
Fighting Darius 忘れたかった男との再会 3巻
ガーターベルトの図書館司書
ペニー
家の前の車道に乗り入れると、ちょうど帰宅したらしいダリウスの姿が見えた。
私が駐車している間、彼は長身の筋肉質な体を折り曲げ、優雅に車から降りてくるところだった。円形の私道の端に駐車している。
彼は車のドアを閉め、私がカスピアンの車をガレージの近くに停めるのを待っている。
立っている彼の髪を夕日が照らす様子がとても美しい。ダークジーンズと白いシャツが、彼の引き締まったセクシーな体を魅力的に包んでいる。
彼を見るたび、胸が少し痛む。彼が私のものになることは決してないのだと、もう一度自分に言い聞かせる。
決意を思い出し、私は微笑んで彼に小さく手を振った。彼と話さなければならないことがある。はっきりさせなければいけないことがある。
彼と話すことに緊張しながら、私は車から降りた。
突然の恥ずかしさと気まずさを感じながら、私はもう一度彼に手を振った。何でいきなり、5歳児みたいになってるの、ペニー? ああ、つらい…。
彼の瞳は、ゆったりと私を見つめている。手を振った私に、少しだけ微笑み返す。
風が吹き、突然、彼は匂いを嗅ぐように顔を傾けた。おっと。彼の唇はきゅっと引き締まり、鼻孔が開く。突然、身を隠して逃げ出したい衝動に駆られる。純粋に本能的な衝動。
動こうとする間もなく、筋肉質の大きな体躯に車の側面に押しつけられる。彼は身をかがめ、私の首筋を鼻でかすめて匂いを嗅いだ。
「人狼の匂いがする」と、唸る。
リップリングくんの匂いがすることがわかったが、彼には関係ないことだ。ぴしゃりと言い返す。「私がまさにその人狼だからじゃない?」
ああ、このライカンに感じよくするのは本当に難しい。
「違う…。君は他の男と一緒にいた」と、彼は吠える。「何をしたんだ、マリーシュカ?」
腕を握る彼の手がきつくなる。声には、今までに聞いたことがないほどの独占欲を感じる。
彼の体から放出される熱と、ぴったりと押しつけられた全身の感触が、私の呼吸を乱す。
ゆっくりと、彼は身をかがめた。鼻が私の鎖骨をかすめ、私の両腕を片手で背中の後ろに固定する。
彼の鼻先が上に上がってくる。首筋、頬をかすめ、私の唇に触れそうになるまで。ああ、女神様…彼は何をしてるの? 心臓が激しく鼓動する。
「キスをしたのか?」彼が荒々しく聞く。吐息が私の唇にかかる。彼の声は深く、ハスキーだ。すごく、いい匂いがする。
「あなたには関係ないでしょ」息も絶え絶えでささやく。
彼は私の答えに眉をひそめた。少し身を引いて、警告するように私の顔に触れた。親指が片方の頬に、残りの指がもう片方の頬に食い込む。
彼の白目が真っ黒に染まり始めているのに気づき、私は緊張して息を飲んだ。闇はアイスブルーの瞳に入り込み、深いコバルトブルーへとその色を変える。
彼のライカンが彼の一部を支配し始めたのがわかる。彼自身が何を望んだとしても、ライカンの部分は私を強く求めている。私を自分のものだと主張したくてたまらないのだ。私は心配すべきなのだろう。
ぐいっと顔を上に向けられ、私は顔をしかめる。彼の表情もより険しくなる。もう一度動かされるかと思ったが、彼は私の顔をつかむ力を緩めた。
彼は探るように私の顔を見て、指先でそっと頬を撫でた。傷ついていないことを確かめるように。内なるライカンをコントロールできるようになったのだろうか。
彼の瞳は魅了されたかのように、自分の指先の動きを追っている。その奥には何か危険な光が潜んでいる。私は動けずにいた。
彼の暗い瞳はとても冷酷で恐ろしく見える。それでも、その瞳から忙しい感情の変化を感じられるのが不思議だった。
最初は怒りに駆られ、次は優しく気遣うようになった。今は、謎めいた、だが一番食欲をそそる獲物を研究する捕食者のような目をしている。
