
ギデオン 人狼のハーフですがライカンと運命の恋人です 5巻
この巻は「ギデオン 人狼のハーフですがライカンと運命の恋人です 4巻」からの続きです。
目覚め
レイラ
彼はゆっくりと進めようと頑張っているけど、深まりゆく絆への切なる欲望が、我慢などほとんど不可能にしてしまう。私たちは互いに爪を立て、必死に心を近づけようとしている。
彼に対する情熱が、私の内に鼓動する。この引力は、私たち2人をもしのぐほどに力強い。
「私を抱いて」と、私は低くうなる。
私の手を握る彼の目は暗く野性的だ。私の両手を頭上で固定して、指を絡ませる。
「レイラ!」 彼が咆哮(ほうこう)をあげて私の内部に入る。私の内側に何かが目覚める。彼が強く突くほどに、それはより強くなっていく。
彼は再び咆哮を上げる。その獰猛な歯と犬歯が、私の肩の柔らかな肌に突き刺さる感触が伝わる。
私も突如として、同じ情熱と野性の本能に取り込まれ、彼の肩に歯と犬歯を食い込ませる。
彼の熱い噛みつきが私の肌を焦がし、その感触が体中に伝わり、皮膚を突き抜け、血液が毛穴の1つ1つに駆け巡る。
全身に広がるのは、我慢できないエクスタシーの炎。それは痛みと快楽が交錯する炎。
私は耳を閉ざし、彼以外の全てを感覚から遮断する。骨、血、意識、そして全ての毛穴に彼を感じる。私は完全に砕け散ったように感じつつも、徐々に再び組み立てられていく。
私は同じ存在でありながら、まったく異なる存在になる。
彼の肩から顎を離し、疲れに身を委ねると、忘却の彼方へと消え去っていく。まぶたの奥で、輝く白い光が優美に舞っていた。
温かな至福に身を浸している。こんなにも満ち足りた感覚、安心感を感じたことはかつてなかった。
私が笑い声をあげると、「君はまだ生きてるよ、ハニー」と言う声が耳に響き、私は瞳を開ける。
彼の美しい黄金色の瞳が、楽しげに、私を見つめている。
彼は私たち2人を包み込むようにシートをかける。裸のお腹に手を添え、片足を私の脚の上にのせている。「調子はどう?」
「大丈夫よ」と私は何も考えずに答えたが、その後停止し、眉をひそめる。
「おそらく、初めて君の中のライカンが目覚めたんだろう。感情が高ぶっているときにそれをより強く感じるだろう」
理解するのは難しいわ。
「これからはお互いの感情も感じ取ることができるようになるんだ」と彼は説明する。私が戸惑いながら彼を見つめると、彼は続ける。「今は共有しないように閉じているから、何も感じられないかもしれない」
彼は私に告げる。「多くの変化を経験する途中で、君を圧倒したくないんだ。毎日、君は変わり続けるだろう。もうすでに、その変化が見えている」
「私の印」 手がとっさに自分の肩に触れる。彼が噛んだ傷跡をなぞる。「もう痛くない」
「君が休んでいる間に治ったんだ」 彼は体を少し捻って、肩を見せてくれる。
その肩には黒い歯型がある。皮膚が少し盛り上がり、傷跡が残っている。それは私の印だ。彼は満足そうに微笑む。
彼の肩についた痕にそっと触れ、次に自分の歯に指をやってみる。普通の歯と同じ感触だ。「私、どれくらい寝てたの?」と彼にたずねる。
「たったの30分くらいだよ」と彼は答え、私を抱き上げて自分の上に横たわらせる。
「それだけ? もっと長く感じたわ」と、私の下にある彼の温かくて固い体の感触に気を取られないようにしながら言う。
私たちの間には薄いシーツしか挟まっていない。肌がぞくぞくする。「あなたは寝てたの?それともずっと起きてたの?」
「10分くらいは気を失ってたかな・・・あとの20分は俺のエラスタイを見つめていたよ」
「なにそれ、変態?」私は微笑みながら言う。寝てる間によだれを垂らしたり、いびきをかいたりしなかったかな?顎に手をやりたくなるけど、我慢している。
「仕方ないさ。君が美しすぎるから」と彼はささやく。彼の視線が私を赤らめさせる。
「うーん・・・朝起きるといつも髪がボサボサなの」と言いながら、自分の口を蹴りたくなる。『ありがとう』と言うべきだったのに、褒められるとどうしてよいか分からなくなる。
「君の髪が大好きだよ」と彼は答えながら、私の巻き毛を人差し指に巻きつけるのを感じます。
ただ言葉を口にしているだけじゃなく、彼は本当に私の髪や、私の全てを愛しているんだ。この美しいライカンが私に対してそんな気持ちを抱いているなんて、本当に驚きだ。
