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The Millennium Wolves ミレニアム・ウルフ アルファの野望6

アルファの誓い

森の空き地の真ん中で彼女の上に横たわっていると、シエナはどう答えたらいいのか分からない様子だった。とてもシンプルな質問のように思えたが、実際はこれ以上ないほど複雑だった。
彼女は言葉で表現することができなかったため、代わりに行動で答えようとした。
俺の髪を掴んではグッと引っ張り、顔を近づけてきたのだ。
もしや狼が乗り移ったのではないかと思うほど、彼女は飢えと欲望に満ちたキスをした。
俺はすかさずシエナの脚を持ち上げ、ペニスを彼女の局部に押し当てる。
ただ彼女の中に入り、ひとつになりたかった。俺を迎え入れるように、ゆっくりと裂け始めるシエナの入り口。
まるで、快楽の境地にいるような喘ぎ声を彼女はあげた。
そのとき、シエナは俺の背中に爪を立てた。「エイデン、待って...」
「やめてほしいか?」彼女の髪をそっと撫でながら俺は聞いた。
「その...私...うん。でも、自分でも分からないの」彼女はそう言い淀み、何かと葛藤しているようだった。「ここが...その...何と言うか...」
「理想の場所じゃない」口ごもるシエナに、俺が代わりに答えてあげた。
猛烈な欲情を感じていたものの、俺はシエナが何を求めているかを理解できるようになった。
「シエナの言う通りさ。君にとっての初めてだからね。君と同じくらい、俺も特別なものにしたいよ」俺がシエナの体から離れると、彼女は不安そうな顔をした。
「また焦らしちゃって、私のこと嫌いになった?」
「そんなことないさ」「君はすでに俺をここまで待たせたんだ。もう少しぐらい待てるさ。それにシエナだから、いくらでも待つ価値がある」
そう言って、俺たちは苔むした森の上でキスを交わし、シエナは俺の手を引いて微笑みかけた。
「婚姻の儀式を終えたら、約束するわ...私はあなたのものよ」
「一生忘れられない夜にすると約束するよ」俺はそう言って、そっと唸り声をあげ、シエナを腕の中に包み込んだ。
パートナーに真実を伝え、これでようやく、心のわだかまりが解消された気分だった。
ついに想いが実をむすび、シエナは自分の意思で、俺を選んでくれた。
君と過ごすこれからの時間が、待ちきれないよ。
2週間後
俺は大広間の舞台に立ち、親しい友人や家族が俺たちの結婚を祝うために集まってくる中、最愛のパートナーを待っていた。
この空間はまるで神秘的な森のようで、木々が生い茂り、妖精の光がキラキラと輝いていた。シエナは森をモチーフとした会場をセットすることで、俺たちが生涯のパートナーであることを初めて知った場所を再現したかったのだ。
シエナの登場を待ちわびながら、今か今かと扉の方を見ている参列者を見渡してみた。
彼女のお母さんは、シエナが会場に足を踏み入れる前から、嬉し涙をこらえるのに必死のようだ。ジェレミーとセレーネは彼女の隣に座り、誇らしげに微笑んでいた。
ジョセリンが1人で座っているのを見つけたが、彼女は相変わらず堂々と気品があった。
ジョシュとミシェルは彼女の2列ほど前にいた。
ジョシュの裏での行動を知った後、俺はあいつの招待を取り消すことも考えたが、シエナが俺を説得した。正直、まだあいつには腹を立てていたが、後で招待しなかったことを後悔するのは嫌だった。
だが、ジョシュの裏切りによって、思わぬ幸運に見舞われたことも確かだ。ステージ上で俺の隣に立っていたのは、ミレニアムアルファ、ラファエル・フェルナンデスだった。
彼が自ら司式者を務めてくれるのは大変光栄なことで、これまでのお互いの行き違いを取り戻そうとしてくれているような気がした。
俺の両親は姿を見せる素振りもなかったが、そんなことはどうでもよかった。この世界のリーダーともいえる、彼がいてくれたからだ。
だが、兄さんがこの場にいてくれたら...と願わずにはいられなかった。何たって、問題ばかり起こしていたあの弟が、ついに最愛のパートナーを見つけたのだから。
きっと、俺のことを誇りに思ってくれているに違いない。