猫が獲物をむさぼる前に弄ぶ様子を少し思い出させた。私の頬や首、口の匂いをくんくんと嗅ぐ。それからまた気分が一変し、今度は畏敬と崇拝を込めて私の顔を眺める。
足に力が入らない。もうこれ以上は耐えられないと思った時、彼は私の胸の上に、暖かく大きな手を置いた。その下では、心臓が狂ったように鼓動している。二人の荒い呼吸が混ざり合う。
欲望の波が全身を駆け巡り、私は目を閉じて彼の次の動きを待つ。体が喜んでいるのが嫌になるけれど、どうにもならない。
「君はそいつとキスはしていない」と、彼はほとんど独り言のように言う。私は瞼を震わせ、目を開く。彼の瞳はぎらぎらと輝き、開いた口元にはまっすぐな白い歯と牙がのぞいた。
突然、胸に置かれていた手が首の横をつかみ、彼が首の逆側に鼻を埋めた。飢えたように首の横を舐められ、私は身を震わせる。
ああ…。彼の牙が肌に触れるのを感じ、私は小さくうめき声をあげた。
次の瞬間、私は解放された。あまりに突然で、地面に横向きに倒れ込む。ううう… 今日地面に転がるのはこれで2度目だ。地面が快適ではないことは、いくら強調してもし足りない。
彼は3メートルほど離れたところで、荒い呼吸をしていた。私が悪態をつき始めると、彼はようやく地面に倒れている私に目をやった。まるで、私がそこにいることに驚いたような顔で。
「すまない。本当にすまない」と、彼は言い、淡いブロンドの髪を乱暴にかき混ぜた。それでも、私を助け起こしに来ようとはしない。
彼の視線が私の脚をなぞる。ドレスが太ももまでずり上がったおかげで、肌がどれだけ露出しているかを意識する。
体を起こしつつ、タイトなドレスを引っ張り下ろそうとする。
どうぞ、ご自由に。助けないで、じろじろ見ているだけにすればいいわ。
うううう、これだから何度もタマを蹴りたくなるのよ。騎士様、どうもありがとう! ヒールで立ち上がるのは至難の業だ。こんな靴、燃やしてやる。
彼は深いため息をついてから、ようやく近づいてきた。私の腕を優しく、でもしっかりとつかみ、引っ張って立たせてくれる。瞳は鮮やかなアイスブルーに戻っている。
「すまなかった」彼が申し訳なさそうにつぶやく。怒りがおさまってくる。彼に話さないといけないことがあるのを思い出した。
湖の横でリップリングと一緒に座っていた時に、気づいたことだ。
今日、あの湖で、ようやくはっきりと理解したのだ。すべては私のせいだったという結論に達した。3年間を無駄にしたのも、心を砕かれたのも、私自身が招いたこと。
ダリウスが私を裏切ったわけじゃない。二人の間には何もなかったのだから。彼は最初から、私たちに未来はないとはっきり言ってくれていた。
そして、何度も何度も、私を番いにするつもりはないし、そうしたいとも思わないことを伝え、行動で示していた。それなのに、私は彼を追いかけた。十分に努力すれば、いつかは彼が考えを変えると信じ込んでいたのだ。
自分がとても頑固なのは知っている。私を知る人は、誰でもそれを知っている。欲しいものがあれば、一心に追い求める。問題は、欲しいものすべてを手に入れるのは不可能だということ。
特に、その欲しいものが、私を求めてすらいない美しいライカンの大人の雄である場合は。彼に自分を無理やり好きにさせることはできない。
「ねえ、あなたに言いたいことがあるの」勇気をなくして言えなくなる前に、私は口を開いた。「あなたがポリーナを好きなのは知ってる」
彼は眉をしかめ、私は突然、彼女の話をしていることに罪悪感を覚える。2人が一緒にいない事情はわからないが、彼女の話をすることは、彼にはかなりつらいに違いない。彼の気持ちはよくわかる。
「とにかく、あなたが好きなのが彼女なら、彼女と一緒になるべきよ。私たちは絶対に結ばれないとあなたは何度も伝えてくれた。だから、あなたが彼女と寝たからといって、私に怒る権利はない」
「ペルセポネ、あの晩のことは…」
「いいの、心配しないで。もう全部わかったから」私は急いで言う。そう、すべてわかったのだ。湖で。
