The Lycan's Queen 孤独な王の運命の相手は傷心したての私でした8 - 表紙

The Lycan's Queen 孤独な王の運命の相手は傷心したての私でした8

L.S. Patel

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Chapter
15
Age Rating
18+

Summary

ディヤが、ほかでもないハンターに人質に取られてショックを受けるアーリヤ。かつての優しかったハンターがここまでのことをするには理由があるはずと思い、何が目的かを聞くが―

「望みは何?」私は尋ねた。

「君だ。君は俺のものだ。君との約束を果たすために来た」

アドニスが強く唸る―

対象年齢:18歳以上

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4 Chapters

Chapter 1

第35章

Chapter 2

第36章

Chapter 3

第37章

Chapter 4

第38章

第35章

ディヤが、ほかでもないハンターに人質に取られているのを見て、私は血が凍りついた。ディヤの首にナイフが突きつけられていて、ハンターは胸に爆弾を巻きつけていた。

家族全員がハンターを取り囲んで、体をこわばらせていた。ニヤの背中はエヴァンが支えていた。姉を守ろうとする彼女の気持ちが、私には痛いほどわかった。

アドニスはハンターに向かって唸り声を上げていた。その場を衛兵たちが取り囲み、アドニスの命令を待っている。

彼らならハンターを簡単に殺せることはわかっていたが、心配だったのはディヤと爆弾だった。

階下に下りるとすぐ、ハンターと目が合った。心臓の鼓動が速くなったが、ここは冷静にならなければならない。今はデリケートな状況だった。

「アーリヤ、来たね」ハンターが張りつめていた息を吐いて、私に微笑みかけた。

アドニスが私の前に立ち、ハンターの視界から遮る。

「彼女に会わせてくれ」とハンターは要求した。

アドニスはそれを鼻先であしらった。「お前の指図は受けない、雑魚」

彼は必死で自制を保とうとしている。声がいつもより一層低くなっている。私が彼の手を握りしめると、緊張していた肩の力が抜けた。ほんの少し。

ハンターが怒鳴る。「彼女に会わせろ」

そう言ってハンターはディヤの首にナイフの刃先を押しつけた。ディヤの口からすすり泣きが漏れる。ダミアンに押さえられていたカーターが、その手を振りほどこうと身をよじる。

「殺してやる。俺がお前を引き裂いて、手足をバラバラにしてやる」カーターは怒りをたぎらせ、自分の番いへの独占欲をあらわにした。彼は今、陽気な冗談好きのアルファではなく、怒れるアルファだった。

ニヤが唸り声を上げてハンターに飛びかかろうとしたが、エヴァンに引き留められた。ニヤはアドニスのライカンよりもコントロールが容易だった。だが、アドニスが怒れば、そう簡単にはコントロールできないだろう。アドニスは、ライカンに乗っ取られる寸前まで来ていた。

私のせいでディヤを傷つけるわけにはいかない。だから私はアドニスを押しのけ、ハンターに姿を見せた。アドニスがそれを気に入らないのは確かだったが、そのあいだに策を思いついてくれることを期待して、私はもう一度彼の手を掴んだ。

「君は変わったね」ハンターが私を羨望のまなざしで見つめてくる。

その羨望のまなざしは、私が数か月前に見たかったものだ。だが、今はただ気分が悪くなるだけだ。私がそのまなざしを見たい唯一の人は、私のすぐ隣に立っている。

「私はもうライカンよ、ハンター」私は声からすべての感情を排除して言った。

「きれいだよ」ハンターが答える。

アドニスが吠えたが、私は彼を引き戻した。私が知っているハンターは、誰かを傷つけるようなことは決してしない。今もそうであることを願った。

「望みは何?」私は尋ねた。

「君だ」という答えがずばり返ってきた。

また、アドニスの怒りがふつふつと湧き上がってくるのを感じた。この状況を早く鎮めなければ。

「どうして私があなたのところへ行くと思うの?」私は眉を吊り上げて尋ねた。

「君は俺のものだ。君との約束を果たすために来た」

そこで唸ったのはカーターだった。「アーリヤはお前のものじゃない。彼女がお前のものだったことは一度もない。彼女は女王になるために生まれ、王の番いになるために生まれた。約束って、何の約束だ? お前は番いを連れて車から降りてきた。あの時点でお前は約束を破ったんだ。忘れたのか?」

ハンターが視線をカーターに移した。「俺に番いはいない」

誰の顔にも困惑の表情が浮かんだ。彼はいったい何の話をしているの? ラナに何かあったのだろうか?

