Cover image for Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 2巻

Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 2巻

受け入れ

アリエル

ゼイヴィアのその言葉を聞いた瞬間、私の世界は真っ二つに割れた。
『俺の伴侶としても、俺はおまえを認めない』
その痛みは、ハンターが私にしたどんな仕打ちよりもずっとひどい。ウルフスベインの注射を一度に千本胸に打たれたように――ゼイヴィアが私の胸に手を伸ばし、大きく引き裂いたように感じた。
ゼイヴィアとの深いつながりを失っただけではない。
月の女神から与えられた私の運命のすべてが、突然、一瞬にして消えた。完璧な伴侶を得て、かわいい子狼を持ち、一緒に年をとる夢も――すべてが消えてしまった。
すべてを失った喪失感はあまりにひどく、私はただ丸くなってずっとそうしていたいと思った。
しかし、ゼイヴィアはそんな優しさを与えようともしない。
「戦士たちよ! 何を突っ立ってるんだ!」ゼイヴィアは叫んだ。「罪人を立たせろ。群れの境界まで連れていき、俺たちのルナを危険にさらすようなことをさせないようにしろ」
かつて仲間だった戦士たちはどうすべきかわからず、ためらいがちに周囲を見回した。要するにゼイヴィアは、戦士としての誓いと私との友情のどちらかを選べと言っているのだ。
「さっさとしろ!」ゼイヴィアが吠え、戦士たちはあたふたと動き出した。
ジェームズがそっと私を立たせてくれた。彼は申し訳なさそうに私を見る。このことが彼の心を苦しめているのがわかる。
「ありがとう」私は言って、弱々しく微笑んだ。「でも、自分でやるわ」
全身が燃えるように熱く、立っているのもやっとだったが、これ以上弱っているようには見せたくなかった。
どうにか1人で数歩歩いた。群れ全員の顔が私を見つめている。ある者はひどく残念そうに、ある者は悲しげに、ある者は激しい怒りを目に浮かべて。
でも、私を助けるためにできることは誰にも何もない。彼らもゼイヴィアに罰せられるかもしれないのだ。
私は今、本当に独りぼっちだ。女神にさえ見放されたように感じた。女神様は私のために定めた人生があると言っていたが、もしこれがそうなら、私はもうおしまいだ。
とにかくここから去りたい。このすべてから逃れて、1人で泣ける場所を見つけたい。
私はよろよろと歩いた。一歩一歩が苦しい。あとは、森と境界に続く、倉庫の裏にある道にたどり着くだけだ。
「待って!」背後から甲高い声が聞こえてきた。
振り向くと、驚いたことにエイミーが走って追いかけてきた。目に涙を浮かべ、濃いマスカラが頬を伝っている。彼女が私に抱きつき、私は危うく地面に倒れそうになった。
「エイミー……」私は用心して小声で言い、ゼイヴィアに目をやると彼は私たちを見ていた。「何してるの?」
「これ。大したものじゃないけど、私にできるのはこのくらいだから」エイミーは私にバックパックを手渡した。きっと食糧や必需品が詰まっているのだろう。
ありがたかったが、長くはもたないだろう。
「ゼイヴィアが怒り狂うよ……」私は声を抑えて言った。
「くそくらえ!」エイミーの声はとても大きかった。「あなたを追い出すなんて信じられない。戻ってきたばかりなのに」
「救いは、ナタリアをルナとしてここで暮らさずにすむってこと」私は少しでも気分を明るくしようとして言った。「そうなったら、ハンターに苦しめられたよりも、ひどい拷問になるかもしれないし」
エイミーはおもしろがらなかった。「アリエル、これは深刻なことなの! あなたははぐれ者になってしまうんだよ!」
「わかってる、考えないようにしてるの」私は答えた。胃がギュッと締めつけられる。「さようなら、エイミー」
エイミーは再び私に腕を回して、思い切りギュッと抱きしめた。これが親友と会う最後になるなんて信じられない。
「もう十分だ! さっさと歩け、罪人よ」ゼイヴィアが叫んだ。エイミーは後ずさりして、彼が背を向けた瞬間、舌を出して中指を立てた。
(ああ、エイミーとお別れなんてすごく寂しい)
私はまたこみ上げてくる涙をこらえながら、群れから離れて木々の間を抜け、大通りに向かって歩き出した。
