。
「もう5分もそう言ってるのに、私のクローゼットを漁るのは3回目よ。それにどれも全て変なのばかりだわ」私はイライラして足でドレスを蹴った。
「私のせいではないわよ。ローリー、あなたが最後に買い物に行ったのは1年前よ」
「でも、私がお金を使わない理由は知ってるでしょ? 全部父の医療費に消えちゃうの。うー、どうしたらいいの!」私はうめきながらベッドに倒れ込む。
「ああ、いい考えがある!」彼女は突然叫び、私をベッドから立ち上がらせた。
「メルトに買い物に行こう」
「冗談でしょ? メルトでなんて買えないわよ。よくあるイヤリングもあそこで買えないのに、ドレスを買おうって言うの? あなた、どうかしてるわよ」
彼女は私の頭を叩いた。
「買えって意味じゃないよ。買ってから返品すればいいのよ。ただ、ミスター・キャンベルがタグを見て、あなたを侮辱する理由が増えないようにしなきゃいけないだけ」
私は彼が私が着ている洋服に付いているタグを見たときの表情を想像する。
「それでうまくいくと思う? 」
彼女はうなずく。
「そのアイデア、いいわね。本当にありがとう、ベス。気が変わらないうちに、すぐに行きましょう」
メルトの店から戻ると、ベスが私のメイクを引き受けてくれた。
彼女はやりすぎないようにと、よりナチュラルに仕上げてくれた。メイクが終わったとき、私は見違えるように変わっていた。
私は髪をおろすことにしたが、少しだけ巻いてみた。
6時55分丁度、私はシーズンズ・レストランに着いた。
しかし、中には入らずレストランの外でミスター・キャンベルを待った。
店に入って彼を待つこともできたのに、なぜそんなことをする必要があったのかは聞かないで欲しい。今夜は頭がうまく働かなかったの。
上司を置いて中に入るわけにはいかなかった。
7時5分過ぎ、黒いエスカレードが私の隣に停まった。運転手が降りて横切り、後部座席のドアを開けた。
磨き上げられた靴が1つ、そしてもう1つと私の目の前に現れた。それにしてもこんなにいい香りに包まれたのは生まれて初めてだった。
メイソン・キャンベルが車から降りてきた時の、私の気持ちは言葉でなんかは言い表せない程だ。
5分前に水を飲んだはずなのに、口の中はカラカラだ。どうしよう。
メイソン・キャンベルはゴージャスそのものだった。触れることができないからこそ、遠くから賞賛するような男性であり、彼を見る人の心臓を高鳴らせ、膝が脚から抜けて立っていられなくさせるような男性だった。
私はそういう感覚を体験をしていたのだろうか?
当たり前じゃない。
黒いアルマーニのスーツに身を包み、完璧に髭を剃り、髪を後ろに流したメイソンが、まるでギリシャ神話の神のように見えたのに、私がそう感じなかったわけがない。
男性モデルなんてメイソン・キャンベルの足元にも及ばない。
完璧な外見、お金、権力、人々からの敬愛だけでなく、彼にはミステリアスな何かがあった。思わず指を突っ込みたくなるような何かが彼にはある。
息を吸って
息を吐いて
「一体何って格好をしているんだ?」
そして私は、彼の完璧でふっくらとした赤い唇から漏れてきた言葉により、自分が酔いしれている幻想から引き戻された。彼は今完璧って言ったのかしら?
私は自分のドレスに目を落とし、まだそれを着ていることを確認した。なぜ彼は驚きと訝しさを同時に表現しなくてはならなかったのか分からない。
私はドレスの背中に手をやり、タグがきちんと隠れていることを確認した。
「もういいよ、気にしないで」
彼は車の方を見た。「プリンス」
プリンス?
小さな4本の足が車から飛び出し、何が起こったのか理解する前に、それは私に襲いかかり、私は悲鳴を上げた。
「プリンス、伏せろ。彼女は無害だ。何もしてはいけない」
その犬の飼い主は、犬が再び私の顔に襲いかかる前に引き戻した。私は胸に手を当て、自分の狂気的な心臓の鼓動の音に耳を傾けた。
ミスター・キャンベルの口元が少しゆがんだが、それも気のせいかもしれない。
私はようやく自分の声を見つけた。「あれは、、、犬?」
彼は目を丸くした。「よく出来ました」
「でも、犬や動物はお断りと書いてありますが? なぜ犬を連れて来たのでしょうか?」
彼は私の口調に眉をひそめた。
私は息を詰まらせた。「ミスター・キャンベル」
「そのために君は来たのです、ハートさん。私の犬を散歩させるためです。でも、もう少しカジュアルな服装をしてくるように言うべきでした」彼は私を頭からつま先まで見る。
私はスリットの入った黒いストラップレスのドレスを着て、ベスから借りたヒールを履いている。
「犬の散歩ですか?」私は信じられない思いで尋ねた。
彼は明らかに私を馬鹿にした口調で私に尋ね返した。「他に何をするつもりだったのですか? この仕事に夢中になるなと私は言ったはずだ、ハートさん」
彼はもう一度、私の体を上から下まで舐めるように見つめ、その視線は私の体の隅々まで注がれていた。そしてそれ以上は何も言わずに、彼は姿を消した。









































