
パリの危険な恋 ―目覚めた狼は止まらない― 6巻
Author
Annie Whipple
Reads
🔥73.9M
Chapters
4
この巻は「パリの危険な恋 ―目覚めた狼は止まらない― 5巻」からの続きです。
第25章
ベル
人前でいちゃつくのが恥ずかしくなって、グレイソンを私から遠ざけた後、私たちはタクシーに乗って、グレイソンが「かわいいお店がたくさんある」と言っていた場所に向かった。
パリの建築物には驚かされた。どの建物もとても美しく、まとまっていた。お店もみんな洗練されていた。残念だったのは、どれも私の予算から外れていたことだ。
歩き続けているうちに、母の近くに来たのではないかと思わずにはいられなかった。
前回母に会いに行ったときの記憶をたどると、この辺りは彼女が住んでいた場所に似ていた。もうずいぶん前のことだが、私はその時のことを鮮明に覚えていた。
母が住んでいたアパートは、ウ・ドゥイルランという小さいキッチン用品店の上にあった。
何年も前に父と遊びに来たとき、私はその店をブラブラと歩くのが好きだった。
「グレイソン?」
彼は私を見た。
「ウ・ドゥイルランっていうお店なんだけど、知ってる?来る前に友達が教えてくれたの。ここから近いのかと思って」
「調べてみるよ」と言って、彼は携帯電話を取り出した。彼がパスワードを入力するのを見て、いつか助けになるかもしれないと思って私はすぐにそれを記憶した。
「ここからほんの数ブロック、歩いて5分くらいのところだ」
目を見張った。思っていたよりずっと母に近かったのだ。
「そこに行きたかったのか?」グレイソンは尋ねた。
「うーん…」私は考えた。母に会いに行きたかったのだろうか?この旅は母を訪ねるためのものだった。ミネソタに戻る飛行機に乗って以来、何の連絡もない母を訪ねる旅。
数週間前、なぜ私が彼女の家に行かなかったのか、彼女に説明する義務があった。それに、次に彼女に連絡できるのがいつになるかなんて、わからないから。
携帯はグレイソンに奪われ、買い直すお金もない。今が彼女と話す唯一のチャンスなのだ。彼にそこに行きたいと言おうとしたとき、ふと思いついた。彼に知られずにミネソタに戻る計画がすでにあったのだ。
順調にいけば、今夜の飛行機で明日には元の世界に戻れる。
グレイソンはパニックになるだろう。きっと母に会いに行き、私の居場所を聞き出そうとする。
もし彼が母を傷つけたら?私のせいで母が傷つけられたら、私は生きていけない。だから、グレイソンとは一緒に行けない。
でも、母に会いに行かなければならなかった。
私はすぐに頭を振った。
「ううん、実はこの辺りの店が好きなの。でも、後で行こうかな?」と私は答えた。
グレイソンは微笑んだ。「もちろんだ、そうしよう」
私たちは歩き続け、グレイソンは片方の腕をしっかりと私に回していた。誰も私たちに気を取られていないのが目についた。。
私たちが通り過ぎるとき、みんな頭を下げ、視線を地面に向けたままだった。
ただ一度か二度、誰かが偶然私たちを見て、グレイソンが低いうなり声を上げて私を引き寄せたことがあった。
その人はすぐに視線をそらし、彼に首をさらけ出した。グレイソンがこの人たちを支配しているような気がして、驚いた。ーパリの人はみんな人狼なの?ー
私たちは小さな書店に行き当たり、私はすぐにグレイソンを店内に引き入れた。
「ほら」と私は言った。。
私の不安は急激に大きくなっていた。今がその時だった。
私たちはしばらく店内を見て回った。この店は本当にかわいかった。2階建てで、フランス語と英語のあらゆる種類の本でいっぱいだった。
カウンターの後ろには愛らしい老婦人がいて、優しい笑顔で案内をしていた。
私はグレイソンに向き直った。「本を探すのを手伝ってくれる?」
グレイソンは私を見た。「ああ」
私は唾を硬く飲み込んだ。ーうまくいくといいんだけど。ー