「そうなのか?」
「うん! 私たち、過去は忘れて、友達になる方がいいと思う」
「友達になる?」
「そう」私は真剣にうなずいた。「私があなたのエラスタイだとか、そんなこと、忘れよう」
彼は驚いた顔をする。「忘れる?」
「そう、お互い仲良くしよう。あなたはあなたの人生を生きる。私は私の人生を生きる。あなたは自由に好きなところに行って、誰とでもしたいことをすればいい。私も自由に出かけて…ええと、好きなことを、誰とでもするわ」
その言葉に、彼の表情が曇り、顎が強張る。視線を落とし、しばらく地面を見つめる。
「つまり…俺たちはお互いに何でもない...ただの友人だと」彼は、私の言ったことを理解しようとしているかのように言った。私の方を見ないまま。その口調は怒っているようにすら聞こえる。
「そういうこと!」私はうなずいた。
彼はあまり嬉しそうには見えなかったけれど、何かを考えているようだ。目を上げてもう一度私を見る。彼の頭の中で歯車が回っているのがわかる。
彼の表情が晴れた。計算高い目つきで私を観察する。
「つまり、僕は君の友達なんだな」彼は獰猛そうな笑みを浮かべた。こういう顔をしていると、ひどく危険な男に見える。少し不安になったけれど、その気持ちを押し殺した。
「そう、私たちは友達」にっこりと微笑み返す。
「握手しよう」彼は手を差し出す。
「いいわ」
その手を眺めて一瞬ためらってから、私はおずおずと彼の手をとった。彼の力強い大きな手のひらに包まれて、私の手はとても小さく、はかなく見える。
彼の指が私の手を包み込んだ瞬間、触れ合った手からつま先まで、電気と熱が爆発するような感覚が走った。息が止まりそうになる。
胃がきゅっと締めつけられ、鼓動が高まる。彼も同じ感覚を感じているかのように、もっと強く私の手を握る。見上げると、彼はすでに私の反応を探るようにこちらを見つめていた。
「よかった」私は彼の目を見て明るく微笑み、手を離そうとした。笑顔を保つのが難しい。
彼の瞳が満足げに輝く。私の手をすぐに離そうとしない。
なぜ、これが警告のように感じるのだろう? もしこれがゲームなら、完全に彼の勝ちだ。彼こそがマスターであり、ルールメーカーであり、ゲームを操る者だ。
しばらくして、彼の引き締められた唇がいたずらめいた笑みを浮かべ、ようやく私の手を離す。
私は心臓を落ち着かせようとしながら言う。「それじゃ…また後で!」
そのまま踵を返し、正面の石段を駆け上がる。
「友人の君に聞きたい」私に追いつくと、彼は言った。
私の肘をつかみ、裏庭とビーチに続く私道に引っ張っていく。「つまり、これからは仲良くやろうということだな」
「うん…」何を言うつもりなんだろう。
「それなら、時々、退屈したら、君の行くパーティーに一緒に行ってもいいか?」彼は尋ねる。「もちろん、友達として」
私が訝しげに見上げると、彼は無邪気に微笑み返した。
「いいけど…お互い、他の人と付き合うのもありだし、嫉妬は禁止よ」念のため、警告する。腕をつかむ手の力が一瞬強まるが、彼は微笑んだ。
どうすれば嫉妬しないでいられるか自分でもわからないが、その時になったら考えよう。
「私はあなたのエラスタイではないし、私たちはただの友達だから」と、付け足す。彼に対するのと同じくらい、自分に思い出させるために。
腕を掴む彼の力が、痛いほど強くなり、顎が強張るが、彼の笑顔はそのままだった。
その顔を見上げながら、突然、彼がこの取り決めにあまり満足していないと感じた。
「あなたはこれでいいの? 友達にならなくてもいいよ。シンプルに、お互いを無視することにしてもいい…喧嘩したくないだけなの。喧嘩はもう疲れた」
「いや、これでいいんだ。俺は君の、友人になれて嬉しい、ペルセポネ」彼は即答する。瞳の奥で何かが光ったが、すぐに消えた。
「友人」としてのルールについて詳しく定義しようとした時、LMFAOの「Sexy and I Know It」が流れ始めた。