ゼイヴィアとナタリアの足音が後ろから聞こえた。放っておいてくれたらいいのに。でも、ナタリアはこのショーを見逃すつもりはないのだろう。
私はコンクリートの道に出て、群れのテリトリーから出るまでの長い道のりに備えて気持ちを立て直した。そのとき、道路脇に防水カバーで覆われたものが目に入った。
その前にパパが立っている。
パパを見たとき、私の心臓が跳ねた。パパにお別れを言えることを、女神に感謝する。
パパは不安そうにゼイヴィアを見てから、私を見た。
「アリエル、今は目の前が暗く見えるだろう。だが、おまえにあげたいものがある。いずれにしろ、私よりおまえに必要だろう」パパは防水カバーを引っ張って地面に下ろした。
現れたものを見て、私は驚いて口を開けた。
パパのオートバイだ!
「パパ……パパのオートバイは受け取れないよ。私が子供の頃からずっと乗ってきたでしょ。パパの誇りと喜びじゃない!」私は驚きで息が止まりそうだった。
「いいや、かわいい戦士よ。おまえこそが私の誇りと喜びなんだ。それに、交渉の余地はない。このオートバイはもうおまえのものだ。それ以外にない」
私はパパに駆け寄り、涙で頬を濡らしながらパパを抱きしめた。「すごく寂しい」
「パパもだ、アリエル。だが、希望を捨ててはいけない。おまえはパパが知る誰よりも強い。乗り越えられる者がいるとしたら、それはおまえだ」
パパに会って、新たに力がみなぎった。オートバイに跨がり、バックパックをサドルバッグの中に入れる。
未知の世界へ走り出そうとする私の心臓はドキドキしていたが、少なくともさっきよりチャンスがある。
私はもう一度、戦士たちに目をやった。
「戦士たちよ! 気をつけ!」私がエンジンをかけて出発の準備をすると、ジェームズが叫んだ。「敬礼!」
ゼイヴィアが顔を怒らせたにもかかわらず、同じ分隊だった仲間全員が私に敬礼し、私はオートバイを道路に乗せた。
このことが私にとってどれほどの意味を持つのか考えて、胸が痛んだ。
涙をこらえる。今日はもう十分に泣いた。
「ありがとう、ジェームズ。ありがとう、みんな。寂しくなるよ」
「戦士になる夢を諦めるなよ、アリエル。君は俺が会ったなかで最高の戦士だ」ジェームズが言った。
「私には群れがないから、そのチャンスはあまりないよ」私は悲しい気持ちで言った。
「ああ……それについてちょっと言いたいことがあるかな」後ろで聞き覚えのある声がした。
振り返るとドムがいて、大きな笑みを浮かべている。彼の隣にはスティーヴが立っていた。
「ドム? スティーヴ? あなたたち、こんなところでいったい何をしてるの?」私は困惑して訊いた。
「もちろん、君を新しい故郷に連れて行くんだ」ドムはこの世で最も明らかなことのように言った。
「故郷?」
私の心臓が高鳴り始めた。
(どうかこれも残酷な冗談にしないで)
「そうだよ、君の新しい故郷、ロイヤル・パックだ」スティーヴがにこやかに言った。
ゼイヴィアが攻撃的な態度で2人に近づいた。「いったい何を言っている? 彼女は囚人だ! はぐれ者だ! 危険な犯罪者だ!」
「そうではないことを俺たちは知っている、ゼイヴィア」別の声が言った。
聞き覚えのある太く低い声だ。
ゼイヴィアは唸りながら声の主を探す。「俺はアルファだ! 恐れ知らずにも俺の正当な称号を無視するとは何者だ?」
陰から現れたその姿を見て、心臓が大きく跳ねた。
「おまえの王だ」アレックスが冷ややかに言った。
ゼイヴィアは一瞬唖然としたが、すぐに気を取り直した。
「おまえは運命の伴侶を拒絶し、今彼女を見捨てようとしているんだろう?」アレックスは続ける。「俺に言わせれば、おまえはアルファを称することを恥じるべきだ」
ゼイヴィアは唸った。拳を握りしめ、伸ばした鉤爪を隠す。
彼はアレックスと視線を交わした。
(ゼイヴィアはいったい何を考えてるの?)
彼は王の支配に挑もうとしている。その結末は1つしかない。
頭がクラクラする
これは現実なの?
アレックスは本当に私を迎えに来たの?
「下がれ、ゼイヴィア」アレックスは大きく唸った。「そしておまえの王に跪け」
ゼイヴィアは今にも激昂しそうだった。刹那、従うかのように視線を落とした。
しかしその直後、彼は飛びかかろうとした。私に。
Continue to the next chapter of Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 2巻