「でも、もうすぐできるさ」彼の視線が私に注がれた。

「ハンター、ディヤを放して」私はそう言って彼に近づいた。

アドニスは私との接触がなくなると唸り声を上げ、捕食者のような姿勢になった。ハンターが私に指一本でも触れようものなら、アドニスはハンターに飛びかかる構えだ。

「ディヤを放して、ハンター。放さなければ、これ以上近づかない」私は交渉を試みた。

「じゃあ、一緒に来てくれるのか?」ハンターが嬉しそうな顔になった。

彼のナイフを握る手が緩んだ。私はそれを見逃さなかったが、ディヤもその瞬間を逃さなかった。さすがだ。彼女は見事、その一瞬の隙を突いて、ハンターの腹に肘鉄を食わせた。その間に、彼女が逃げられるよう、私はナイフを掴んだ。

ハンターは床にくずおれ、私はナイフを遠くに投げた。

「爆弾をはずして、こいつを地下牢にぶちこめ」とアドニスが命令して、私をハンターから引き離した。

「彼女は俺を裏切った」ハンターが小さな声でつぶやく。

私は足を止めて振り返った。ハンターがちらちらこちらを見ている。

爆弾はもうハンターからはずされていた。だが彼は、そのことにも気づいていないようだった。

カーターが私を見てから、ハンターに目をやった。

「ラナか?」とカーターは尋ねた。

ハンターはゆっくりとうなずいた。目にじわりと涙が浮かんできて、ハンターは頭を振ってそれを振り払おうとした。

「理由は? いつだ?」カーターが尋ねる。

「お前がここに来て、あとのことを俺に任せる直前にわかった。彼女はここ数か月、様子がおかしかった。だが理由がわからなかった。

「彼女が家を出るとき、俺は彼女のあとをつけた。15分ほど車を走らせたところで、ある家の前で停まった。彼女は鍵を持っていて、ノックもせずにそのまま入っていったよ。

「小さな男の子が『ママ』と叫ぶのを聞いて、胸が張り裂けそうになったよ。だがそのときは、彼女には子どもがいたが、俺がどう反応するか心配で隠していたんだと思った。

「でも、そのあと男の声が聞こえたんだ。男は彼女に、自分はどれほど彼女を愛していて、どれほど会いたかったかを伝えていた。ラナは、自分も会いたかったと言った。俺の番いは、ほかの男に愛していると言ったんだ。

「俺は、ラナがその男に、俺とはまもなく別れると言ったのを聞いてしまったんだ。そいつと息子のいない生活は耐えられないという。

「だが俺は、向こうから別れを切り出して、喜ばせてやるのは嫌だった。こっちからそこへ飛び込んでいって、別れると言ってやった。

「彼女は良心の呵責を感じるどころか、喜んだよ。

「俺の心が砕け散る目の前で、彼女はあの男の腕の中に飛び込んでいったよ。俺がそこに立っていることなど、おかまいなしだったよ」話し終わる頃には、ハンターはボロボロになっていた。

ディヤはカーターにしがみついていたが、カーターは動揺している様子だった。カーターとハンターはずっと非常に仲がよかった。ハンターが経験したことを聞いて、カーターも心を痛めたのだろう。誰もが痛みを感じたと思う。

番いは親友であり、恋人のはずだが、ハンターにとってはそうではなかった。彼が感じた痛みは、すべて番いのせいだった。

私は怒りがこみ上げてくるのを感じた。ラナだって番いの絆の影響は知っていたはず。それでもハンターを弄んだ。

アドニスが私の後ろに歩み寄ってきてくれた。彼がいてくれることで、今にも噴出しそうな怒りが和らいだ。

思わず涙がこぼれた。ハンターは悪意があったわけでも、独占欲が強かったわけでもない。彼は心が折れてしまっていたのだ。それも最悪の形で、心が壊れてしまっていた。

「俺の番いには家族がいた。彼女は俺を望まなかった。番いの絆が彼女を引き留めていただけで、彼女は俺を望まず、利用しただけだった。俺の心を壊して去っていった」ハンターは独り言のようにつぶやいた。

私はハンターのところへ歩いていって、彼の顔が見られるようにひざまずいた。アドニスは明らかに怒っていたが、私は彼を振り向いて首を振った。

ハンターに何かをするつもりはない。私にはそれがはっきりとわかった。

「ハンター」と私は声をかけた。

彼がまっすぐに私の目を見た。その目には、悲しみと苦悩、荒んだ心が映し出されていた。

「辛かったでしょう。別れは楽なことじゃない。でも、彼女に負けちゃダメ。彼女があなたにしたことは、本当にひどかったけど、あなたはそれ以上に強いわ。あなたは私が知る中で最も強い人の一人よ。あなたを想ってくれる人がいる。あなたの愛にふさわしい人がいる。ただ、それは私じゃない。それは二人とも知ってるはず」私は寂しく微笑んで言った。

ハンターはため息をついた。「わかってる。君が俺のものになることはない。カーターは正しいよ。君は王の番いになるために生まれてきたんだ。怒りで目が曇っていたようだ。ごめん。誰も傷つけるつもりはなかった」

ここでカーターが口を開いた。「お前は、俺が誰にも経験してほしくないようなことを経験した。お前は自分の感情に負けてしまったんだ。だが、自分の過ちを認めたのは立派だったと思う。お前はいつも俺のそばにいてくれたじゃないか。だから今度は俺がお前のそばにいてやるよ」

