ライアンとのデートのあと、彼を家に誘ったジェイミー。部屋に入り、そういう雰囲気になったのに、なぜか気持ちが入らない。ライアンはそれに気づき、心の準備が出来るまで待つと伝え、その日は何もせずに一緒のベッドで眠った2人。翌朝、ジェイミーを空港まで送ってくれる紳士的なライアンに、改めて強く惹かれる。しかしそこからは先日自分の意識が飛ぶようなキスをしてしまったメイソンとの出張に行くことになる…
ジェイミー
ライアンと私は、素晴らしいデートの後、私のアパートに向かって歩いていた。
12月の寒空の中、私たちは暖かくして深夜の散歩を楽しんでいた。
私は振り返り、微笑んだ。「ありがとう、ライアン。本当に楽しかったわ。」
「お礼を言うのは僕の方だよ、ジェイミー。結局、君に支払わせてしまってすまない。」
「言い出したら聞かないんだから。」私は笑いながらそう言った。「あなたに何回も払わせるなんてできないわ。今回は私が奢る番よ。」
私たちは並んで歩きながら、指を絡ませ合った。
「出張の日は早いの?」
「8時に空港で上司と待ち合わせなの。でも日曜の夜には戻るわ。」
「メイソン・ナイトだろ。彼のことはいろいろ聞いているよ。」彼は私を見つめた。「女性関係についてね。」
きっと私の勤め先のことを調べたのだろう。
でも、ライアンはそんなことを気にする人だろうか。
「どこまで知ってるの?」
彼は軽く肩をすくめた。「基本的に、彼は女性に対する敬意がゼロだ。同僚、部下にだって平気で手を出す。」
私は苦笑した。「心配しなくていいわ、ライアン。私はナイトさんと寝るつもりはないから。」
「君の口からそれが聞けてよかったよ。」彼の顔には本物の安堵があった。「この週末、君にちょっかいをかけなければいいんだけどな。」
ー私も同じ気持ちだった。-
気づくと私のアパートの前だった。二人とも次に何をすればいいのかわからなかった。
ーチャンスよ。彼を誘うの。ー
「上がってく?」
彼は髪を指でなぞりながら笑みを浮かべた。「喜んで。」
アパートのドアを開け、私たちは中に入った。
彼を誘ったなんて信じられない。2階に上がってからどうするか、プランもない。
こうなったらやれるとこまでやろう。
私たちは玄関に入った。「カルメンとイーサンはたぶんリビングにいるわ。」
カルメンたちがイーサンにどう反応するか、私は若干不安を感じていた。
「おかえり!」カルメンはそう言って顔を上げた。「お客さん?」
私はライアンを見た。「ライアン、私の友達のカルメンとイーサンよ。カルメンと私は一緒に住んでいて、イーサンは数日間私たちのところに滞在しているの。」
カルメンはソファから彼に微笑みかけた。「あなたが噂のライアンね。会えてうれしいわ。」
ライアンは私に微笑みかけ、それからカルメンの方を見た。「がっかりさせたかな?」
「まさか、ジェイミーは男にかなりうるさいんだ。」イーサンは言った。
「推薦ありがとう。」私は目を丸くして言い返した。「ライアン。私の部屋に行きましょう。」
「耳栓をしようか?」
カルメンがそう叫ぶので振り返ると、私たちにキス顔をしていた。
本当に子供っぽくて困る。これから何が起きるか分かってるのかしら。
だって私には分からないから。
ライアンと私は部屋に入り、彼は周りを見回した。私の部屋に、男性がいる感覚は妙な気分だった。
久しぶりの感覚だった。
「いい部屋だね、ジェイミー。」彼は奥の壁のコラージュを見た。そこには私やカルメン、イーサンの写真がたくさん貼られていた。
「いい友達に恵まれたんだね。」
「腐れ縁よ。」私は笑いながら答えた。
ライアンは振り返り、私たちは見つめ合った。
彼も私も少し気恥ずかしくなった。
「それで...」 私はためらいがちに話し始めた。
すると、ライアンは私の方へ歩み寄り髪を私の耳の後ろにかけると、微笑み、そっとキスをした。
彼は私の脇に両手をしのばせると私の腰の上に据えた。キスが激しくなり、私は彼の首に腕を回した。
「大丈夫かい?」私のブラウスの裾を指で押さえ、ライアンがそう言う。
彼は私を求めていた。
私は大丈夫よね?
