Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 4巻 - 表紙

Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 4巻

Danni D

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Chapter
15
Age Rating
18+

Summary

この巻は「Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 3巻」からの続きです。

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5 Chapters

秘密

アリエル

血の海に浮かぶ少女を見ると、そのお腹はズタズタに引き裂かれていた。私は理性を失い、自分が抑えられなくなる。

抑えたくない。

私の中の狼が支配権を握り、私を心の奥底に追いやる。

はぐれ者の1匹に喉を狙われ、かわしたところを右肩を噛まれた。

痛みすら感じない。感じるのは怒りだけだ。

くすんだ金色の雄狼が私の脇腹に飛びつき、私はその場に倒れた。私は四つ足になったが、変身していない。私の中の狼が私の人間の体を操っている。

私ははぐれ者に飛びかかって押さえつけ、彼が私の下でもがく間に喉を引き裂く。

私は茶色の狼に目を向け、突進してくるその目を鉤爪で切り裂いた。

ほんの数秒で、その首にも致命的な噛み傷を負わせた。

(2匹倒した。あと1匹)

私は口から臭い血を吐き出し、最後に残ったはぐれ者を見た。私が唸ると、その愚か者は震え出す。

やつは背を向け、尻尾を脚の間に入れて境界のほうに走っていく。だが、彼を逃がすつもりはない。

みんな死ねと言っただろう。

私は難なく追いつき、その背中に飛び乗ると、首の後ろに歯を食い込ませた。はぐれ者の前足が曲がり、ドサリと地面に倒れた。

私はその周りを回り、あえて起き上がらせる。私はそれを楽しんでいた。

彼が立ち上がる前に、飛びついて地面に押し倒し、歯に骨を感じるまで肩に深く噛みついた。

鋭い一噛みで肩の骨を折ると、首をへし折り、だらりとしたその体を地面に落とした。

私ははぐれ者の血の臭いを放ち、人間の衣服と肌は臭くどろりとした血にまみれていた。

しかし、ついに私の中の狼が満足した。私は自分の体をコントロールできるようになる。

手を覆う血を見て手が震えた。

(わ、私は何をしたの?)

もしかしたら、ハンターたちは本当に私をケダモノに変えてしまったのかもしれない……。

小さなうめき声がして、私は森の空き地の中心に注意を引かれる。

(あの小さな子――あの子はまだ生きてる!)

私は少女のそばに駆け寄り、膝をついた。

少女の小さな手首を握ると、かすかに脈が感じられるが、何もしなければ、彼女は死んでしまうだろう。

少女の傷は見るに耐えないほどむごたらしいが、私はなんとか傷を調べる。

お腹は完全に開いている。圧迫するという選択肢はない。出血は止まりそうにない。

(セレネ、私はどうすればいいの? 教えてください!)

答えはない。

「女神様、どうして一番必要なときにいつも黙っているんですか?」 私は叫んだ。「私の力を使えと言ったじゃない! どうやって使えばいいの?」

肩に刺すような痛みを感じるやいなや、傷がふさがり始めた。

(違う、自分を治したいんじゃない! この子を治したいの!)

深呼吸をして、少女の体に手を置く。

「女神様、私はどうなっても構いません! その代わりにどうかこの子を治してください!」

突然、肩に焼けるような痛みが走り、傷が大きくなるばかりか、化膿し始めた。

まるで体から肩が朽ち落ちていくかのようだ。

私は痛みに悲鳴を上げながらも、少女の体に手を当て続けた。すると、少女の心拍数が安定し始め、開いていた傷が奇跡的にふさがり始めた。

私は地面に倒れ込み、目の前で黒い斑点が舞う。

少女はゆっくりと起き上がった。意識は朦朧としているようだが、傷は完全に癒えている。

彼女が私の隣に跪いて手を握ったとき、私は意識が薄れていくのを感じた。

私はなんとか最後のお願いを声に出す。

「お、お願い……誰にも……私の力のことは……言わないで」

***

ドムアレックス!
ドム群れ境付近で、またはぐれ者の匂いを探知
ドム女性から子どもが行方不明との通報があった
ドム早急に調査する必要がある
アレックスくそ!
アレックス警報を出して全員を避難させろ
アレックス俺は群れの近くにいる。戦士を集めて向かう
ドムアレックス、まだある
ドムアリエルだ
ドム戦士の1人が、彼女が1人で森に入っていくのを見たと言ってる
ドムはぐれ者の匂いがしたのと同じ場所だ
アレックスくそ!

アレックス

俺は狼の脚で可能な限りの速く森を走りながら、どうか間に合うようにと女神に祈る。

血の匂いがする……たくさんの血の匂いが。そのなかにアリエルの血が混じっていることは間違いない。

(もし彼女の身に何かあったら……)

脚が燃えているように感じたが、さらにスピードを上げる。あと少しというところで、死の匂いを嗅ぎ取り、足が止まった。

(嘘だ……そんな、彼女が死ぬはずない。間に合わなかったのか?)

