
Hated By My Mate 私の大事な人は私が嫌い 3巻
Author
Nathalie Hooker
Reads
🔥43.1M
Chapters
7
自分たちがパートナー同士であることを誰にも言わないようアルファ・ウルフギャングから口止めされたオーロラ。彼が何を考えているのか分からず、信頼するカラに彼のことを聞き、自分と彼が同じ辛い経験を共有していることを知る。そして彼はオーロラに部屋を用意するが、オーロラが期待した「パートナーとして」の扱いではなく、あくまで「彼の専属メイド」の立場のままであることにショックを受ける。
第8章
オーロラ
アルファ・ウルフギャングは、氷のように冷たい目で私を睨みつけた。とうとう私を拒絶するつもりなのだ。
今度ばかりは躊躇しないだろう。
私は頭を下げ、涙がこぼれないように目を閉じて待った。
まだ拒絶するつもりはない。
困惑して彼を見た。今、何て?
もっと良い案がある。ただし、俺たちがパートナーであることは村の誰にも言うな。前にも言ったとおりだが、もし言おうものなら否定する。それだけじゃなく、話した相手とお前をならず者としてマークする。
私はただ呆然と彼を見つめるしかなかった。この悪い冗談には何か痛烈なオチがあるに違いない。そんな淡い期待は沈黙に打ち砕かれた。
彼はしばらく私を見つめていたが、その目に何か感情が浮かんだような気がした。
混乱?
後悔?
私が見極める前に、彼は背を向けた。
家に帰れ。君のようなただのオメガ狼が一人でほっつき回るような時間じゃない。そう言い残すと、彼は茂みの中に消えていった。私は動揺し、傷ついたままだった。
——彼は私に何をするつもりだったのだろう?
***
オーロラ
言われたとおり家に帰ったが、私は完全に負けた気分だった。疲労が体を蝕んでいるのも感じた。
おそらく2日間まともな食事もとらずに初めて変身したせいだろう。
考えてみれば、私は2日間ずっとパートナーとかいうやつのせいで泣いて過ごしていたのだ。
玄関を開けると、誰かに抱きしめられた。モンタナだった。
「どこにいたの? 起きて様子を見に行ったら、部屋にいなくて心配したわ!」と彼女は叫んだ。「エマの家にも電話したのよ」
「ごめんなさい。私...…私の狼が走りたがってて」
「あなたの狼? ローリー、ついに会えたの?」彼女は歓喜の声を上げた。「彼女の名前は? どんな子? 近々一緒に散歩できる?」
嵐のように質問が降ってきたが、答える体力もなかった。
「質問に答えるのは明日にさせて。今は横になりたい」
「もちろんよ。初めての変身は大変だもの、疲れたでしょう? 一緒にベッドまで行きましょう」
モンタナは寝室まで、肩に手を貸してくれた。
モンタナにお礼を言い、暗闇で体を休めることにした。
***
今日の夜見つけた美しい空き地に座っていた。
今度は人間の姿で。
そこは平和で穏やかだった。太陽が湖を照らし、きらきらと輝いていた。周囲に生い茂る草は夏風に揺れていた。
突然、暗い雲が空を覆い、辺りは暗い雰囲気に包まれた。
不穏な波が湖を濁らせ、かつては穏やかだった水面は乱れ、夏の甘い風はビュービューと音を立てる強風に変わった。
緑の草は色あせて乾き、私の周りには乾燥してひび割れた土の一帯だけが残った。
そのとき、枯れ葉のバサバサという音や、枝が折れる音がした。
恐る恐る周囲を見回し、レアを呼んでみたけれど返事はなかった。
まだ枯れ葉が残っている茂みの中から、青い目をギラつかせた巨大な黒狼が現れた。牙をむき出し、私に向かってうなり声を上げた。
狼はどんどん近づいてきて、ついに私に襲いかかった。鋭い牙が私の首に深く食い込んだ。
——目を覚ますと、モンタナが私を優しく撫でていた。
私は恐怖で汗をかき、喘いでいたようだった。
ただの悪夢よ。
「どうしたの? たしかに一緒に走りに行く約束はしたけど、ちょっと早すぎない?」私は不機嫌になった。
私はベッドに座り、ナイトテーブルの目覚まし時計を見た。モンタナの方を振り返ると、険しい表情をしている。すぐに何かおかしいと思った。
「どうしたの?」
「ローリー......下にお客さんが見えているの」その声からは恐怖と悲しみを感じ取れた。
「誰が——?」私の質問はモンタナに遮られた。
「とにかく急いで身だしなみを整えなさい」と言いながらモンタナは立ち上がった。私は完全に混乱していた。
もしかして、またアルファが私に何かしに来たのだろうか?