「恋って本当に盲目なのかもね」と私がちょっと生意気に言う。彼は低い声で笑い、私をドキドキさせる。
「他の人が見ているものに、君が気づいていないだけなんだよ。自分がどれほど素晴らしいか、わかっていないのがいいんだ」
「じゃあ、盲目の次に、妄想もリストに加えてもいいかな?」と私は彼に言う。
彼はふざけて私の髪を引っ張る。
しばらくの間、私たちはただ寄り添い、お互いを見つめ続けた。昼も夜も、永遠に見飽きることはないだろう。「昨夜、どこへ行ったの?」私は静かに尋ねる。
「狩りに行ったんだ」と彼は簡単に答える。
「何を狩りに行ったの?」
「ヘレン」と彼は答える。
「へえ」彼がヘレンを追っていったのだろうとは思っていたけど、そんなにさりげなく話すとは予想外だった。「彼女を捕まえたの?」
「いや」と彼は危険な輝きを眼に宿して言う。「彼女は隠れてしまった」
彼の唇に浮かぶ危険な微笑みは、血を引き寄せるかのようだ。彼がどれだけ危険な存在か、改めて思い知らされる・・・
「でも、罠を仕掛けた」と彼が続ける。
「彼女を殺すつもりはないわよね?」 私は彼に尋ねる。
「わからない。どうしたらいい?」彼が私に問いかける。
考えながら、彼の胸を指でなぞる。指を広げてもっとまさぐると、彼の心拍数と呼吸が速くなる。本当に素晴らしい体だ。
雑誌の中や、群れの中で多くの男性を見てきたけど、彼は誰よりも魅力的だ・・・
筋肉の塊のようだけど、どこもかしこも柔らかい絹のような肌ざわり。魅惑的だ。手と口を使って彼の隅々まで調べ上げたい。
もっと下に行こうとする私の指を彼の手が包み込む。
「彼女が私にしたことは、死刑に値することではないでしょ?怖がらせられ、命を脅かされたけど、私はまだ生きているんだし」 でも、もし彼女が明日死んでも、私は偽りの涙を流すつもりはない。今の私の気持ちは・・・曖昧だ。
「ハニー、俺たちは契約を結んだのに、彼女はそれを破った。俺と俺のものに手を出すべきじゃないことをわかっていたはずだ」
「お前を憎むのは筋違いで、命を脅かすなんて到底許されない。だから、自分のしたことがどんな結末を迎えるか、覚悟があったはずだ。俺のものは俺が守る」
ギデオンが私を『俺のもの』と呼ぶのが好きだ。その言葉で、私は守られ、愛されていることを感じる。ずっと、『番い』というものがどんなものかを想像してきたけど、実際の感覚は私の最上の想像をも超えていた。彼はただ、素晴らしい。
彼の心に変化が生じているのが見て取れる。そして彼は尋ねてくる。「さて、昨夜、群れの縄張りを出て、人けのない道をひとり歩いていた理由を話す覚悟はできたかい?」
ため息がこぼれる。この話題は避けて通ることはできないだろう。「夜の散歩をしていると言ったら、信じてもらえる?」と、一応言ってみる。
彼はただ完璧な太い眉を上げて、私が真実を話すのを待っている。
「両親とケンカしたの」と私はついに認める。彼の鋭い視線に耐えられず、私はまぶたを下げる。
私は彼に、自分の人生と、全ての真実を打ち明けたくなった。「両親に悪気はないの。つまり、私のことを愛していて、最善を願っていることはわかってるの。でも、私はもう大人なのよ」
「私はずっといい娘だったわ。兄や姉が反抗しても、私は親の期待に応えてきた。言い争ったこともあるけど、結局、いつも親の言うとおりにしてきたの」
「初めて親に逆らったのは、大学進学のために家を出て、群れの領土から離れた時よ。それが私の人生で1番の勝利だったと思う」
「でも結局毎週末、実家に帰らなきゃいけなくて、しかもみんな必死になって、私を説得して家に戻そうとするの。私の人生をコントロールすることに慣れきっていて、引き時が分からなくなっているみたい」
「私がオオカミの力を持たずに生まれたせいで、彼らは私が弱く、世話をする必要があると思い込んでいるの。そして、色々な問題が次から次へと起きるの」
「前回は父の健康の問題だった。父がもうすぐ死ぬかもしれないって言うから、1ヶ月間実家に戻ったの。今回は、両親が選んだ男性と結ばせようとしているの」
「今週末、交配式があると言われて、それで大喧嘩になったの。次に何が起こるか予測もつかないわ」
