
ギデオン 人狼のハーフですがライカンと運命の恋人です 4巻
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Nicole Riddley
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3
この巻は「ギデオン 人狼のハーフですがライカンと運命の恋人です 3巻」からの続きです。
閉じ込められる
レイラ
「ギデオン」と、思わず口にしてしまう。
手も足も震えている。トレイに載せたグラスやボトルがカタカタと音を立て、その後床に落ちる。
周りが見なくなり、彼の力強く妖しげな姿に、薄暗い照明とカラフルなストロボライトの中で釘付けになっている。
黒いスーツとネクタイは、雪のように白いシャツと対照的だ。
彼の炎のような瞳が、私の髪の光沢のあるウェーブから、露出の多い服をまとった体、そしてハイヒールの先まで、全身をなぞっている。彼の鋭い顎が固く締まる。
飢えと怒りが、彼の冷たく美しい顔に交じり合って渦巻いている。
彼は危険と脅威を漂わせているが、私は突如として生き返ったようだ。今日の午後以来、初めて息ができるように感じる。
彼の存在は私の血液を沸騰させ、血管に温もりを運び、彼がいないとどれほど寒く感じるかを私に気づかせる。
彼を近くに感じるのは素晴らしいことだけど、同時に私がトラブルに巻き込まれていることも自覚する。
背の高い体が、優美なステップで私に近づいてくる。私の胃はフワフワし始めるが、後退するつもりはない。
私の鼓動は戦鼓のように鳴り響き、彼に立ち向かう勇気を湧き立たせる。
彼のつま先が私のつま先に触れそうになる瞬間、彼は立ち止まる。ジャケットを脱ぎ、「体を隠して、ここから出て行け」と歯を食いしばって言う。
彼のジャケットが突然私を包み込んだ。太ももを隠すほどの長さだ。
彼の男性らしい匂いに包まれ、変態じみた男たちに体が見られないのは嬉しいが、同時に怒りも湧いてくる。
サラ、ママ・ウィン、そしてダンサーたちまで、周りの全員が私を見つめていることに気付いた。また仕事を失うのは確実だ・・・
1日に2つも仕事を失うなんて!
そもそも、私が仕事をなくす原因を作ったのはギデオンなのに、こんなことするなんて。
まだあの女と付き合ってるし、私の電話にも出ないくせに。
そう、彼の全ての罪状はリストアップしてある!
私は顎を上げ、とうとう口にした。「いやよ」
彼が目を細めると、私はますます怒りに身を委ね、思わず言う。「どこにも行かないわ。これから、この紳士たちと踊るのよ」
何言ってるの? 違う。どうしてそんなこと言っちゃったの?
彼の瞳が黒くなり、自分の中のライカンに取り込まれつつあることが見て取れる。彼は、今まで引いてきた線を越える寸前にいる。
突然、4人の男の中の1人が、私に視線を向けながら話しを遮りる。「おい、お前、俺が先に誘ったんだぞ!彼女は俺たちとプライベートダンスをするんだ。 別の女を探せよ!」
喉から低く、威圧的な唸り声がこみ上げる。目の前に立つ危険なライカンは、冷たくて黒い瞳をその男に向ける。
女は自己中心的に生きるしかないの。私はどこの誰だか分からない人を救ってあげることはできないわ。だから、ギデオンがそこのバカな男たちに気を取られている間に、私は速攻で逃げることにした。
大きな音が聞こえた。ガラスが割れる鋭い音と、背後からの叫び声が響いているけれど、振り返って確認する余裕はない。
それどころか、ますます速く走る。
安らかにね、変態さんたち
『臆病者』と言う人もいるかもしれないけど、私はこれを『自己防衛』と呼ぶわ。