後ろのポケットから携帯を取り出すと、メイソンのまぬけな顔が画面に表示されている。今日の午後、私の携帯に自分の番号を入力した後、自撮りをしたのだ。
電話を無視しようとするが、ダリウスが言った。「出るといい。どうぞ」
「いいの?」
「ああ」と、彼は静かに言った。
彼と一緒にいるところで、あまり電話に出たくはない。数歩離れたところまで行って、画面をスライドさせた。
「もしもし、メイス?」後ろをゆっくり歩いているダリウスに目をやりながら、電話に出る。
彼は数メートル離れたところで、アイスブルーの瞳を海の見える遠い水平線にじっとむけていた。深く考え込んでいるように見える。両手はジーンズのフロントポケットに突っ込んでいる。
「やあ、かわい子ちゃん」と、メイソン。「今、何してるとこ?」
「特に何も。図書館で過ごす夜はどうだった?」
「すごく盛り上がったよ。来ればよかったのに。みんな楽しんでた。ミラーボールに紙吹雪、ピニャータ、司書たちはテーブルの上で踊ってるし…。図書館でよくあるクレイジーな夜だったね」
「セクシーな司書? ストリップもしてたんでしょ? 踊りながら一枚ずつ脱いで… あの窮屈そうな服の下にガーターベルトが見えて、さぞかし興奮したでしょうね」
メイソンは笑う。「セクシーな司書? 図書館にはあまり来たことないみたいだね」
「えーと、一度だけ…かな」
「ガーターベルト姿の司書を想像させられて、僕の脳はトラウマになったかも」
「自分のせいよ、メイソン」 私は笑う。「それに、ガーターベルトをした司書のどこが悪いの?」
「マジでうちの司書を見たことないの? 全員、100歳くらいだよ!」
「セクsーな100歳を何人か知ってるわ。それに、もし私がその場にいたら、彼女たちと一緒にテーブルの上で踊ってたと思う」私が冗談で言っているのではないことを知ったら、彼は驚くだろう。
「それなら見てみたい」と、メイソンは宣言する。
私はくすくす笑った。「でしょうね」
そこで、ダリウスにもこの会話が聞こえていることを思い出す。振り向いて確認すると、彼は考え深げに地面を見つめていた。
「君もガーターベルトを履いて踊るの?」メイソンの声が低くなる。ダリウスの筋肉が強張り、顎に力が入る。
「私は… えーと…」
「ところでさ」私の落ち着かない様子を感じたかのように、メイソンは続けた。「もし暇だったら、金曜日にビーチで焚き火パーティーをやるんだけど、来ない?」
「いいね。楽しそう」私は安堵のため息をつき、微笑んだ。リリーとアマンダとキーシャも来るはずだ。今日の講義でその話をしていた。
***
夕食の席。ダリウスと私の関係が変わったことに気づいていたとしても、ライカンの友人たちは何も言わずにいてくれた。
ただ、最初は戸惑った、不思議そうな表情をしていたけれど。ジェネシスは、はにかんだ嬉しそうな笑顔を私に向けた。マーキング祝いのパーティーを計画したり、赤ちゃんの名前を考え始めていないといいけど。
私たちは友達のように会話をした。お互いから目が離せない友達。
話しながらもう一つ気づいたのは、彼を見るだけで、何を考えているかがわかるということだ。私には、彼の瞳を読むことができる。
彼の頭の中で歯車が回っているのがわかるし、何かに同意していないのも、何かアイディアを思いついたのも、他の人がまだ気づいていない面白いことを見つけたのも、すぐにわかる。
彼も、私に対して同じことができるらしい。
その発見のおかげで、最後の方は、少し気後れした。気づかない方が良かった。
食事が終わる頃には私はほとんどしゃべらなくなっていて、私の気分の変化を察知した彼は、私をじっと観察していた。
***
真夜中、私は彼の痛みと苦痛に満ちたうめき声で再び目を覚ます。彼が悪夢に囚われている音だ。
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