「うん。」
ライアンはブラウスを私の頭からそっと引っ張り上げ、私は髪を振り乱した。
それから数分間、私たちは服を脱ぎ、ベッドに向かった。
彼は私に覆いかぶさりキスをした。触られるのは久しぶりだ。
とても気持ちよかった。
太ももに彼の硬いものが当たるのを感じた。彼の温かい唇が私の首筋に触れ、彼の指は私のパンティの中へと入っていった。
しかしどういうわけか気持ちに変化が起きなかった。
私はまだ準備ができていなかったのかもしれない。
もしかしたらこういうシチュエーションになることで、自分が彼を真剣に愛しているのかをただ確かめたかっただけなのかもしれない。
「ライアン。」私はささやいた。
彼は動きを止めた。髪が乱れた彼もまた、素敵だった。
「大丈夫?」
「ええと...その...。」私は何を言えばいいのかわからず、黙り込んでしまった。
彼を興奮させてしまった手前申し訳なくなる。
「まだ心の準備ができていないんだろう?」
彼は私から離れ、安心させるように微笑んだ。
「無理もないさ。まだ数回のデートだよ、ジェイミー。まだお互いを知り始めたばかりなんだ。」
「服を脱ぐ前に気づけばよかった...。」
彼の前で横になると、彼は私を見た。「今はこうして君を見るだけで満足さ、君が準備ができるまで待つよ。」
彼が紳士で、私に無理強いをしなかったことに安堵した。彼は私がギリギリで断ったことにイライラすることもなかった。
もうすぐ受け入れらるはず…ただ、まだ早かっただけ。
ライアンは身を乗り出し、私の唇にキスを押し付けた。「そろそろ行くよ。」
私は彼を引き留めた。「お願い、ここにいて。」
ライアンは私の横に横たわると、腕を伸ばした。私は彼の胸に頭を預けた。
彼と横になるだけで、とても心地よかった。
今はこれでいい。これでいいのだ。
***
ライアンは一夜を私のベッドで過ごした。眠りにつく前に激しいキスをした以外は、何も起こらなかった。
今朝一番で、彼は私を空港まで送ってくれると言った。
空港に着くと、彼は私に腕を回してきた。
「昨日の夜は楽しかったよ、君と一夜を過ごせて嬉しいよ」
「私もよ。空港まで送ってくれてありがとう。」
「いいんだ。」 ライアンは私を引き寄せ、キスをした。私の顔がライアンに近づいたとき、帽子がずれないように私は帽子を押さえた。
12月の朝はいつものように雨で寒かった。
今日は金曜日でよかったと言いたいところだが、週末はずっと仕事なのだから、そんなことは関係ない。
クラクションがしきりに鳴るのが聞こえたので、私はキスから手を引いた。
私は振り返って音のする方向を見た。
「君のボスかい?」ライアンはすでに知っていたにもかかわらず、そう尋ねた。
私は、縁石に停まっていた黒いBMWの後部座席に座っているメイソンを見やった。窓を下ろし、私を睨んでいた。
「タイムイズマネーだ、ジェイミー。」彼は余裕なさげにドアを開けた。
「何やらお怒りみたいだね。」私の横からライアンが言った。「カルメンに鍵を預けようか?」
「お願いするわ。ありがとう。」
彼は私の顎の下に指を置き、それを持ち上げて最後にもう一度キスをした。
「向こうについたら電話をくれ。」
「すぐにするわ。」 私はメイソンの車に向かって歩き、車内に入る前にライアンの方に微笑んだ。
メイソンの横に座ると、彼はお決まりの高そうなスーツに身を包み携帯電話を見ながら怒ったような表情をしていた。
「ここはもう空港ですよ。なぜ車を乗り換える必要が?」私はそう尋ねた。
「ジェット機が待っている。滑走路までこの車で行くんだ。」彼は画面から目を離さずに答えた。
なるほど、プライベートジェットか。
メイソン・ナイトは、移動でさえそのスタイルを欠くことはないのだ。
「君があの男とか、解せないな。」 メイソンは首を横に振った。
車が縁石から離れると、私は窓の外を見た。「ライアンはとてもいい人です。私も彼が好き。あなたがとやかくいうことじゃありません。」
「いい人か。正常位以外の体位を知らないお前に男の良し悪しが分かるのか?」
私は首をかしげてみせた。
こんなトピックを話してくることに驚くべきではないんだろうけど。
フロントシートには運転手がいる。彼は私たちの会話が聞こえてくるはずだ。それでもメイソンはお構いなしだ。
「お前が生意気なことを言い返す前に、聞いておこう。お前は快感を覚えたことがあるか? つま先が丸くなって、声をこらえきれなくなるくらいの快感をだ。」
ー午前8時前にする話?ー
「どうしても気持ちよくなりたかったらバイブを使います。あなたに頼むまでもないです。」
それを聞くやメイソンは革張りのシートに体を預けた。彼は私の返事にほくそ笑んでいるように見えた。
「そうか。でも、もしオファーをいただければ、その時は喜んで手伝うよ。きっと君の理想のビジネスパートナーになるはずだ。」
いちいち鼻につく。でも本当にメイソンはその言葉どおりなのだろうか。
そこまで行くつもりなどない私が知る由もない。
しかし悔しいことに、正常位のことに関しては彼の言うとおりだった。私は数人としかセックスをしたことがなかったし、体位にこだわったこともなかった。
メイソン・ナイトと過ごすこれからの2日間は、もうすでに波乱に満ちた時間になりそうな予感がした。