
Hated By My Mate 私の大事な人は私が嫌い 4巻
この巻は「Hated By My Mate 私の大事な人は私が嫌い 3巻」からの続きです。
第15章
ウルフギャング
今日はオーロラの初めての休みの日だった。7時までに戻ってくるのであれば、家に帰ってモンタナと過ごしていいと言った。
オフィスに座り、病院に関する書類を整理していると、ノックが聞こえた。
その音はどこにいてもわかった。彼女だった。
オーロラだ。
「どうぞ」と答え、仕事に視線を戻した。軽い足音を立てながら、彼女が机の前までやってきた。
彼女が何か言うのを待ったが、一向に話し始めなかったのでようやく頭を上げた。俺がいつも見惚れてしまうあの綺麗なグレーの瞳と目が合った。
彼女はジーンズにスニーカー、パンクロックのロゴが入った黒いTシャツ、赤いチェックのセーターというシンプルな服装だった。
ジャケットは胸にぴったりと密着していた。彼女の香りに、変な気持ちになりそうになる。
俺は現実に引き戻された。
「何だ?」沈黙を破ったのは俺だった。
「そろそろ出ます」頭を低く下げ、視線は床に固定されていた。
クロノスの言うとおりだった。昨日のせいか?
昨日母の庭で雑草を刈り取っていたとき、誰かの視線を感じた。
マシュマロとバニラの独特な香りで、彼女だとすぐにわかった。
振り向いて彼女を見たい衝動を抑え、冷静を装って手入れを続けていた。
彼女に見られてまんざらでもなかったことは否定しない。
しかしその時、タルーラが現れた。いつものように、彼女は私の胸に手を置いていちゃつき始めた。
数分経っても終わりが見えなかったので、俺はついにタルーラを引き離した。中に入ろうとバルコニーを見上げると、オーロラはすでにいなかった。
夕食を取りに食堂に入ると、彼女はもう来ていて、俺の食事をテーブルに並べていた。
彼女は俺の目を見ようとしなかったが、何かがおかしいのはわかった。
「ああ、お腹が空いたわ! 今日の夕食は何、ウルフ?」タルーラが入ってきて、俺の隣に座った。
「あの、メイドさん? 私のお皿はどこなの?」
怒りがこみ上げてきた。
オーロラは俺を見てからタルーラに目を向けた。「すぐにお持ちします」と彼女は素早く言い、キッチンへと急いでいた——。
「失礼してもよろしいでしょうか?」
オーロラの声で、我に返った。
「行っていいぞ」
彼は正しかった。
「1人で歩き回るなよ。特に湖には行くな。君の不注意による事件報告書を見たくないからな」と付け加えておいた。
「はい」彼女は踵を返し、オフィスを後にした。
その日は一日、オーロラとその居場所を考えて落ち着かない気持ちになった。
自分の家に直行したのだろうか。
誰かに会ったのだろうか。
彼女のファイルには彼氏や過去の交際相手については何も書かれていなかった。
でも、もし彼女が誰かと付き合っていたとしたら?
正午になって、ついに我慢の限界を迎えた。
ちょうどいいところにマックスがやってきて、一緒に街へ行こうと誘ってくれた。おそらく、出会った適当な女の子といちゃつくためだったのだろうが、とにかく彼と一緒に行くことにした。
オーロラのことを確かめに行く口実ができた。オーロラが1人でいるのか、それとも誰かと一緒なのか。
「今日がローリーの初めての休みだろ?」ショッピングモールを歩いていると、マックスが言った。
「ローリー?」
「オーロラだよ、メイドの」
ニックネームに決まってるだろ、とマックスは言ったが、他の男が彼女を親しげに呼んでいることが許せなかった。
「俺はスタッフと仲良くしたりしないもんでな」真顔で言い返した。
「おいおい! 自分の部屋のすぐ隣に住まわせておいて、スタッフとは仲良くしないって? ありえねえ」
「俺の部屋の隣に置いたのはセキュリティ上の理由だ。それ以上のことはない」
「ありえねえ」とマックスは繰り返した。「オーロラがかわいいからという理由じゃないなら、秘密の関係でも疑うね。リーマスやアスペンだってそう思ってる。それに、カラさんもバラのことを話してくれたよ」
俺は呆れた。
「どう思おうと勝手だが、そんな愚かなことをしている暇はない。ルナを選べるなら、タルーラのような価値のある人にする」
オーロラを屋敷に迎えた理由を説明しなければならないことが苦痛だった。
特にマックスのような、1日以上の関係を保てない人間に。
「まあいいけど」マックスは肩をすくめ、ようやく諦めた。
角を曲がると、突然小さな体格の誰かとぶつかった。
その人から漂う香りに、その場固まらざるを得なかった。
「やあ、ローリー! ごめん、見えなかったんだ。大丈夫?」とマックスが尋ねた。
見下ろすと、彼女のグレーの瞳は涙で光っていた。
しまった。聞かれたか?
「ローリー、大丈夫?」
背の高い女子が彼女のそばに来た。オーロラの強盗騒動があった日に助けに来てくれた友人だった。
オーロラはすぐに頭を下げ、目を拭いながらうなずいた。
「大丈夫だよ、エマ。すみません、アルファ...…ベータ...…」
彼女は踵を返して立ち去り、友人もすぐ後に続いた。
俺はその場に凍りついたように立ち尽くし、彼女の小さな姿が出口から消えていくまで見ていた。彼女の体が触れた感触が、まだ疼いていた。彼女がパートナーだと感じた。
マックスに肩を叩かれ、現実に引き戻された。
「追いかけて謝ったほうがいいんじゃないか」マックスは厳しい表情で言った。
「謝る? 何に対して?」淡々と答えた。
「さあな。お前は何もないって言うけど、オーロラはかなり傷心してるように見えたぞ。本当に彼女のことを何とも思ってないなら、そのことを伝えたほうがいい。苦しめるだけだ」
マックスが立ち去ったあと、俺は深く考え込んでしまった。