「疲れたわ。もう飽き飽きよ。私の人生なのに。なぜ、私がもう子供じゃないって気付いてくれないんだろう?」
彼の体が私の下で固まるのが感じられる。
「待て、もう一度言ってくれ」
眉をひそめ、彼を怒らせた言葉を思い返そうとする。胸が熱くなり、彼の怒りの意味が分かる。
突如、自分が口にした言葉に気づく。やばい・・・コフィのことをあんな風に話すつもりはなかったのに。
ライカンになっても、脳から口への壊れたフィルターが治るわけではないのか、と自己嫌悪に陥る。
彼が私たちの位置を一瞬で逆転させ、私は仰向けになり、彼が私の上に覆いかぶさる。
彼の硬く輝く黒い瞳が私を見つめる。「今週末、他の誰かと結ばれる予定なのか?なぜ俺はそれを知らなかったんだ、レイラ?」
彼の緊張に張り詰めた表情を見つめながら、私は言う。「だって、そんなことはありえないもの。あなた以外の誰かと結ばれるなんて想像もできないわ」 炎が少し小さくなり、怒りが和らいだように見える。
私は続ける。
「さっきも言った通り、もう彼らに人生をコントロールさせるつもりはないわ。私は成長して、自分の人生を切り開く時が来たの。だから、大喧嘩になって、私は昨夜あの道を歩くことになったってわけ」
彼の指が私の喉に巻き付き、もう一方の腕が私の腰をしっかりと抱え込む。
彼は厳しい口調で言う。「あんな暗い夜道を、娘1人で歩かせるなんて、とても信じられない。君に何かあったら、集落ごと焼き払っていた」
「ギデオン」私は彼の無精ひげの頬に手を置くと、彼は私の触れる手に身を寄せる。「両親は私がいつものように屈すると思って、その夜私が這い戻ってくるのを待っていたんだと思う」
もう一方の手を彼の絹のようなブロンズの髪に滑らせると、彼は目を閉じた。「何があっても、私は彼らを愛しているの、ギデオン。家族を愛しているのよ。だから、傷つけたくないの」
彼のまぶたが開き、黄金色の瞳が私を見つめている。「彼らを傷つけないと約束する。でも君への接し方は許せない」と彼は言う。
「あなたと同じくらい、家族はは私にとって大切なの。本当に彼らと仲良くしてほしいの・・・できれば、いつか」
「君のためなら、何でもする」と彼が答える。
私は彼に微笑みかける。「約束してくれる?」
「約束するよ。君がそんな笑顔になるためなら、何でもするさ」彼は私の下唇を指でなぞる。
彼が触れると、ぞくぞくする。
「何も心配しなくていいよ、ハニー。 俺にまかせておけ」
「わかったわ」私は息を切らしながら言う。 「今日は仕事に行なきゃいけないの?」 たとえ数時間でも彼から離れることを考えると、今の私には耐えられない。
このままずっと一緒にベッドにいてほしい。
彼は身をかがめて私の口の端にキスをする。「いや。 もう会議や取引はない。ここロサンゼルスでの私の仕事は終わった」と彼が告げた瞬間、私の心は沈む。
彼は頭を上げて言う。「ハニー、俺は君のためにここにいるんだ。君は俺の番いだ。君なしではどこにも行かない。俺が去るときは、君も一緒に来るんだ」
「ああ・・・」彼が私の首にキスをしている間、私は考えようとする。彼の唇が私に触れているところから、心地よい電流が私の体の隅々まで伝わってくる。
彼は以前、仕事で世界中を飛び回っていると言っていた。私は興奮すると同時に、少し緊張している。
「次はどこに行くの?」
「本当は今ごろはリスボンにいるはずだった」と言いながらも、会話にあまり集中していないみたいだ。
彼は私の顎をかじり、吸い、舐めている。「でもマドリードに行くかもしれない・・・」
彼の指が私の肌をかすめる。「君の家族の群れについて教えてくれ」
彼の温かい唇が私の耳の下に触れる。私は考え込む。「ネッチ・テクラはいい群れよ。アルファは新人だけど、公正な指導者よ」と私は言う。
私はまぶたを閉じる。
「じゃあ、君の両親が選んだ、くそ野郎について教えてくれ」彼はうなり声を上げ、その口は独占欲を掻き立てるように再び私の首筋を押さえつけている。
「彼の話はしたくないわ」と私は頭を後ろに反らせ、彼の硬くて長い物に腰をすりつけながら言う。
「君の望みならなんでも聞くよ」 彼の唇が私の肌に微笑みかける。彼の欲望が急上昇している。「俺に支配されること望んでいるんだね?」
結局、1日中ベッドで過ごした。