狭い廊下に到達し、更衣室と裏口へ続く入口に辿り着いたとき、後ろから2本の力強い腕につかまれた。
そして、引き締まった体に押し付けられる。
「逃げようとすれば、捕まえる。戦おうとすれば、征服するのを楽しむ。俺は君を独占し、犯し、貪る。俺の中のライカンが、君を求めて外に出ようと爪を立てている。逆らってみてごらん」
どうすればいいの!? 彼の言葉に胃は締めつけられ、胸の鼓動は急速に上下するが、それでも私はもがいてみる。
彼の腕が私を締めつけ、低い唸り声が彼の胸に響いているのを感じる。それは恐ろしく、彼に顔を向けるのを躊躇させる。
輝く黒い瞳が私を見つめ、私を捉えている。ライカンが姿を現したのだ。
低く、野性的な声で彼は言う。「この体は俺のものだ。見るものも触れるものも、すべて俺のものだ。他の誰もおまえをこんな風に見てはならない。もし人間たちの命を守りたいなら、今すぐ俺について来い」
彼の残酷で無慈悲な言葉が私の芯を締めつける。私の匂いを嗅ぎ、興奮で彼の鼻が広がる。彼は私の腰をしっかりと握り、一瞬で私を彼の肩に担ぎ上げた。
大柄な警備員たちが、小刻みな足取りで徐々に近づいてくる。少し躊躇しながらも、さらに進むことはなかい。見かけは立派でも、実力は半端なのね。
私は無理やり引きずり出され、用意されていた車に押し込まれる。それは今日ヘレンが使ったのと同じ黒いベントレーだ。
運転手が車に乗り込み、ミラー越しに私の目を捉えたが、すぐに視線を逸らした。
私はギデオンからできるだけ遠ざかるように、這いつくばりながら反対側の窓際に座る。しかし、彼が車に乗り込むと同時に、私の腰を掴み、革のシートの上で私を引っ張り上げて軽々と自分の膝に座らせた。
彼の腕が私をしっかりと包み込んでいる。
本当に独占欲が強く支配的なライカンだわ! 私はギデオンに対抗心をむき出しにし、自分がただ流されるだけではないことを証明しようと決意する。他人に振り回されるのはもう十分だわ。
私も少しは変わったのよ!
彼の腕の中がこんなにも気持ちよくなければいいのに。今日の午後以降で、初めて安心感を覚えている。まるで家にいるみたいな気分だ。彼は私をどこへ連れて行くのかしら?
今朝のヘレンとの出会いから怒鳴られてクビにされるまで、今日起こった一連の出来事と感情の浮き沈みを思い出す。
その後も、ストリップクラブでほとんど何も着ていない状態で見知らぬ男たちにジロジロ見られたり、ギデオンから逃げたり、精神的にも感情的にも疲れ果てた。本当に、疲れたわ。
車窓の外の景色がぼんやりと過ぎていくのを眺めながら、彼の腕の中で溶けていく感覚に、まぶたが重たくなる。
「うーん、とても良い匂いがするわ」と、私は彼の肩のくぼみに顔を埋めながらつぶやいた。
彼に抱きつき、その温かさと安心感にしがみつく。目を閉じると同時に、額に彼の唇を感じる。
***
暗闇が広がる。何度か瞬きして、携帯電話を手に取る。ナイトスタンドはどこ?
広いベッドは果てしなく続いているかのように感じられる。魅惑的な香りと、シルクのような素材が指先に心地よく触れる。
何が起こったの?
私は息をのみながら身を起こし、周囲を見回す。広々とした寝室に、ただ1人。唯一の光は、壁一面を占める大きなガラス窓を通り抜けて流れ込む街の明かりだ。
自動ブラインドは横幅いっぱいに開かれたままだ。ここは私の部屋ではない。
私はギデオンのベッドの上にいる。
先ほどの出来事が脳裏によみがえり、シルクの掛布団をめくると、先ほどまで身に着けていたコルセットと短いスカートが消えていた。
私は彼のシャツと黒いレースのパンティーを身にまとっている。ブラジャーはない。まあ、元々ブラジャーはつけていなかったけど。
まさか! 彼が私を着替えさせたの?