茂みを抜けて空き地に入った瞬間、ぐったりと動かないアリエルの姿が目に飛び込んできた。

ひどく出血しているが、彼女の周囲でズタズタになっている3匹のはぐれ者のほうがひどい。

アリエルの隣に小さな少女が座っていて、彼女も血まみれだったが、怪我はなさそうだった。

俺はアリエルに駆け寄り、脈を確認した。彼女はまだ生きている。かろうじて。

「何が起きたか教えてくれないか?」俺は必死でその子に尋ねた。

少女は座ったまま、黙って俺を見つめた。その目が大きく見開く。

「怖がらないで。彼女を助けたいだけなんだ。だが、何があったのか知る必要があるんだ」この少女にこれ以上ショックを与えたくなくて、俺は慎重に言った。

少女は俺を見上げてそっと声を出す。

「私……できないの。彼女は……秘密だって……」

アリエル

目を開けると、キラキラ光る白いドレスが見えた。セレネだ。

セレネは月明かりに照らされた湖の上に浮いている。私のかつての群れにある湖だ。私にとってたくさんのいい思い出があった場所だが、今はただ、私が失ったものを思い出させるだけの場所になっている。

「私……私は死ぬんですか?」セレネの体に反射する光がまぶしくて、私は目を細めて尋ねた。

「そうよ、でも長くは続かないわ」

「セレネ、どうやって使うんですか? 教えてください」

私は続ける。「おかしくなりそうです。私の体は治ったかと思うと、次の瞬間にはボロボロになる! 私はどうすればいいんですか?」

「あなたの治癒能力は、すべてあなた自身の行動にかかっているわ」セレネは答える。「あなたが治そうと意志を持てば、治るでしょう。でも害そうとするなら……治らない」

私が殺したり暴力を振るったりしたときは、いつも治癒能力は働かなかった……。

そして殺したときはいつも、誰かが私の体を操っているように感じた。

「でも、もし自分をコントロールできなかったら? 選択の余地がなかったら?」私は取り乱しながら尋ねた。「私は普通じゃない。私は壊れてる」

「あなたはいつでも自由に選べるわ、アリエル。私の妹フェイトの未来図か、あなた自身の未来図か。妹はあなたを殺し屋に、ハンターの道具にすることを望んでいる。でも、あなたは何を望む?」

「私は……人を癒したい。傷つけるのではなく」

セレネは頷き、消え始めた。

「それなら、それがあなたの進むべき道よ。ただ、1人で歩む必要はないということを忘れないで」

***

私は馴染みのある環境、馴染みのある状況――病院の中で、アレックスがそばにいる状況で目覚めた。

「こんなふうに会うのはやめようって言ったのに」私はうめきながら言った。

起き上がろうとしたが、肩に鋭い痛みが走った。肩はまだひどい状態で、でこぼこした紫色の肉の塊のようだ。

「無理するな」アレックスは言うやいなや、私に横になるよう合図した。「医者は、君が生きているのは幸運だったと言っている」

「あの子は……大丈夫?」私が尋ねると、アレックスは私の枕を整えた。

「元気だよ。かすり傷1つない」彼は心配混じりの口調で言う。「何が起こったのか話したいかい?」

話したくない。あまり。アレックスに本当のことを話すのはまだ怖い。

でも、彼には話しておくべきかもしれない。あんなことがあって、それでもまだ彼を信じないの?

ただ、1人で歩む必要はないということを忘れないで。

セレネの言う通りだ。1人で背負うには重すぎる。

「アレックス……あなたに話さなければいけないことがあって」私はためらいがちに言う。「でも、私を変な目で見るんじゃないかと心配なの」

「アリエル、約束するよ。君を変な目で見たりしない。俺は君のそばにいたいだけなんだ」そう言う彼の目には思いやりがあった。

「ただ……私はまたモルモットになりたくないの、アレックス。なりたくない。二度と」私の目に涙が込み上げた。

アレックスは私の傷を避けて慎重に私を抱きしめ、ぼさぼさの髪に指を通す。

「君の身に悪いことは起こさせない」彼は言う。「俺と一緒にいればいつでも安全だ。だが、すべて打ち明けてくれなければ。もう秘密はなしだ」

「もう秘密はなし」私は同じことを言って、アレックスの手を握った。「私には力があるの」

「どんな力なんだ?」アレックスの美しい緑色の瞳は困惑に満ちている。

「女神様からもらった力。治癒能力よ」

アレックスが信じられないといった様子で私を見ている間に、私のずたずたの肩の傷が埋まり始め、肌の色が戻っていく。

一瞬のうちに、致命傷に近い傷は完全に治った。

「それで……あの子も?」アレックスは口ごもった。ぽかんとした表情だ。

「そうよ、ほかの人も治すことができるの……ときどき」

アレックスが汚い言葉を吐き始めるのか、気味悪がって後ずさりするのか、助けを呼ぶのか、私にはわからなかった。だが、彼はそのどれもしなかった。

その代わり、私をまっすぐ座らせて、両手で私の頬を包み込む。

アレックスは私の目から口へと視線を移動させて、下唇を噛んだ。

彼が衝動的に行動したい気持ちと闘っているのがわかる。

何をするつもりなんだろう。

私にキスするの?

アレックスが顔を近づけてきたので、私は息を詰めた。

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