予想はあながち間違っていなかった。
リビングに座って私を待っていたのは、リーダーのメイド長だった。
モンタナと二人で、神妙な面持ちでひそひそと話している。
私はどうすればいいの?
「カラさん?」私は声をかけてみた。
カラさんは優しい微笑みを浮かべて私を抱きしめた。「また会えてうれしいわ」
「何があったの?」
「私と一緒にリーダーの家に来て。アルファの命令よ」
嫌な予感がして、心臓がバクバクした。昨夜の彼の言葉を思い出した。
もっと良い案がある。
モンタナの心配そうな表情が、私を余計に不安にさせた。
「私、何かしましたか?」
「私もわからないんだけど……でもアルファの機嫌はあまりよくなさそうだったわ」
今に始まったことじゃない。機嫌の良いウルフギャングなんて見たことないし。
モンタナは私の肩に手を置いた。「大丈夫。きっと何でもないことよ」
私はうなずいたが、あまり自信はなかった。
やっぱり私たちとパートナーになりたいのかもよ。レアの声がした。
そうかもね。私は皮肉っぽく答えた。
カラさんが玄関のドアを開けてくれた。素早く深呼吸して、彼女に続いて家を出た。
リーダーの家までの道のりは長く、曲がりくねっていた。アラスカの冷たい風が背筋を震わせた。
「どうしてアルファはあんなに意地悪なの?」急にそんな言葉が口をついた。
カラさんは驚いて私を見た。自分でも何でそんな質問をしたのか分からなかった。
「どういう意味?」
「いや、ただ......」カラさんにパートナーのことは話せなかった。誤魔化さなければ。「彼に全然好かれてないみたいで」
この話は適当に受け流してほしかったが、カラさんは丁寧に答えてくれた。
「彼も色々責任があるのよ。まだ若いうちからアルファを任されて、すごく重荷だったと思うわ」
私はうなずきながら、真剣に耳を傾けた。元アルファが戦死した後、その権力と責任は即座にウルフギャングのものになった。
「アルファは一族を維持するだけでなく、ならず者から私たちを守り、他の一族との関係も良好に築かないといけない。弱いところは見せられないわ」カラさんはため息をつき、私の方を向いた。
「彼が一生懸命働いているのを見ると、辛くなるの。彼は冷たく見られたり、意地悪に見られたりするけど、いつも一族のことを考えて努力しているのよ」
アルファの屋敷が見えてきた。早朝の光に照らされていた。
王族は贅沢な暮らししかしていないと思っていた。でも、そうでないことは明らかだった。
父はならず者たちとの戦いで亡くなり、その苦しみはひどいものだった。
けれどアルファ・ウルフギャングも同じ悲しみを抱えながら、一族のことも考えなければならなかったのだ。
カラさんはドアを開け放ち、屋敷の上階へと続く大階段の下まで案内してくれた。
「彼は上で待ってるわ」と彼女は言った。
心臓がドキドキしながら、私は一歩ずつ無理やり前に出して階段を上った。この階段を上がれるのは、リーダーとその家族だけだった。
どういうことか分かるでしょ?レアが囁く。
信じられなかった。アルファは考えを変えたのだろうか?
内心、希望が芽生えた。
夢中で考え事をしていた私は、彼にぶつかるまでアルファ・ウルフギャングに気づかなかった。
「す、すみません」
彼は私を見下ろした。その表情からは何も読み取れなかった。
「ついてこい」命令すると、彼は廊下を歩き始めた。
ドキドキしながらその後に続く。
連れてこられたのはマホガニーの大きなドアだった。彼がドアを開けると、中はパステルカラーの白い部屋だった。
「ここが君の部屋になる」と彼は言った。
心臓の音がうるさかった。これは現実なのだ。
彼は廊下の先にある大きな木製のドアを指差した。
「あそこが俺の部屋だ。覚えておいてくれ……どうした?」
私の顔があまりに混乱していたのだろう。
「私たち......」私の顔は赤くなった。「同じ部屋じゃないんですか?」
アルファは顔をしかめ、それから表情を暗くした。彼の目は危険な黒色に光った。
私の心の中でレアが呻いた。
「誤解があるようだ、クレイトンさん」彼は一歩近づき、私を見下ろした。「パートナーとして認めたわけじゃない」
平手打ちされたかのような衝撃だった。
「それならなぜ私はここに...…」
「今日はとりあえずこの屋敷に慣れてくれ」彼は私の言葉を遮った。「君の仕事は明日からだ。俺は朝6時きっかりにコーヒーを飲む。服は7時までに用意し、朝食は8時半までに私の部屋まで運ぶように」
「はい?」
「俺に常に見られていると思え。君は私の専属メイドだ」
この日から、私の世界は一変した。