「マイケル・ジョンソンの『黄金の手』。パパが大好きだった本なの。パリで買うのが一番だと思って」
彼に嘘をつくことに罪悪感を感じたが、選択の余地はなかった。『黄金の手』なんて本はない。ただ母のところに行くのに十分な時間、グレイソンを私から引き離す必要があった。
「もちろん。探しに行こう」とグレイソンは歩きながら言った。
「待って」と私は彼の手をつかんだ。彼は立ち止まり、私を見た。
「どんなジャンルかわからないから、私がこの下を見て、あなたは2階に行って探してきてくれない?SFかもしれないし、ファンタジーかもしれないし、ホラーかもしれないし、ミステリーかもしれない。何の本かはわからないけど、パパのお気に入りだったということだけは知ってるの」
「わかった…」グレイソンはゆっくりと言った。「少し離れても大丈夫か?カフェで、すごく怯えていただろ?」
私は緊張を鎮めようと微笑んだ。少し心配していたことになってきた。
「遅かれ早かれ、試してみないと。そんなに遠くには行かないだろうし。それに、この本をどうしても見つけたいの」私はグレイソンの腕に触れた。「私にとって大きな意味がある本なの」
グレイソンはうなずき、少しためらいがちに一歩下がった。
「わかった」と言った。すぐに戻る。何かあったら叫んでくれ」彼は身を乗り出し、私にキスをした。
彼の唇がそっと私の唇に触れ、私の体は途端に暖かくなった。
キスが熱くなりすぎる前に、彼から離れ、微笑んだ。
「早く本を見つければ、すぐに私のところに戻ってこれるわ」私は最後にもう一度キスをした。「あなたが2階を見ている間、私は下を見るから」
グレイソンはうなずき、私から離れた。「わかった」
彼が私から目をそらさず、2階への階段を上っていくのを見送った。離れていることで、胸に鈍い痛みが増しているのを感じたが、以前の痛みほどではなかった。
私はほっと息を吐いた。ーよかった、どうにかなりそう。ー
彼が階段を上りきり、2階への角を曲がる前に最後にもう一度彼に微笑みかけた。
そして、すぐにフロントの女性に駆け寄った。
「こんにちは、英語は話せますか?」私は彼女に尋ねた。
彼女はパソコンから顔を上げ、少し驚いたようだった。
「もちろんです。何かご用ですか、お嬢さん?」彼女は強いフランス語訛りで尋ねた。
「ああ、よかった」と私は言った。
「手伝ってほしいのです。あと数分で、ある男が私を探しにあの階段を下りてくるんです。私がもう店にいないと知ったら、きっとパニックになります」
「大事な用事があって、すぐ戻るからと伝えてください。パニックにならないように彼に伝えてほしいんです」
女性は不思議そうな顔をした。「お嬢さん、えっと…」
「ごめんなさい、変なお願いなんですけど、」私はすぐに財布を開け、20ユーロ札を取り出して彼女に渡した。
「私のためにお願いします。もし彼があまりに動揺したら、私がすぐに戻ってくることを言い聞かせ続けてください。くれぐれも警察は呼ばないでください」
女性は目を見開いた。「お嬢さん、危険なんですか?誰かを呼びましょうか」
私はすぐに首を振った。「いいえ、違います。そういうことではなくて…用事があって、私の…彼氏は来れないんです。何も問題はありません、約束します」
「でも…」と彼女は言った。
「もう行かないと。あまり時間がないんです。お願いできますか?」
女性は手の中のお金に目を落とし、そして私に目を戻した。彼女はうなずいた。「わかりまいた」
私は嬉しさのあまり、この優しい老婦人を抱きしめたくなった。
「ありがとうございます。。これが私にとってどれほど嬉しいことか、わからないと思います。本当にありがとうございます」
彼女は私に優しい笑顔を見せた。「もちろんよ。どうぞご無事で」
「ありがとうございます」と私は言った。そしてドアを飛び出し、通りを駆け抜けた。