ハンターは悲しげに微笑んだ。「ありがとう、相棒。だが、俺はベータを降りるよ。俺はふさわしくない、こんなことをやらかしちまったんだから」

カーターは笑って言った。「アホぬかせ。うちの群れで、お前以上のベータは見つけらんねえよ。お前はここに残れ。何週間かオフをやるよ。どっか旅行でも行って、新しい場所を探検してこい。そしたら、誰か見つかるかもしれないぜ」

ハンターは引いた。「俺は今、人に心を開けなさそうだ」

「絶対ないとは言えないわよ」私は彼に言った。

「ありがとう、アーリヤ。君はやっぱり、俺が知る中で最高の人だ」ハンターは微笑んだ。

「そうだ」アドニスが私の手を握ってきて、その存在をアピールしてきたので、私は立ち上がった。

自分のものだという標だった。私は目玉をぐるりと天井に向けようかと思ったが、その代わりに彼に微笑みかけると、彼は私を自分のそばに引き寄せた。

「さあ、帰ろう、相棒。群れをアルファもベータもいない状態にしておくわけにはいかない」そう言ってカーターはハンターに手を貸して立たせた。

「スマイリー、できることならもっと長くいたかったが、仕事があるんでね。俺はいつだって電話一本で駆けつけるよ」カーターは私を軽く抱きしめた。

「わかってる。あなたには責任があるものね。家に着いたら必ず電話して」と私は答えた。

「はいはい、お母さん」カーターが冗談を言う。

「みんな疲れてない? ドライブはとても長くなるわよ」とニヤが言った。

「交代で運転しましょう。私が最初に運転して、みんなを寝かせてあげる」ディヤは姉のところに行き、姉をしっかりと抱きしめた。

カーター、ディヤ、ハンターに別れを告げたあと、みんなは自分の部屋に戻ることにした。

みんなが疲れきっていることは、天才でなくてもわかった。ここ数日は、誰にとっても大変だった。

母がまた私を抱きしめに来て、あなたのしたことは正しかったと言ってくれた。わざわざ言ってもらわなくてもよかったけれど、母のその言葉を聞いて、気持ちが少し楽になった。

ハンターに2度目のチャンスを与えたことで、アドニスを裏切ってしまったのではないかと、なぜか私は不安になっていた。

アドニスは嫉妬深く独占欲が強いかもしれないが、話のわからない人ではない。ハンターを好きではないかもしれないけれど、彼は怒らないことを、私は心のどこかで知っていた。

私はアドニスと一緒に部屋に戻った。

「怒らせてしまったのなら、ごめんなさい」沈黙を破って私は言った。

「そんなことないよ。君に怒りたかったけれど、怒れないことに気がついた」彼はため息をついた。

「どうして?」

「なぜなら、君のしたことは正しいことだったからさ。ハンターは壊れていた。それが君にはわかったんだ。君は彼に2度目のチャンスを与えた。それなのに私は嫉妬に目がくらんで、物事をまっすぐに見ることができなかった」

「ハンターに起こったことは、本当にひどいことだった。彼には幸せになってほしい。それだけ。まわりのみんなが番いと愛し合っているのを見るのは、辛いと思うの」ついついため息が漏れる。

「彼なら、きっとやり通すさ。だが、ハンターのことはもういい。さっきは邪魔が入ったからね」アドニスが不敵に笑う。

アドニスは私の返事を待たずに、私を抱き上げて早足で部屋に戻った。誰かさんはどうやら渇望していたようだ。

私をベッドに放り投げた彼の顔には、あの捕食者のような表情が戻っていた。私は興奮している自分に気づいたが、彼に優越感を与えたくなかった。彼は私を絶頂の手前に置き去りにした。今こそ仕返しさせてもらうわ。

あんなふうに私をからかって、私に罰を与えたのだから、彼は泣きを見ることになるわよ。ただ、それが私にとっての拷問になるのか、彼にとっての拷問になるのかはわからなかったが。膨らみが大きくなっていることから判断すると、私の予想では後者になるだろう。

私はあくびをして言った。「今夜はダメ。疲れたから眠りたい」

彼の顔がショックを受けた表情に変わる中、私は上掛けに入って目を閉じた。

「何だって?」彼の驚愕のつぶやきが聞こえた。

彼が着替えてベッドに入ってきたとき、私は笑い出さないようにするために必死だった。

「じゃあ、明日。ね?」彼が子どものような口調で尋ねてくる。

「そうね。両親もいるし、私はみんなと一緒に過ごしたいわ」私は布団にもぐり込んだ。

「イジワル女」彼がつぶやく。

心のどこかでは、少しだけ罪悪感も感じていたが、大部分はこれが楽しくてしかたがなかった。アドニスをからかうことが、間違いなく私の好きなことの一つになっている。

「おやすみなさい、アドニス」私は笑いを堪えながら言った。

「ああ、おやすみ」

彼はすぐさま私を近くに抱き寄せてくれたので、今私は彼の胸に顔を埋めている。番いの腕の中で眠るのって、本当に素晴らしい。

私がアドニスの胸に一層深く顔を埋めると、彼がしっかりと私を包み込んでくれた。まもなく私は瞼が重くなってきた。

ここ数日の出来事が体にこたえたので、私は安心して眠れるのが嬉しかった。

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