Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 7巻 - 表紙

Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 7巻

Danni D

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Chapter
15
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18+

Summary

この巻は「Broken Queen ―捨てられた狼女は運命を覆す― 6巻」からの続きです。

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5 Chapters

追放

アリエル

怒りに支配され、2人のはぐれ者に押さえつけられながら、自分の力が膨れ上がるのを感じた。

ヘレナと目が合ったが、その焦点が失われていく。彼女の口から血が滴り落ちる。

私は激怒して強引に体を起こした。灰色狼を背中から突き落とし、茶色狼の口から脚を引きちぎるように抜く。

肉が引き裂かれる痛みはほとんど感じなかった。

私はヘレナを見下ろしていた黒色のはぐれ者に飛び乗り、地面にもつれるように倒れながら、やつの鉤爪の手からナイフを蹴り落とす。

ほとんど間を置かずに、残りの2匹が私を黒色から引きはがし、黒色のはぐれ者は森の中に飛び込み逃げ出した。

横目で見ると、マリアとローラが身を寄せ合っているのが見えた。2人とも指一本触れられていない。ということは……。

(やつらのターゲットはヘレナだった)

逃げた臆病者を追わず、私はほかの女性たちと残りの2匹の間に体を入れた。

私は剥き出しにした牙に静まるよう言い聞かせて、やつらの喉に食らいつきたい衝動を抑える。

また殺しを始めたら、私の治癒能力は役立たずになることはわかっていたし、ヘレナには私の助けが必要だ。

この2匹の狼にどう立ち向かうか思案していると、デイヴ将軍率いる分隊が――合計8人――狼の姿に変身してこちらに走ってくるのが見えた。将軍のそばにはドムがいる。

3匹の戦士の狼が2匹のはぐれ者に飛びかかり、デイヴが王族の前に立って彼らを守る。

ドムに戦いから引き離されたが、戦いに戻りたかった。私は彼にパッと歯を剥いたが、ドムの狼から私の狼にテレパシーが届いてやめた。

 アリエル! 何かを感じる……ヘレナ……彼女は?

そのとき、ドムはマリアとローラの向こうにヘレナの姿を見つけた。

伴侶! ドムはヘレナに駆け寄ったが、ヘレナは今や意識を失っていて、出血が続いている。

彼は人間の姿に戻り、裸のまま彼女の頭を両腕に抱く。

「伴侶」彼は大きな声で繰り返し、涙が頬を伝う。

ほかの戦士たちにさっと目をやると、彼らは文字通り残りの2匹のはぐれ者をズタズタに切り裂いていた。

目の前のことに注意を戻すと、マリアがヘレナの上で泣きながら止血しようとしているのが見えた。

ローラは傍観している。無表情で。

いつでも襲いかかれる。ローラが黒幕だとわかっている。この女を殺してやれる。

アリエル。

セレネの声がしたが、はるか遠い。

 この闇を捨てて戻って来なさい、アリエル。ヘレナにはあなたが必要よ。

私は怒りを抑えつけて、人間の姿に戻った。

この時点で、ほかの戦士たちは2匹のはぐれ者を無力化していた。2匹とも死んで横たわり、変身がゆっくりと解けていく。

マリアは、ヘレナを腕に抱いて泣いているドムに、自分のショールをかけた。

セレネ自身が私の体を操っているかのように、私はヘレナに歩み寄る。

噛まれた傷口から血が流れるが、自分の傷など気にせず、裸のまま膝をついて、ドムとマリアの手をヘレナから離した。

「何を……」マリアは何か言おうとしたが、私がヘレナの腹部の刺し傷に両手を当てるとやめた。

(どうか効いて。お願い。何だってするから……)

瀕死の友人とまだ生まれていない赤ちゃんに、私の治癒能力をすべて集中させる。私の傷口からはさらに血が溢れ、焼けるような痛みが体を覆う。

傷がじくじくと化膿し始め、ついに耐えきれなくなり、激痛から耳障りな悲鳴を上げた。

周りで見ていた人たちは、ヘレナの傷がふさがり始めたのを見て息をのんだ。まず腹部、そして脚。

(女神様、ありがとうございます!)

このとき私は衰弱したように感じたが、あの幼い少女を助けたときほどではなかった。

私は芝の上に尻餅をついた。今気づいたが、私はまだ全裸で、デイヴ将軍が制服の上着をマントのように私にかけた。

ドムは目に涙を浮かべたまま私を見て、ただこう尋ねた。「アリ、どうやって?」

「いつか話すよ」それだけ言ったとき、ほかの戦士たちがヘレナを抱き上げ、ドムが続いた。

「彼女は大丈夫――」マリアが口を開いた。

「確信は持てませんが」私に言えるのはそれだけだ。

「赤ちゃんは?」

「そう願います」

***

私は病院の待合室に数時間座っていたが、何の知らせもない。

ここに来る途中、私はようやく自分の傷に意識を集中させて、傷はすっかり癒えていた。

ドムは私が到着して以来、ずっとフロアを歩き回っている。

ローラははぐれ者の襲撃の後、まっすぐに部屋に行き――びっくり、驚いたことに――マリアはしばらくここにいたが、デイヴ将軍に何が起こったかを正確に伝えるために出ていった。

腹が立ってたまらない。その日の出来事を頭の中で何度も何度も再生し、1つの結論に達した。

この襲撃はローラの仕業だ。

彼女はヘレナが何かに気づいたことを知って、彼女を黙らせるように仕向けた。

つまり、彼女は紛れもなくはぐれ者たちと何らかの関わりがあるということでもある。

あなたが私を追ってくるのはいい。でも、私の大切な人を傷つけるなら、ただじゃ済まさない。

(もうこれまでよ、ローラ。これは戦いだ)