音楽が鳴り始め、大広間の大きな扉が音を立てて開いた。シエナはステージに続く白いカーペットに足を踏み入れ、お父さんと腕を組んで登場した。
なんてこったシエナ...。その姿は、女神そのものだった。
さっきこっそりとシエナを覗き見したが、彼女がバージンロードを歩いてこちらに向かってくるのを見るのは、全く別の感覚だった。この世界で、俺よりも幸せなアルファなどいやしない。
2人が壇上に着くと、マーサーさんは愛娘の頬にそっとキスをし、それから俺の手を握った。固い握手だったが、それは温かいものでもあった。何とも誇らしい表情をしている。
俺はシエナをステージ上に乗せ、耳元でささやいた。
「君を食べてしまいたい」
たちまち、彼女の頬は真っ赤に染まった。俺たちは向かい合って立ち、互いを見つめ合い、ラファエルがセレモニーを始めた。
「私たちは今日、イーストコーストのアルファ、エイデン・ノーウッドとシエナ・マーサーの婚姻を祝うため、ここに集いました」「この世界において、愛するパートナーとの絆ほど神聖なものはありません」
シエナに微笑みかけると、彼女も俺に微笑み返した。幸せとはこういうことなんだろう。
「人間として、狼として、あなたたち2人はすでに繋がっていますが、それを今日、群れのもの達と愛する人たちの面前で、誓いを捧げることとなります」
「あなたたちの絆は群れを強くし、パートナーとして対等な関係を築き、アルファが背負うすべての責任を分かち合うことになります」
ラファエルは突然俺にウィンクし、堅苦しい口調を捨てた。「さあ、前置きもここまでにして、誓いの言葉を述べよう。まだ月夜のシーズンだからな」
会場は柔らかな笑いに包まれ、俺はシエナの方を向いて彼女の手を取った。
「もし良ければ、私から行くわね」俺は微笑みながらうなずいた。
シエナは明らかに緊張しているにもかかわらず、勇気を出して大きな声で話し始めた。
「エイデン。アルファであるあなたと、今日ここに立っているのが今でも信じられないわ。あなたに出会うまでは、誰かに心を開き、自分を捧げるのが...怖くてたまらなかった」
震える彼女を落ち着かせようと、俺は彼女の手を強く握り、自分もここにいると目で伝えた。
「それでも、あなたはとても辛抱強く、私が本当に心の準備ができているかどうか確かめてから、パートナーだと告白してくれた」「私を信じて待ってくれたあなたには、感謝してもしきれないわ」
シエナは落ち着きを取り戻し、彼女らしく力強い声になってきた。「あなたと恋に落ちるチャンスをくれたこと。私に選択肢を与えてくれたこと。それは、あなたが私にくれた最高の贈り物よ」
もう心臓が破裂しそうなほど、俺はシエナの言葉に心を打たれた。
彼女の誓いの言葉に感動するあまり、この後に自分がどう続ければいいのか分からなくなった。
ラファエルは俺の方を向いて言った。「さあエイデン、君の番だ」
くっそぉ...こういうのは苦手なんだよ俺は。
シエナへの想いを言葉にできず、1度深呼吸してみた。
「シエナ...君と出会うまでは...」みんなの視線を感じ、俺は口ごもった。
『心に想ったことを、話せばいいんだ』頭の中で誰かがそうささやいた。兄さんのような声だった。
すると、自分ならできると自信が湧いてきて、俺は言葉を紡ぎはじめた。「君と出会うまでは、俺は途方に暮れていた。自分が誰なのか分からなかったし、誰かを愛することも知らなかった。俺にとっては、考えたこともない概念だったんだ」
彼女を見つめ続けていると、シエナの目がパッと見開いた。
「でもあの日、あの川岸で君を見て、この命果てるまで君を愛すると心に決めた。死をも乗り超えて愛し続けると。君は僕の人生に目的を与えてくれたんだ、シエナ」
彼女は涙をこらえながら、その青い瞳を輝かせた。
「僕に歯向かおうとする君が大好きだ。君の熱い性格も大好きだ。愛しているよ」
「僕が辛抱強く待ってくれたと君は言ったが、シエナ、君のためなら僕は、どんなに長くても君を待ち続けていたよ」そう言ってシエナの手を離し、今度は彼女の頬に手のひらを当て、自分に引き寄せた。
「君がいるから僕は強くなれる、より良い人になれる。君がいてくれるから、僕はアルファとしてどうあるべきかが分かるんだ。それは、君が僕にくれた贈り物だ」
俺は身を乗り出し、全ての想いを胸に彼女にキスをしたくてたまらなかった。
