私は1日中、ナイト氏のために奴隷のように働いていた。いつも嫌がらせのように無理難題を突きつけてくる。
「ようやく分かってきたようだな」彼はそう言いながら前に身を乗り出し、意味ありげに微笑む。筋肉質な体、彫りの深い顔立ち、暗い瞳、薄い無精ひげ。彼の声に私は震えさえ覚える。
私は彼を見上げて言う。「はい、ミスターナイト」。
メイソン・ナイト。魅力的な外見だけでなく、億万長者の独身男性である彼に女性たちは心をときめかせる。ジェイミーは自分があの女性たちの1人になることは決してないと信じて疑わなかった。つまり、自分の上司に心を奪われるようなことは...。でも、彼女がメイソンのような人に目をつけられたことなんてこれまで一度も無かった。
対象年齢: 18歳以上
ジェイミー
メイソン・ナイト。
彼の顔が忘れようにも忘れられないのは、ただ彼がとても魅力的だったからではなく、街のあらゆる雑誌の表紙を飾っていたからだ。世界で一番セクシーで、誰よりも引く手数多な億万長者の独身男性。長身、鍛え上げられた肉体、そしてくっきりとした輪郭を携えたその男は、快楽と苦痛の世界を約束するかのようなまなざしを持っていた。
ーでも性格は最悪。ー
彼は根っからのろくでなしで、優しさや思慮深さなど微塵もない。
彼の女性関係は常に一夜限りのものだった。
そして残念なことに、彼は私の上司でもある。
正確には、上司の息子なのだが、とにかく彼は私を自分の所有物のように扱った。
彼はたくさんの仕事を押し付けてきた。そのおかげか、昼休みだというのに私はまだコピー機と向き合っていた。
私は顔をほころばせながら首を振った。カルメンとイーサンとはもう長い付き合いだけど、この二人以上に面白い人に会ったことがない。私は書類を腕いっぱいに抱えて、慎重に慎重にメイソンのオフィスに向かった。彼のデスクに書類を置き、ランチが終わる前に軽く腹ごしらえをする。
カルメンはいつか私がメイソンと寝るんじゃないかとずっと言ってくる。たしかに彼を前にすればスーパーモデルさえも形無しだ。私だってデザイナーパンツに浮かび上がる彼の臀部には視線を奪われる。
でも、一度関係を持とうものなら悪夢の始まりだ。
そんなことを考えながらメイソンのオフィスのドアを開けるなり私は思わずその場で固まってしまった。
そこにはズボンを膝のあたりまで下げ、日焼けし引き締まった尻をあらわにしたメイソン・ナイトの姿があった。
デスクの上には快楽に喘ぐ財務部のジェンの姿があった。
「もっと激しく」と彼女は歓喜のうめき声を上げ、彼はさらにペースを上げた。
その時、ジェンはドアに立ち尽くす私を見るなり悲鳴を上げて、その大きな偽乳を覆った。
「ちょっと、メイソン!」
メイソン・ナイトは動きを止め、体をくねらせると、その黒い瞳を私に向けた。何人もの女をひざまずかせてきた眼だ。
「頼まれていた書類ですが......」と私がつぶやくなり、
「出て行け」と彼は命じた。
私は慌ててドアを閉め、コピーを抱えたまま自分のデスクに戻った。
私は恥ずかしさのあまり頬を熱くしながら、自分のデスクに座り直した。
ーなんであのとき黙って引き返さなかったんだろう。自分の馬鹿さに本当に嫌気がさす。ー
メイソンに追い詰められる前に逃げようと、私は急いで自分の荷物をまとめた。あんな場面を目撃した手前彼とはもう鉢合わせたくなかった。
私はあわてて自分のデスクを離れた。エレベーターに向かって曲がり角を曲がったその時、ドスンと誰かの胸にぶつかった。鍛え上げられた腕が私の肩を抱き、私はなんとか転倒せずに済んだ。
「どこに行くつもりだ?」耳元で囁くその声に背筋が凍るのを感じた。声の主はメイソンだった。
「コピーも終わって、お昼もまだだったので...」
「今すぐ私のオフィスに来い。」
彼はくるりと私に背を向けるとついて来いと言わんばかりに何も言わずに歩き去った。彼を追うパンプスの足は恐怖で震えていた。
ー彼の機嫌さえ損なわなければ、見なかったことにしてくれるはず…ー
ジェンがエレベーターに向かって廊下を歩いているのが見えた。さっきのことを気にしているのか私には目もくれなかった。まあ無理もないな、などと思いながら
私はメイソンの後に付いて彼のオフィスへと入った。彼はデスクの後ろにある黒い革張りの回転椅子に座ると、私を睨みつけた。
まるで相手を殺すかのような強い睨みで。
私はまるで学校で先生に叱られているときのように体の前で両手をもじもじさせていた。いやそうするほかになかったのだ。
「ジェイミー。」 メイソンは椅子から少し身を乗り出した。「何も言わずに黙って私のオフィスに入るとは君はいささか礼儀にかけているようだ。部屋に入る時はノックをする。そう教わらなかったのか。」
彼の言葉がチクリと刺さる。
「昼休みのオフィスであんなことをなさったのがいけないのでは、」つい口答えをしてしまった。
「誰とどこでしようが私の勝手だ。」彼の睨みつけるような視線に、私はたじろいだ。
「お父様は感心なさらないんじゃないですか…」
「君さえ話さなければ父は知るよしもない。」
「もし話したら?」私は食ってかかった。
「君をクビにする。」
開いた口が塞がらなかった。「それは...」
「違法だって。そう言いたいんだろ?」彼はにやりと笑い、椅子から立ち上がると、私私に迫り、私をオフィスのドアに押し付けた。「そんな脅しが私に通用するとでも思うのか?私が望めば、お前を葬ることだってできる。そうは思わないのか?」
私の膝は震え始めた。身体から放たれる熱と、酔いを催すようなコロンの香りが感じられるほどに彼の体は私に密着していた。
力強く抱きしめられ、彼の身体の重心が私に寄るのを感じる。その感覚はまるでメイソン・ナイトに支配されているかのようだった。
「分かったか?」柔らかく暖かみのある声でそう囁く。
「はい、メイソン。」
「ミスターナイトだ。私は君の上司だぞ。これからはそう呼べ。」
また皮肉めいたことを口走ってしまわないよう、私はただうなずいた。
「君がギャーギャーと騒ぎ立てないように、君を私の監視下に置くことにする。」そう言うと彼はさらに体を近づけた。身にまとうワイシャツは鍛え上げられた上腕二頭筋ではちきれんばかりだった。「おめでとう、ジェイミー、今日から君は私の個人秘書だ。」
ーどういうつもり?ー
ついさっき尻をあらわに財務部のジェンを突き上げているところを私に見られているというのに、どういう風の吹き回しだ?しかし、メイソンと距離をおきたいという私の願いは、彼の黒く、底なしの瞳の前にはなすすべもなかった。
「私は個人秘書は雇わない主義なんだ。君は例外。名誉なことだろ?」
「ええ」と、私はそっけなく答えた。
「何かつけ忘れているようだが?」
「はい、ミスターナイト。」
そう言うと彼は私に笑みを向けた。腹黒く、危なげのある笑みだ。
「いいだろう。では早速仕事だ。」
お知らせ
Galatea Japan Facebook[https://www.facebook.com/profile.php?id=61551218136768]グループではお得な割引やプロモーション、最新情報を配信中です。今すぐ参加しよう!