私の顔は熱くなり、枕に顔を押し付け、抑えられないうめき声を上げながら、布団を頭からかぶった。
いや、そんなことはあり得ない。自分のベッドで目を覚ますまで、ここに隠れていよう。もうすぐ目が覚めるはず。そう、今にでも。
横たわって1分も経たないうちに、私の心はさまよい始める。
ギデオンはどこ? あの恐ろしい女、ヘレンはどこにいるの?あの人たち、今一緒にいるの?
今、私はまた腹を立てている。一緒にいることを想像するとムカムカする。私の想像力が暴走している。
私は本当にイラついている。私は・・・ううう! 彼らが一緒にいるのを見たら暴れ出しそうだ。私にとってあまり良い結末にはならないだろうけど。
降参だわ!
隠れていても無駄だわ。耳を澄ませてみるが、ひどく静かだ。
お洒落なナイトスタンドのデジタル時計は、もうすぐ深夜になることを示している。
つまり3時間近く眠っていたことになる。
布団を持ち上げ、そっと素足を床に踏み出す。専用のバスルームと巨大なウォークインクローゼットを確認する。ギデオンも、私の服や靴の気配もどこにもない。寝室のドアをゆっくり確認すると、ノブが手の中で簡単に回る。
そうだ! 彼やヘレンに出くわさずに逃げることができるかもしれない。
音を立てないように努めながら、つま先立ちで外に向かい、広々とした木製の階段を慎重に下りる。
下の階に到達し、玄関ホールの冷たい石の床を歩く。もう少しで出口だ。
磨かれた金のドアハンドルにゆっくりと手を伸ばす。
「どこに行くんだ?」
きゃっ!
彼はただそこに立って、手をポケットに突っ込み私を凝視している。
「何をしてるんだ?」私は胸を押さえながら彼に怒鳴った。
「心臓が飛び出しそうになったじゃない。死にかけたわ!」 彼をにらみつける。
どうにかなりそう!
目眩がしてきた。
彼との距離は3メートルほどだ。彼の背後には暖炉があり、エントランスホールとオープンコンセプトのリビングエリアを仕切っている。
ネクタイを緩めたシャープな白いシャツを着ている。上の3つのボタンは留められてなくて、袖をまくり上げて印象的な腕を見せている。
彼のハンサムな顔に楽しげな笑みが浮かび、一瞬で消えてしまう。
ああ、そうだった
彼の冷たくて読み取れない表情を見て、私は逃げ出さなければならないことを思い出した。
ドアノブを掴んで引いてみるが、何も起こらない。施錠されている! もっと早く気づくべきだった。再び彼をにらみつける。
「今すぐに。ドアを開けて」と私は要求する。「お願い」と付け加える・・・礼儀正しく振る舞ってみることに意味があるかもしれないから。
「急いでどこに行こうとしてるんだ?」彼が尋ねる。私が黙っていると、彼は首をかしげる。この質問にはどんな罠があるのだろう?彼は落ち着き払いすぎているように見える。
彼は私の体に視線を落とし、「素足で・・・しかも、そんな格好で外に出るつもりかい?」と言った。
私は自分を見下ろした。ああ・・・そこまで考えていなかった。彼の不思議な黄金色の瞳が再び私の素足を上下になぞるのを感じながら、顔を上げる。
彼の顔に広がる、強烈な欲望の表情に、私のひざはガクガクと震えた。心臓の鼓動をなだめつつ、こう言った。「じゃあ、あなたのスウェットパンツでも借りて、私の靴を返してもらえれば、すぐに出ていくわ」
彼は首を横に振った。唇の端に独りよがりな微笑みを浮かべながら、燃えるような目で私の体をじっと見つめ続ける。「そう簡単にはいかないよ、俺の可愛い人。どこにも行かせない」