「くそっ」ラファエルは、自分ももう我慢できないとばかりに首を横に振った。「お前たち2人が爆発する前に、バシッと決めようじゃないか。ふぅ〜やっぱり愛ってのはいいなぁ」
そして彼は俺たちを間に挟んで、手をあげた。「今ここに祝福されし、不滅の愛。2人の未来永劫の絆に、幸多からんことを」
すると、みんな一斉に立ち上がってはどっと歓声を上げ、何百本ものバラがステージに舞い上がった。この世界における、婚姻の儀式の伝統だ。
「分かった、分かった」とミレニアムアルファが会場をなだめ、笑いながら「では、待ちに待った時間といこうか」
会場は一気に静まり返り、宙を舞うバラの花もなくなった。「アルファ、エイデン・ノーウッド、誓いのキスを」
2度も言わなくていいさ。拍手と歓声が消えて静まり返るのを感じつつ、俺はシエナへの愛を込めて、彼女に唇を重ねた。
お互いのエネルギーが心地よいハーモニーを奏でつつ調和するのを感じた。この絆は、俺を愛で満たし、生きる希望を与え、まるで大空を飛んでいるような気分だった。
時間をかけてキスを堪能すると、俺は彼女の手を取り、ステージ下にエスコートした。そして両サイドから溢れんばかりの歓声に包まれつつ、披露宴会場へと向かった。
俺たちがファーストダンスに選んだ曲をDJがかけると、荘厳な儀式は一変し、お祭りムードとなった。
新婚カップルとして、俺たちは幸せと笑いに包まれながらダンスを楽しんだ。俺がシエナをクルクル回しながら踊り、2人で大笑いしていたため、周りの人にはおかしいと思われたかもしれないが、もうお互いのことしか気にしていなかった。
2人の人生で最も幸せな瞬間だったと思う。
曲が終わると、ジョシュとミシェルが俺たちに近づいてきた。
「ハーイ!」シエナは興奮気味に叫び、俺をパッと離してミシェルの両頬にキスをした。
「もぉーー、キュンキュンした!本当におとぎ話みたいだったわ。おめでとう!」
「ありがとう!」
興奮気味のガールズトークを横目に、ジョシュは俺に、『話がある』 といわんばかりに目配せしてきた。まぁ、こいつと腹を割って話すのをずっと避けてたからな。
俺はバーを見てジョシュに合図し、シエナたちには2人の時間を楽しませた。
「ウイスキーを2つ」とジョシュがバーテンダーに注文する。
この晴れやかな日にウイスキーで乾杯するのを断るつもりはなかった。たとえそれが、ことあるごとに俺の足を引っ張る、ベータらしからぬやつだったとしてもだ。
彼と対立していたわけではなかった。たとえ、シエナが森で話してくれたことを知り、そしてミレニアムアルファに俺のガセ情報を与えたのがこいつだと感じていてもだ。
ラファエルの件に関しては、ジョシュで間違いないだろう。だが目的は何だ?アルファになりたかったのか?嫉妬がこいつを錯乱させ、背信行為に走ったのか?
「お前とシエナに」
「ありがとう、ジョシュ」俺は作り笑いをし、グラスを掲げた。
「おいおい、もっと喜べよ!お前結婚したんだぞ!」
「ああ、最高に喜んでるよ」ショットを一気飲みし、胸のあたりがグッと熱くなった。なんか変な感じだ...俺が知っていることをこいつはまだ知らずに、こうして一緒に飲むのは。
もっと早くこいつと面と向かって話し合うべきだった。だが...できなかった。
クリスマスパーティー以降、俺とシエナはずっと気分が浮かれていた。その高揚した気分のままでいたかった。仕事でも、プライベートでも。
1度乗った幸せの波から離れると、もう2度と乗れない気がした。
「さあ、もう1杯いこうぜ!」ジョシュは不必要に大声で叫び、ウイスキーのショットを2杯追加し、1杯を俺の方に突き出した。
「本当にもう1杯いくのか?」彼の後ろポケットにしまってあるスキットルを指差してそう聞くと、ジョシュが目を細めた。
「それどういう意味だ?」
「もうガキじゃねんだぞ、ジョシュ」そう言って、シエナのところへ戻ろうとしたとき、ジョシュはショットを置いて俺の腕を掴んできた。
「お前は式を挙げたのに、俺はまだ挙げていないからそう言ってるのか?俺だってお前と同じように大人だよ」
「お前は酔っ払ってるし、パーティは始まったばかりだ」
「だから祝おうとしてんじゃんか」