アレックスが待合室に入ってきた。

「ドム! 彼女は――」

「まだわからない」ドムが言う。こんなにも動揺している彼を見たことがない。

「いったいどこにいたの?」私はアレックスに尋ねたが、答えはもうわかっていた。

「ローラが……ひどく動揺していて……」彼が口を開いた。

「いいかげんにしてよ、アレックス! ローラがやったのよ!」私は彼の言葉を遮った。

「いったい何の話だ?」

「ローラがヘレナを殺すように仕組んだの!」

ドムは立ち止まり、口を大きく開けて私を見る。「なぜ彼女がそんなことを?」

「彼女はそんなことはしない、ドム」アレックスが言う。「バカバカしい!」

「ヘレナが今朝、ローラについて何か掴んだとメッセージを送ってきた」私は説明する。「何か大変なことを。

それが何なのか私に話す前に、ローラがはぐれ者の仲間に私たちの居場所をメッセージで知らせて、襲撃させた」

「ローラがはぐれ者とつながっていると?」ドムは眉をひそめる。

「だから、私たちの居場所がわかったのよ。マリアとローラは今日、指一本触れられなかった。やつらはまっすぐヘレナを狙った」

「それを言うなら、前回の襲撃のとき、やつらはまっすぐローラを狙った」アレックスが反論する。

「彼女は襲われるフリをしたかったのよ!」私の声が高くなる。「彼女は前回の襲撃の直前にもメッセージを送っていた。偶然じゃない」

「アリエル、メッセージなんて誰だって送る!」アレックスが言い返す。「君は1日に何回スマホを見るんだよ!?」

「メッセージはどこだ?」ドムが言葉を挟んだ。

「え?」

「ヘレナがアリエルに送ったメッセージ。彼女のスマホは現場で粉々に壊されていた」ドムは私を見る。「でも、まだ君のスマホに残ってるだろ?」

私のスマホ。しまった!

私はひどく急いで変身したから、服が裂けてスマホは地面に落ちたに違いない。

もっと高いのは、ローラが拾った可能性だ。

「今はない」私は肩を落とした。

「そりゃ、ないだろうな」アレックスは憤慨して両手を上げた。

「アレックス! お願いだから私の話を聞いて! 今は証明できないけど、ヘレナがよくなったら……」

「ベータ」医師がドアから入ってきた。

ドムは椅子に座り込む。「彼女は、2人は――」

「母子ともに無事です」医師が言った。

「ああ、女神様、感謝します!」ドムは嗚咽を漏らす。「彼女に会える?」

「お伝えしなければなりません」医師は続ける。「ヘレナは昏睡状態です。いつ目覚めるかはわかりません。

数時間かもしれない。数週間かもしれない。しかし、彼女と赤ちゃんが無事だったのは、奇跡です。

あなたが何をしたにしろ、アリエル」医師が私を見た。「それが2人を救いました」

何かが起こったことは否定できない。

ドムが私を見ていたし、マリアも見ていた。デイヴと分隊の戦士たちもだ。あの卑劣なローラでさえ、私がヘレナを治すのを見た。

私の力はもはや秘密ではない。

「彼女の部屋に案内しますよ、ベータ」医師は言って、重い白色のドアを開けてドムを先導する。

「君はヘレナと赤ん坊を治したのか?」2人きりになると、アレックスが尋ねた。

私は肩をすくめた。「2人とも生きている。大切なのはそれだけよ」

彼は頷き、一瞬、その目に本当に感謝の気持ちがあるように感じた。

「アレックス」私は新しい戦術を試みる。「私を信じないとしても、せめて結婚式を延期――」

「本当にしたいのはその話なのか? 結婚式?」彼は言葉を挟んだ。

「ああもう、アレックス! 私は何週間も言おうとしてたの!」私はまたカッとなりかけていた。

「ローラは彼女が言っているような人間じゃないし、彼女はあなたを利用してるのよ」私は続ける。「何のためにかわからないけど、本当にわかるのは、あなたが危険にさらされてるってことよ!」

「そして、俺は君に証拠はあるのかと訊いている!」アレックスは吐き捨てるように言った。「アリエル、それはローラに対する君の言い分で、ローラは親切で優しいだけの――」

「あなたにはね! アレックス、彼女はルナ・クイーンの称号が欲しいだけ! 彼女ははぐれ者と関わっていて、ヘレナは真実に近づきすぎた! だから彼女は今、病院のベッドに横たわっているの」

「もう聞きたくない――」 彼が背を向け、私は彼の肩に手を置いた。

「彼女はオリヴィアに似てるかもしれないけど、オリヴィアじゃないのよ!」

「被害妄想だ、アリエル」アレックスは私の手を押しのけた。「被害妄想と嫉妬」

「アレックス! ローラは自分をオリヴィアに似せようとしているの!  彼女が片方コンタクトを――」

「彼女の名前を言うのはやめろ!」アレックスが怒鳴る。「彼女が俺の死んだ伴侶じゃないってことはわかってる! クソほどわかってるさ!」

「どうして私の話を聞いてくれないの!?」

「君がクソみたいに頭がおかしいからだ!」

彼のその言葉は、銀のように燃えた。

「俺は君を恐れていたんだ、アリエル」彼が言う。「君が経験したことすべて。君にされたことすべて。

だが、どこかで君は、君が恐れていた通りの人間になった。

君は壊れてしまった。俺のルナの近くに君を置くことはできない」

「何を言ってるの?」私は必死で涙をこらえる。

「君はもうここにはいられないと言ってるんだ」彼は平静な声を保とうとしている。「前の群れのように大げさに騒ぎ立てたくはないが、出て行ってくれ。永久に」

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