「お前が?アルファに隠れて、親友を裏切ったお前がか?」思わず口走ってしまった。
ジョシュの顔はすぐに青ざめた。「な...何の話だ?」
「シエナを唆しただろ」「俺があの子を利用してるなどと言って」
「そんな感じで...俺は...言っちゃいない。怪しいのはわかってる。不適切だったってことも。お前は俺のボスだからな」ジョシュが目を赤く染めながらそう言った。
「だったら、なぜあんなことをしたんだ、ジョシュ?」
彼は下を見て俯いた。しばらくすると、再び俺の目を見て話しはじめた。「わかんねぇよ。お前を守りたかったし、群れのことも守りたかった」
「でも、俺の中の何かが......ただ......お前が手にしてない栄光を掴みたかったんだ。人生で初めて、お前を知ってから初めて、俺はお前にないものを手に入れたと思ったんだ、エイデン」
「パートナーか」ようやくこいつの心の内が理解できた。ジョシュはいつも、俺の影に隠れているような気がしていたんだ。たとえ、俺が彼のボスであったとしても、ジョシュの気持ちにもなって配慮してやるべきだったかもしれない。
「俺はただ、それがどんな気分なのか味わいたかったんだ。皆に答えを求められ、尊敬される存在でいることが」
俺はフッと息を吐いた。ようやく、ベータが非を認めたのだ。
ジョシュはさらに続けた。「彼女に告げ口したときだって、それが正しいことだなんて思わなかった。全くもっていい気分になんかならなかった」
「こんなときに、俺の処遇をどうするのかとか、群れにとって何が最善なのか決断を迫るのは申し訳ないことだと思ってる。本当に申し訳ない。すまなかった」
「俺はお前のベータとして相応しくないよ」
考えてみれば、シエナのことをジョシュに相談したことはなかった。実際、俺は常に秘密主義で、こいつを遠ざけていた。ジョシュがしたことを正当化することはできないが、劣等感を抱いてしまったのは理解できた。
しばらくすると、ジョシュはうなずき、自分1人で帰ろうとした。
彼が数歩歩いたところで、俺は声をかけた。 「ジョシュ」
パッと振り返り、俺の方に歩いてくるジョシュ。「ヘマをしたのは分かってるよな?」俺は低い唸り声を漏らしながらそう聞いた。
「はい、アルファ」
「お前の命と、群れの未来をかけて、2度と俺や群れのことを裏切らないと誓え」
「はい、アルファ」その目に嘘はなかった。
俺は手を差し伸べ、ジョシュもそれに応えた。だがそれだけでは何か物足りなく、俺はジョシュと抱擁をかわした。こいつを許すのは大変だったが、ずっと腹を立てることもできなかった。
兄さんが亡くなって以来、ジョシュは俺にとって兄弟のような存在だったからだ。
「お前のこと大切に思ってるぞ。時々、面倒くせぇとは思うがな」
「俺もだよ。酔ってるからそう言ってるわけじゃねぇからな」
そう言ってお互いを離すと、ジョシュは場の雰囲気を和ませようと俺の肩を殴ってきた。「おいおい、その感情はシエナのために取っておけよ。結婚初夜だぞ」
そう言われ、俺はミシェルと踊るシエナを見つめていた。楽しそうに笑顔でくるくる回りながら、今まで見たこともないほど無邪気で幸せそうだった。
その会場の誰よりも輝いていた。こんな美しい女性は他にいるはずがない。
そんな彼女も、ついに俺のものになった。
シエナに歩み寄ると、彼女がヒールを踏み外して後ろに倒れそうになったので、両腕でグッと引き止めた。
「またあとでね」ミシェルはそう言って、シエナにウィンクをした。「ジョシュが酔い潰れていないか確認しなきゃ」
俺はシエナをさらにギュッと抱きしめ、自分の体も反応しはじめていることを感じた。
「ここから出よう」
「何を考えているの?」と彼女は息を切らして聞いてきた。
彼女の匂いが俺を包み込み、一層気持ちは高ぶるばかりだ。
内なる獣は呼吸が荒くなってきた。
彼女の腰に手をやり、耳元の近くでささやく。
「俺との約束、覚えてるよな?」
「うん」彼女は緊張しながらもそう答えた。
彼女を抱きしめていたので、シエナの心臓が鼓動が激しくなるのが手に取るように分かった。
「なら良かった」「俺が手を出すころには、きっと君は天に助けを乞うだろうけどね」
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